エンディングノートの書き方ノート~7.2.相続と遺言(2)

相続と遺言(2)

エンディングノートの書き方ノート|コトダマの里
7.相続と遺言(2)
このシリーズではエンディングノート(終活ノート)を書くときに役立つ情報をまとめてご紹介していきます。7.2では、遺言書を取り上げます。

 こんにちはコトダマの里のアズです。さて今回は遺言です。「遺言書」という言葉は知っていても、実際はどんなものであるのか、いまひとつ分からない、とよく聞きます。

 遺言書の最大の特徴は法的効力があることです。似た言葉に「遺書」というものがありますが、 「遺書」には法的な決まりごとはありません。その点でむしろエンディングノートに近いと言えます。

 遺言書で、自分がこれまでの人生で築いてきた財産を「死後はどうしたいのか」示します。遺言書に記された意思は、死後に法的効果が認められます。ただし法的効果が発生するには、遺言書は民法に定められた方式に従って作成する必要があります。

遺言書って何?

(1)遺言書の種類

 遺言の作り方には大きく分けると「普通方式」と「特別方式」があります。

 遺言書を作成する場合は一般的には「普通方式」のものになります。「特別方式」とは臨終間際などやむを得ない状況で例外的に作成する方法です。ここでは特別方式については割愛して、「普通方式」についてのみ解説していきます。

 「普通方式」には「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」の3種類の作成方法があります。

 「自筆証書遺言」は自分で書く方法です。もっとも手軽で、お金もかかりません。ただし民法で定められた様式に従って書かれていないものは無効となってしまうという、リスクがあります。

 「公正証書遺言」は公証役場で作成します。それなりに、お金と手間がかかりますあが、法律のプロである公証人が、遺言者の口述に基づいて作成するので、内容も明確で、遺言執行の確実性が高いと言えます。また病気などで自分で公証人役場に行けないと場合は、公証人に自宅や病院等へ出張してもらうこともできます。ちなみに公証人は定年後の元裁判官や元検察官がほとんどです。

 「秘密証書遺言」は「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の中間的な存在です。どっちつかずなためでしょうか、ほとんど使われていません。

【普通方式の遺言書の種類と特徴】
   自筆証書遺言  公正証書遺言  秘密証書遺言
作成方法 全文を自筆で作成(パソコンは不可) 遺言の内容を公証人に伝えて、公証人が遺言書を作成 作成して(パソコン・代筆可)、公証人役場で封書に著名押印してもらう
費用 費用はかからない 公証役場手数料、証人依頼代など(「秘密証書遺言」より高い) 公証役場手数料、証人依頼代など(「公正証書遺言」より安い)
証人 不要 二人必要 二人必要
秘密性 秘密にできる 証人と公証人に内容を知られてしまう 秘密にできる
家庭裁判所
の「検認」
必要 不要 必要
保管方法 本人 原本は公証人、謄本は本人 本人
メリット
デメリット
  • 【メリット】
  • 自分ひとりで作成できる
  • 手軽
  • 費用がかからない
  • 【デメリット】
  • 様式不備で無効になることがある
  • 改ざんのおそれなど、死後、本人の筆跡かどうかでもめることがある
  • 自分で保管するので紛失の可能性がある
  • 死後、発見されないこともある
  • 【メリット】
  • 公証人が作成するので遺言の内容が明確で、遺産相続の確実性が高い
  • 様式不備で無効になることがない
  • 検認手続きが不要なので、死後すぐに遺言を実行できる
  • 【デメリット】
  • 証人が遺言の内容をばらしてしまう危険性は否めない
  • 費用が高い
  • 公証人や、証人に依頼する手間がかかる
  • 【メリット】
  • 内容を絶対「秘密」にしたい人には向いている
  • 署名が本人の物であれば、パソコン・代筆でもよい
  • 遺言書が本人のものであることが証明できる
  • 【デメリット】
  • 秘密証書遺言は現在あまり使われていない
  • 公証人は遺言の中身は確認しないので、様式不備で無効になることがある
  • 公証人や、証人に依頼する手間と費用がかかる
  • 自分で保管するので紛失の可能性がある
  • 死後、発見されないこともある

 

 平成26年4月から、公正証書遺言のデジタル化が始まりました。

 東日本大震災の時、公証役場で保管していた公正証書遺言の原本が津波で流されてしまいました。このことから、いつでも再現可能なように、原本をスキャナーで読み取りデジタル化することになったようです。

 なお、公証役場の手数料は、財産が多いほど、また相続人が多いほど割高になります。以下の、日本公証人連合会のサイトで手数料が確認できます。

(2)遺言書に書けること

 遺言書に何を書いてもいいのですが、法的に指定できる「遺言事項」の範囲は決められています。

 法的効力のない部分は「付帯事項(付言)」と呼ばれます。家族への感謝の気持ちなど、何を書いて自由です。また実務的にも、法定相続分とは異なる相続分を指定した場合など、なぜそのような配分にしたのか、理由(たとえば「妻の介護を託したので長男を多くした」など)を書いておくと、相続トラブルが回避されることも少なくないそうです。

  • 【遺言事項】
  • 相続に関する事項・遺産処分に関する事項
     ……相続分の指定・特定の相続人の廃除、遺贈など
     *法定相続と異なっていても、遺留分を侵害しない限り、原則として遺言が優先されます。
  • 身分に関する事項
     ……隠し子の認知など
     *婚外子(非嫡出子)の法定相続分は平成25年12月5日より嫡出子と同等になりました。
  • 遺言執行者の指定
  • その他、祭祀承継者の指定や生命保険の受取人など
  • 【付帯事項の代表的なもの】
  • 家族や知人への感謝のメッセージ
  • 相続が円滑に行われるように、遺言事項を補完することがら
  • 臓器提供や献体の希望
  • ペットの処遇
  • その他、自由に何でも書ける
遺言執行人とは?:
 遺言執行者というとドラマのイメージが強いです。資産家が死ぬと、突然、遺言執行者と名乗る○○信託銀行の人があらわれて、財産をバシバシと処分していく、あれです。
 遺言執行者は、遺言の内容を実現するために選ばれた、相続人の代理人です。必須ではなく、必要があれば指定します。遺言執行人は、未成年者と破産者を除いては誰でなれます。もめることが予想されるような場合、たとえば隠し子の認知や、ある特定の相続人を廃除する場合は、その手の専門家を予め指定しおくのも良いかもしれません。
 ちなみに信託銀行の遺言信託は、財産に関することをトータルに対応してくれますが、それなりに高額で資産家向けです。

(3)遺言書は書き直せる

 「一度書いた遺言は書き直せない」と思われがちですが、むしろ書き直すことの方が自然なようで、公証人連合会のサイトでは次のように書いてあります。

“遺言は,人の最終意思を保護しようという制度ですから,訂正や取消し(遺言の取消しのことを,法律上は「撤回」と言います。)は,いつでも,また,何回でもできます。”

 遺言を破棄したり、訂正する事情はさまざまです。

  • 「配偶者に財産を残すはずが逆に先立たれてしまった」
  • 「作成時と財産内容が大きく変わっている。相続するはずだった貯金をすでに使ってしまった」
  • 「相続人と仲違いしたので、相続内容を変えたい」…etc.

 遺言書は一度書いたら終わりではなく、むしろ、定期的に内容を見直します。

 訂正する場合は「公正証書遺言」と「秘密証書遺言」は、遺言書に直接訂正を書き込むことはできません。新たに遺言書を作成することにより内容を訂正します。「自筆証書遺言」は直接遺言書に書き込むことができますが、自己流の訂正ではダメです。民法で定められたやり方に従っていなければ、訂正箇所はは法的意味を持ちません。くれぐれも注意が必要です。訂正方法については次項で再度触れます。

 また、遺言内容の訂正は遺言書の内容を変更するのではなく、矛盾する行為をして取り消すこともできます。たとえば車を長男に相続すると遺言書に書いたとしても、生前に車を処分してしまえば、その遺言内容は法的効力を持ちません。

 破棄する場合は、「自筆証書遺言書」と「秘密証書遺言書」は、手元にある遺言書を破棄するだけでOKです。一方「公正証書遺言」は原本が公証役場にあるので、手元の謄本を破棄しても遺言を撤回することができません。「公正証書遺言」の場合は、新たに遺言書を作成して、前の遺言書を取り消します。

 なお遺言が複数ある場合は、日付の新しいものが法的効力を持ちます。種類は関係ありません。古い日付の公正証書遺言と新しい日付の自筆証書遺言があって、二つの遺言が矛盾する記載事項がある場合は 、新しい日付の自筆証書遺言の方の記載事項が法的効力を持ちます。

自筆証書遺言の作成

 自筆証書遺言は遺言内容を全文自分で書くので、費用もかからず、筆記用具さえあれば手軽に作成できます。

 そのため多くの人に利用さていますが、民法の定めた形式に従っていないと、無効になってしまうリスクを伴います。ここでは、自分で遺言書を書く「自筆証書遺言」を作成する前に知っておきたいことを紹介していきます。

(1)下調べ

 遺言を書着始める前に、自分の財産の内容を確認します。『エンディングノートの書き方第六回』で作った財産リストが活用してください。そして法定相続人を調べ法定相続分を確認します。遺留分や相続税の税金面も考慮してください。それらを踏まえたうえで、自分の意思を遺言内容へとまとめていきます。

(2)用意するモノ

 用意するモノは、紙と筆記用具、印鑑、それと封筒です。

  • 筆記用具
     …指定なし。書き換えを防止するために、鉛筆やシャーペンは避けたほうが良い
  • 用紙
     …指定なし。便せん、A4 ・B5の用紙が一般的
  • 印鑑
     …「押印」できれば印鑑の種類は問わない。必ずしも実印である必要はないが、偽造防止の為にも実印がお勧め
  • 封筒
     …遺言書を入れて封をするのに使う

(3)自筆証書遺言の原則

 遺言書は法律で決められた様式を備えている必要があります。異なれば無効になります。

  1. すべて本人が書いて書面にする(代筆、パソコン不可。録音、録画不可)
  2. 遺言書を作成年月日を明確に記載する(「吉日」などは不可)
  3. 遺言者が署名押印する

(4)自筆証書遺言書を書くときのポイント

 (3)の原則を踏まえて、自筆証書遺言を書くときのポイントをまとめました。

1.書面に書く(録音、録画は不可)
2.自筆で書く(代筆、ワープロ等での記録は不可)
3.単独で書く(夫婦など、連名は不可)
4.筆記用具・用紙は何でも可
5.縦書きでも横書きでも可
6.数字は漢数字でもアラビア数字でも可
7.1行目に「遺言書」とタイトルを入れる
8.相続財産をはっきりと特定できるように書く
 不動産は、登記簿謄本のとおりに正確に書きます。建物と土地では、「所在」「地番」「家屋番号」の表記が異なるので注意ポイントです。
 相続人に財産を受け継ぐときは「相続させる」。相続人以外の人に財産を受け継ぐときは「遺贈する」と書きます。
 「○○が相続するのが望ましい」のような不明瞭な表現は遺言書には不向きです。「○○銀行○○支店 山田太郎の普通預金(口座番号○○○○)の全てを長男・隆に相続させる(遺贈する)」のように明確に書きます。
9.相続人が誰を指しているのか、はっきりと特定できるように書く
 相続人の「氏名」に加えて、「長男」などの「本人との関係」や「住所」や「生年月日」を併記して、相続人は誰なのかを特定できるように書きます。遺贈の場合は「氏名と住所」を書くのが一般です。
例:相続→ 長男 山田太郎(昭和○○年○月○日生)
 遺贈→ 高橋一郎(昭和○○年○月○日生、東京都○○区○○町○○丁目○○番)
10.相続分はわかりやすく書く
 「遺産の二分の一を妻に、三分の一を長男に・・・」と安易に書くと、相続財産が自宅だけのケースでは、売却して金銭に変換して、各相続人の相続分に応じて配分しなくてはなりません。「○○は妻に」、「△△は長男に」と記述を明確にします。
11.なるべく付言事項を書く
 付帯事項は必須ではありませんが、感謝の気持、遺言を書くにいたった理由などを書き添えるのが一般的です。また、相続の配分に偏りがある場合などは、その理由など書いておきます。
12.なるべく遺言執行者を指定する
 相続の手続きをスムーズにするために指定しますが、必須ではありません。民法では「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない」と定められています。
13.末尾に作成年月日を正しく記述する
 吉日などの不明瞭な記述は不可です。遺言書が複数ある場合は、日付のもっとも新しいもの(故人が最後に書いたもの)が有効となります。ただし日付が古い遺言書にある遺言事項が、日付の新しい遺言書にはない場合は、遺言書の日付は古くとも、その遺言事項に関しては、一番新しいということで効力を持ちます。
例:平成26年3月31日
14.末尾に署名を入れ押印をする
 印鑑の種類は押印できれば何でもよいのですが、やはり印鑑は偽造防止の為にも実印が適切です。遺言書に一緒に印鑑証明を入れておくと明確性が増します。
15.遺言書を書き終えたら、封筒に入れて印鑑を押して「封印」する
 民法で、自筆証書遺言は家庭裁判所の検認の前に開封してはならないと定められています。遺言を入れて封をしたら、封筒の表か裏に 「開封する前に、家庭裁判所へ提出して検認を受ける」と、注意書きをしておくことをおすすめします。
16.遺言書が複数枚になるときは、「契印」をおすと変造防止になる
 「契印」は2枚以上にわたる文書が、一連のものであることを証明するものです。紙と紙を並べて、両方にまたがるように押印します。勝手に差し替えられたり、抜き取られたりするのを防ぎます。
17.「訂正」は注意が必要。法律に決められた方法でなければ無効に!
 変更箇所に押印して「欄外」、もしくは「末尾」に変更箇所と内容を付記して著名します。次のサイトで実例が紹介されています。

 

(5)遺言の文例で使えるサイト

 自分で遺言内容を考えるとき、ネット上には文例集がたくさん公開されています。ここでは、その中から二つほど紹介します。また遺言関連の書籍もたくさん出版されています。

 「すべてを妻に相続する場合」、「子を認知する場合」など「はたまたないよりはましな遺言」など、ケース別の遺言文例が100例、紹介されています。

 遺言書の「書き方サンプル」は、丁寧な説明付です。遺贈や付言事項も書かれていて参考になります。

 

(6)ペットの「負担付遺贈」

 死後、可愛がっていたペットをどのように世話して欲しいのか、遺言書ではその希望は「付言事項」として書きます。しかし「付言事項」には法的効力がありません。そこで法的効力をしっかり持たせたい場合は、「負担付遺贈」という方法があげられます。これは条件を付けて財産を遺贈する制度で、遺言事項として財産を贈与するかわりにペットの世話を頼むと書くのです。

 愛のペットが愛情もって世話してもらえるようにするには、生前に本人から承諾を得るなどソフト面での配慮はもちろんですが、かかりつけのお医者さんや登録番号、お世話の仕方もしっかり伝授することも忘れずに。

争族トラブル

 繰り返しになりますが、家庭裁判所に持ち込まれる、相続トラブルの件数が急増しています。個人の権利意識が高い今は、家族であっても、価値観の違いや、現状の立場の違いがあります。特にお金が絡んでくると、主張が極端に振れることもあります。遺言書を書くことで、無用な争いを避け、相続をスムーズに進めることに繋がります。しかしその一方で、遺言書があるがゆえに、引き起こされるトラブルもあるのです。

 ここでは、相続・遺言書トラブルにまつわる情報を紹介しています。

 

(1)遺言で防げる相続紛争:

 遺言があることで、遺産相続のときに起こりがちなトラブルを防ぐことができます。どのようなケースで、特に遺言を書いておいた方が良いのか列記します。

子供のいない夫婦
 「財産は自宅だけ」の典型例です。財産が自宅しかなく、残された配偶者が今後も住み続けるケースです。特に相続人が配偶者と兄弟姉妹の第3順位の場合は、遺留分の権利は兄弟姉妹にありませんので、遺言で指定すれば、兄弟姉妹の相続分を廃除して、すべてを配偶者に相続させることが出来ます。
相続人の多い人
 ふだんは仲の良い親族も、お金が絡むとそうとはゆかず、かえって血のつながりがあるからこそ、ややこしくなるということもあります。死後、自分の財産をどのようにしてもらいたいのか、財産の行方を示して、無用なトラブルを避けます。
相続人のいない人
 法定相続人がいない場合は、原則的には財産は国庫に入ります。しかし相続人がいなくとも、遺言書で指定すれば財産を思うところに譲ることが出来ます。知人に「遺贈」したり、母校などに「寄付」したりすることができます。
財産が不動産ばかりの人
 預貯金がほとんどなく、不動産ばかりのケースでは、相続税を払おうにも、お金がなくて払えないという事態がおきかねません。また不動産は預貯金のように簡単に分けることもできません。売却して金銭化するのか、相続人を指定するのか、書きます。
内縁の妻がいる人
 法定相続人は故人との関係が戸籍上に記録されていなければなりません。婚姻届を提出していない内縁の配偶者に相続権はないので、財産を分けたい場合は遺言書で指定して「遺贈」します。
離婚・再婚した人 
 別居中でも離婚届が受理される前は、戸籍上は夫婦なため、元配偶者に相続権が認められます。配偶者の相続分は2分の1と配分が大きいので注意です。遺留分の権利は侵害できませんが、遺言書で相続人から「廃除」すると指定します。また再婚の場合、再婚相手の連れ子は養子縁組をしていないと、相続人にはなれませんので、遺言書で指定して「遺贈」する必要があります。
子ども認知したい人
 婚外子がいる場合は遺言で認知すれば、その子どもは遺言が効力を持つ亡くなった直後から、故人の非嫡出子になります。平成25年12月5日より嫡出子と嫡出でない子の相続分を同等になりました。

[法務省のサイトより抜粋]

 平成25年12月5日,民法の一部を改正する法律が成立し,嫡出でない子の相続分が嫡出子の相続分と同等になりました(同月11日公布・施行)。

  • 平成25年9月5日以後に開始した相続について適用することとしています。
  • 「嫡出でない子」とは,法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子をいいます。
特定の人が介護していた
 介護を中心にやってくれた人など、「被相続人(故人)に特別な奉仕・貢献をした」相続人には法定相続分にプラスして、財産を譲り受けることのできる「寄与分」を民法は認めています。また介護してくれた人が法定相続人でない人(たとえば息子の嫁など)に財産を譲る場合は、遺言書で指定して「遺贈」します。
相続人に行方不明者がいるひと
 法定相続では相続人の中に、行方不明者がいる場合は、相続手続を進めることができません。遺産分割協議はあくまでも相続人全員の同意が必要だからです。遺言書で、相続から「行方不明者を除く」と指定すると、遺言事項が優先され、相続の手続きがスムーズに運びます。

 

(2)遺言書が招く意外なトラブル

 よかれと思って書いた遺言書が意外なトラブルを呼んでしまうこともあります。

 遺言書は形式上に不備があると法的には有効な遺言とは認められません。また内容がいい加減では、かえって相続人の心情を害することになりかねません。

 丸山学は著書『最期まで自分らしく生きる 終活のすすめ(2011)』のなかで「法的に不備・間違いのある遺言書を作成するくらいなら、いっそ遺言書など存在しないほうがどれだけ平和かわかりません」と警鐘を鳴らしています。たとえば、遺言で隠し子を認知したとしても、もし形式上不備があれば法的に有効な遺言書とは認められません。その子は認知されないにもかかわらず、配偶者には愛人や隠し子がいた事実を知ってしまうという悲劇が起こりかねないと指摘しています。公正証書遺言とちがい自分で遺言を書く際は、くれぐれも不備がないように気をつけます。また訂正するさいも、決められた形式に従っていなければ、訂正は活かされません。遺言書は書いた後、いつでも変更や撤回ができるので、「重要な変更があるときは新たな遺言を作成するほうが安全」のようです。

 また遺言書が書いたことは必ず周りの人に伝えておくことが必要です。相続が進んでから遺言書がみつかると、少し面倒なことになります。たとえ遺産分割後に、遺言書が見つかった場合でも、やはり遺言内容の方が原則尊重されるのです。遺産をどう分割するか、相続人たちは再度話し合いをすることになります。

 死後しばらくたって遺言書みつかるケースも多いそうです。法定相続で相続で済ましていても、遺言書があることで、やはり遺言書の内容の方が優先されます。

  • 【遺言書が招くトラブルの例】
  • 遺言書の様式の不備で無効になる
  • 遺言書に書かれていない財産がある
  • 遺留分を無視して、財産を特定の人だけに相続させている
  • 遺言書を書いてから年月がたちすぎていて、相続財産が遺言書の内容と大きく変わってしまっている
  • 作成時の本人に意思能力や偽造の疑いがある。公正証書遺言以外は自筆です。作成時に認知症になっていなかったか、筆跡が違うなどと、偽造の疑いをかけられることもあります。自分で書いたことを示すため、遺言書を持った自分の写真を撮っておきます
  • 遺言書の存在を知らせていなかったため、相続人たちが再度話し合うことになる。

参考にさせて頂いた本
丸山学(2011)『最期まで自分らしく生きる 終活のすすめ』同文舘出版

【書き方サンプル】

□(例)遺言書。。。
遺言書の有無:遺言書はあります
遺言書の種類:自筆証書遺言
保管場所:クローゼットの喪服の箱の中
【備考】遺言書は開封する前に、家庭裁判所で必ず「検認」を受けてください。自筆であることの証明として、遺言書を持って撮った私の写真を入れてあります。

[記入日 ○○年○月○日]

 

 自由に書けるエンディングノートとは違って、遺言書は法的効力を持つからこそ、細々とした決まりごとがありました。種類も3種類あり、ほとんど使われていない秘密証書遺言を除けば、自筆証書遺言は手軽であること、公正証書遺言は確実であることが最大の特徴です。

 エンディングノートには遺言書があるのかないのか、その種類、そして保管場所を明記しておきましょう。

 さて相続・遺言書についての情報はいかがでしたでしょうか、多少、エンディングノートの書き方のテーマからは脱線しましたが、書く上での予備知識としては、とても大切なことだと思います。さて、最後に脱線ついでに、「生前契約のトータルサポート」についても少しご紹介しておきたいと思います。では次回はとうとう最終回です。「自分について書く」項目で役立つ情報のご紹介です。お楽しみに。

[余談] 生前契約のトータルサポート

 生前契約は、終活全般を幅広くサポートするサービスです。

 有料ですが、任意後見から、葬儀の生前予約、火葬、埋葬、供養、そして葬儀後の遺品の整理、まで、家族に代わってトータルに面倒見てくれるので、特におひとりさまや、家族に面倒かけたくない人に関心がある方が多いようです。

 運営母体は「NPOりすシステム」「NPO法人きずなの会」などのNPO法人や、葬儀社系列の「if共済」などがあります。

 “新しい家族の形”として「生活支援サービス」を提供している「NPOりすシステム」のサイトでは次のようにサービス概要が述べられています。

“LiSSシステム(NPOりすシステム)は、生きている今、万一判断力を失ったとき、死んだとき、トータルであなたのくらしを支えます。・・・<中略>・・・元気いっぱい生き生きとくらしている「今」、病気やケガなどで痛手を受けたとき、病気や長寿の結果、判断力が低下したり失った「後見等の状況」に至ったとき、「死」を迎え、その後に必要な「死後事務」。こうした人生の全てをトータルで、組織的且つシステム的にサポートするのが、「LiSSシステム」の役割です。”

 なお、契約しても「死亡時」に周りの人が契約していることを知らないと困ってしまいます。家族がある方はとくに、契約している旨、エンディングノートや遺言書に書いておくことが大切です。

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