エンディングノートの書き方ノート~7.1.相続と遺言(1)

相続と遺言(1)

エンディングノートの書き方ノート|コトダマの里
7.1.相続と遺言
このシリーズではエンディングノート(終活ノート)を書くときに役立つ情報をまとめてご紹介していきます。7.1では、相続について取り上げます。

 

 こんにちはコトダマの里のアズです。今回とりあげるのは相続と遺言です。人は死んでも、そのひとのことを知っている人が生きている限り、心のなかで生き続けるとよく言われます。「まったく、あの人には最後の最後まで困ったもんだよ」と思われ続けるよりは、願わくば良いイメージでありたいものです。そのためにもエンディングノートを書くことは、自分の人生に自分らしくケリをつけるのにとても良い方法です。しかしエンディングノートは自分の希望や考えを自由に書に書けるのですが、残念ながら法的効力はありません。死後、自分の意志に法的効力をもたせるには遺言書にして示す必要があります。

 エンディングノートと遺言書は別物です。その違いを知ることにより、エンディングノートの意味深さを感じていただければと思います。今回は相続の基礎について、次回は遺言書の種類や書き方についてご紹介します。

「相続?」、「争族?」相続トラブル急増中

 家庭裁判所に持ち込まれる、相続トラブルの件数が急増しているそうです。

 戦後家督相続性が廃止されても、しばらくは長男が財産一式を相続し一族の面倒を見るという「家」という考え方が続いていました。しかし今の日本の社会は個人の権利意識は高く、個々が権利を主張するようになっています。「長男がすべて相続」というは過去の話で、遺族の間で遺産分割の話がまとまないケースが増えています。 そこで遺産の分配をめぐって争う遺族たちのことを揶揄して「争族(そうぞく)」と呼ぶそうです。

 また、もめるほど財産があるわけではなないから、大丈夫、というわけでもありせん。むしろ財産が少ないからこそ、もめるということもあるそうです。「争族」になることを防ぐために生前に、その意思をしめしておく必要がありそうです。

 実際、遺書を書いておく人も増えています。日本公証人連合会によると、公正証書遺言の作成件数は平成7年はから、平成22年のあいだに約2倍に増えています。

急増する遺言書の作成件数

図表:コトダマの里作成

相続とは?

 相続とは、亡くなった人の財産や負債に関する権利義務を、家族など遺された人が引き継ぐことです。

 亡くなった人は「被相続人」と呼ばれます。一方、相続によって財産や権利義務を受け継いだ人(遺族など)が「相続人」と呼ばれます。

 相続は「被相続人」が亡くなった瞬間からはじまります。民法には次のように書かれています。

民法第896条(相続の一般的効力)
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

相続の種類

 相続には「法定相続」と「遺言相続」があります。

 「法定相続」は、遺言がない場合に行われる相続です。法律の定める相続の権利がある人「法定相続人」が、それぞれ法律で定められた相続分に沿って相続します。

 一方「遺言相続」は、遺言がある場合に行われる相続です。遺言書の内容は、法定相続より優先します。遺言で相続分を指定をできます。また法定相続人以外の人に財産を贈与することも可能です。

 財産を法定相続人が引き継ぐことは「相続」と言いますが、相続人以外の人が財産を引き継ぐことを「遺贈」と言います。

 ただし民法では相続人が最低限相続できる割合を定め、「遺留分」として保障しています。兄弟姉妹以外の法定相続人には「遺留分」の権利が認められています。ですから遺言で相続財産の配分を自由に決められると言っても、相続人の「遺留分」を侵害しない範囲においてだという、限定的であることに要注意です。

 ややこしい話なのですが、「相続」と、実際どのように遺産を分割するかが、同じである必要はないのです。遺言のある場合は、故人の意志である「遺言」が最も優先されることが法律で規定されていますが、とくに遺言のない「法定相続」では、相続人全員での話し合い「遺産分割協議」を持つことにより、配分を自由に変えることができます。

 このため、「法定相続」では、相続人同士の話し合いではまとまらずドロ沼の「争族(そうぞく)」となってしまうことも少なくないようです。

相続の種類

図表:コトダマの里作成

相続財産の対象になる? ならない? みなされる?!

 財産の中には、相続の対象になるモノのと、ならないモノがあります。また相続の対象にはならないけれども相続税の税金の対象にはなる「みなし相続財産」というものがあります。それぞれについて説明していきます。

(1)相続の対象となる財産

 相続の対象となる財産は、プラスの財産に加えて、借金などのマイナスの財産も入ります。

 相続財産がマイナスの財産ばかりなど、相続したくない場合は相続は放棄することが出来ます。全面的に相続を放棄する「相続放棄」と、財産の一部に限定をかけて相続する「限定承認」という方法もあります。

 相続放棄が可能な期間は決まっています。相続人本人が相続開始を「知ったとき」から3ヶ月以内に手続きをとることになっています。また故人の口座からお葬式代などを引き落とした場合も、相続手続きを開始したとみなされ、相続放棄ができなくなります。

 次に代表的な財産項目をまとめました。なお、生命保険は「受取人」の違いによって、相続の対象になるか否かが変わります。

 プラスの財産の代表的なモノ  マイナスの財産の代表的なモノ
不動産(建物・土地・借地権・借家権)、銀行預金、株、債権、生命保険(保険金受取人が故人本人(被相続人)のもの)、美術品、骨董品、貴金属 自動車、ゴルフ会員権 ……など 借金、ローン、未払いの税金 ……など

(2)相続の対象とならない財産

 相続の対象とならない財産は、遺産分割の対象にもなりません。次のようなものがあげられます。

 相続の対象とならない財産の代表的なモノ
  • 生命保険(保険金受取人が故人本人ではないもの)
  • 死亡退職金・遺族年金など
  • お墓や仏壇などの「祭祀財産」
  • お香典
     ……など

(3)みなし相続財産

 「みなし相続財産」とは、相続財産にならず、遺産分割の対象にはならなくても、「相続税の課税対象にはなる」財産です。ちょっとビックリですよね。

 「みなし財産」の対象となるのは、相続財産とは別に、故人(被相続人)の死亡を原因として、相続人のもとに入ってきた財産です。もちろん申告する必要があり、相続税がかかります。

 なお、みなし相続財産の生命保険金については一定額の非課税枠が設けられています。そのため節税対策に用いる方も多いそうです。

 みなし相続財産で代表的なモノ
  • 生命保険の死亡保険金
  • 生命保険契約に関する権利
  • 定期金に関する権利(生保の個人年金や郵便局の年金など)
  • 死亡退職金
  • 弔慰金
  • 故人(被相続人)が亡くなる前の3年間で相続人に贈与した財産
     ……など

 

法定相続人の範囲と、相続順位

 民法は「法定相続人」を定めていて、財産を相続できる親族の範囲と順位が決まっています。まず、配偶者は生きている限り「常に」相続人となります。次に第1順位の「子ども」がきます。そして第2順位「故人の親」、第3順位「故人の兄弟姉妹」が続きます。

 相続の有無には、この順位が優先されます。上位順位の相続人がいる場合は、下位順位の人は相続人となることはできません。たとえば故人に配偶者と子ども、さらに両親がいる場合は、第1順位の配偶者と子供が相続人です。第2順位の両親は相続人になることはできません。

 また本来、相続人になるはずの人が、相続の開始以前に死亡している場合は「代襲相続」が行われます。「代襲相続」では、その子どもや孫が代わりに相続人となって財産を受け継ぎます。

 なお法定相続人は故人との関係が戸籍上に記録されていることが前提です。内縁の妻や連れ子など、法的に関係が立証できない場合は、法定相続人になることができません。

 離婚では認められる内縁の妻の財産分与の権利が、相続にはないのです。また反対に、別居中でも離婚が成立していなければ戸籍上は配偶者です。そうすると相続人の権利が発生してします。次項で触れますが、配偶者の配分はとても大きいので要注意です。遺留分は侵害できませんが、相続人に含める、除外する意志は遺言書で指定する必要があります。

法定相続人の範囲と順位

図表:コトダマの里作成

法定相続分

 民法は、法定相続人が相続できる財産の割合「法定相続分」を定めています。

法定相続分

図表:コトダマの里作成

 たとえば夫が亡くなり、妻と子ども二人が遺されたケースでは、第1順位の相続が行われます。妻が2分の1を、子どもたちが残りの2分の1を相続します。このケースでは子どもは二人ですから、2の1の財産をさらに二人で分割します。子どもたち、それぞれの取り分は4分の1です。

 配偶者は「常に」相続人になると述べましたが、既に死亡している場合は、第1順位の子が最上位になります。財産を全部相続します。

 なお繰り返しになりますが、法定相続分は相続人全員の合意によって、遺産分割の割合は自由に変えられます。

 

遺留分に注意:

 「遺留分」とは法定相続人が最低限譲り受けることの出来る割合のことです。通常の法定相続の2分の1が基本になります。遺言すれば法定相続分とは異なった配分を自由に指定できますが、遺留分の権利を侵害することは出来ません。

 たとえば遺言書で相続人から廃除されたひとり息子が遺留分を請求するケースでは、通常の「子」の法定相続分の2分の1の半分である、四分の一が息子の取り分になります。

 注意が必要なのは、法定相続人の遺留分には例外があるということです。兄弟姉妹には遺留分認められません。また、相続人が親・祖父母などの「直系尊属」だけの場合は、相続財産の3分の1 が遺留分になります。

相続の手続き

 相続の手続きをするのは遺族です。エンディングノートを書くことには関係のですが、流れで触れさせていただきます。

 相続に関する手続きは期限が決められているものが、いくつかあります。相続の開始(死亡した日)の翌日から、もしくは相続の開始を知った日の翌日から起算して……、

  • 「相続放棄」や「限定承認」の申し立ては3ヶ月以内
  • 故人の準確定申告は4ヶ月以内
  • 相続税の申告と納付は10ヶ月以内

 相続手続きは四十九日が終わって、すこし落ち着いた頃からはじめることが多いようです。相続税申告までの10ヶ月の間には、やることがたくさんあります。

 次に、相続の開始から、相続税の申告・納付までの簡単な流れを図にしました。

相続手続きの流れ

図表:コトダマの里作成

家庭裁判所で『検認』?:

 上の図で「家庭裁判所で『検認』」とありますが、遺言書の「検認」は民法で決められています。公正証書遺言以外の遺言書は、死後すみやかに「封をした状態」で家庭裁判所に提出します。

 家庭裁判所は「遺言書がたしかに存在している」ことを確認します。ただし検認では遺言の中身について有効性は判断しません。今後、遺言書の内容が改ざんされることがないように、記録をします。

 なお、検認前に遺言書を開封してしまうと罰則の対象になりかねません。数万円の罰要注意です。

 

相続税申告が必要なケース:

 相続税の申告が必要になるのは、相続財産が相続税の基礎控除を超える場合です。たとえ相続税が非課税枠内で納付することがなかったとしても、基礎控除を超える場合は、税務署への申告が必要になります。

 基礎控除を超えない場合は、相続税もかかりませんし、税務署への申告も不要です。

 現状では相続税のかかるケースは少なく、9割以上の人が、相続税がかかっていません。しかしニュースでも大きく取り上げられているように、平成25年の税制改正で、相続税の基礎控除が平成27年1月以降減額されることが決まりました。

相続税 どう変わる?(NHK生活情報ブログ 2013.1.29)

出典: 相続税 どう変わる?(NHK生活情報ブログ 2013.1.29)

 現行は「5000万円+1000万円×法定相続人の数」ですが、改正後は「3000万円+600万円×法定相続人の数」 に引き下げられるので、これまでは払わなくてよかった人たちも、払わなければならなくなることになります。このため相続税の支払い義務が生じる人が大幅に増えることが見込まれています。

 25年4月が教育資金贈与の非課税特例制度も開始されています。孫の教育資金は1500万円まで非課税です。生きているうちから少しずつ前渡しするなど、「贈与の特例」を活用して賢く節税したいものです。

 相続税の払い方は、ほかの税金と同じです。納付書に現金を添えて、郵貯や銀行(日本銀行歳入代理店)で納付できます。ネットもOKです。詳しくは国税庁のホームページをチェックしてください。

 

相続税の計算

 相続税の大まかに次のような流れで計算します。

相続税計算のながれ

 相続税の計算式は国税局のサイトで見られます。

4152相続税の計算

出所:国税庁

 自分で計算するのは大変ですが、ざっくり目安を付けたい場合はネットを使うと便利です。

 たとえば、国税庁のサイト「相続税の計算」では、課税遺産価格を入力すると、配偶者と子の相続税額(法定相続)が出力されます。

4152相続税の計算(入力)

出所:国税庁

 もう少し条件を細かく設定したい場合は、インターネットで「相続税 計算 シミュレーション」などをキーワードに検索すると、相続税の計算をシュミレーションできるサイトがいくつもヒットします。金融機関系のサイトや税理士事務所さんのサイトが多いようです。家族構成や財産額を入力すると、相続税額を試算してくれます。また「相続税 計算 ダウンロード」で検索すると、エクセルファイルで作成された相続税の計算シートの無料ダウンロードページがいくつかヒットします。サイト上で数値を入力するのに抵抗がある方にはこちらの方がむいています。

 これらのサービスでは相続税額を正確にたたき出すことは無理ですが、大まかな目安を付けるのに便利です。

[余談]もめやすいのは不動産相続:

 預貯金もわずか、財産は自宅だけという方は要注意です。

「相続問題でもめやすいのは「財産は自宅だけ」の人

“主な財産が自宅だけという人はとても多いのですが、実はこうした人たちは非常にもめやすい。資産家が自宅以外の不動産をいくつも持っている場合なら、分けようもありますが、一つしかない不動産の処理は大きな問題になります”

 自宅の価値に匹敵するような預貯金があれば、長男は自宅、二男は預貯金ともできます。しかし財産が自宅だけの場合、自宅は預貯金のように簡単に分けることができないので相続トラブルになりやすいのです。

 次のようなケースも考えられます。たとえば、子どものいない夫婦で、両親も既に他界しています。夫が遺言書を遺さずに亡くりましたが、遺産は夫婦で住んでいる自宅だけです。夫には兄がいます。4分の1の法定相続分の現金を請求してきました。このような場合、妻の方で現金の都合がつかなければ、兄に相続分を支払うため、住み慣れた我が家を売却することになる、という最悪の展開になりかねません。

 現金がないゆえに「争族」になりやすい現状はあまり知られていません。日本法規情報の調査でで「貯金がなくて自宅があるのみ」といったケースだからこそ、相続トラブルが多いことを知っていたかと聞いたところ、「知らなかった」人は71%に上り、「知っていた」人は23%にとどまっていました。

 なお土地の評価方はいろいろありますが、相続税は贈与税と同じく「路線価」で評価します。「路線価」は「実勢価格(実際に土地が売買されるときの価格)の70%~80%」です。ちなみに「固定資産税評価額」は「実勢価格(実際に土地が売買されるときの価格)の60%~70%」で、路線価より低く評価されます。

 相続における不動産の評価は税理士さんの腕の見せ所です。たくさんの不動産を持つ資産家さんにとっては大きな問題ですになります。不動産の評価額を低く抑えられれば、無駄に相続税を払わずにすみます。

 

 さて今回はいかがでしたでしょうか。相続トラブルに発展しないためにも、遺言書は書いておいた方が良いようですね。次回はその遺言書です。ところが遺言書があることで、かえってもめてしまうこともあるようですよ。では、ではお楽しみに。