エンディングノートの書き方ノート~5.2.終末医療の意思表示(2)

終末医療の意思表示(2)

エンディングノートの書き方ノート|コトダマの里
5.2.終末医療の意思表示(2)
このシリーズではエンディングノート(終活ノート)を書くときに役立つ情報をまとめてご紹介していきます。5.2では死後の臓器提供と献体、終末の場所について取り上げます

献体と臓器移植

 コトダマの里のAzuです。

 近年は、献体の申込数が「葬儀費用がかからない」という理由で増加しているそうです。献体では火葬費用などすべて大学持ちで、遺族が遺骨を引き取らなければ、大学の納骨堂などに納められることから競争率が高くなり、献体登録の受付を断る大学病院も出てきているそうです。

 献体と臓器提供はともに、自分の遺体で行う「究極の社会貢献」とも言われています。献体と臓器提供の両方を希望することはできますが、実際になくなったときは、どちらかが選ばれることになります。具体的なお話しに入る前に、次のアメリカの記事を紹介します。ロバート・テストさんという男性がアメリカで人気の人生相談DEAR ABBY(ディア・アビ―)に寄せられたものです。ロバートさんの最後の望みは自分の死を他の人に捧げることでした。臓器提供の希望が綴られています。

『わたしを思い出すには』 ロバート・テスト
TO REMEMBER ME by Robert Tests

医者が私の脳は機能していないと告げたとき、わたしの命は止まったと同じです。
“At a certain moment a doctor will determine that my brain has ceased to function and that, for all intents and purposes, my life has stopped.

その時がきたら、人工的な機械をわたしの身体に入れるようなことはしないで下さい。そして、わたしが死の床についたとも言わないでください。そうではなく「生の床」と呼んで、そこからわたしの身体を起こして、他の人たちが充実した人生を送れるように、役立ててください。
“When that happens, do not attempt to instill artificial life into my body by the use of a machine. And don’t call this my ‘deathbed.’ Call it my ‘bed of life,’ and let my body be taken from it to help others lead fuller lives.

わたしの目は、これまで日の出を見たことがなく、そして赤ちゃんの顔も、愛しい女性の瞳を見ることもできなかった男性にあげてください。
“Give my sight to a man who has never seen a sunrise, a baby’s face or love in the eyes of a woman./p>

わたしの心臓は、心臓が絶えず痛みばかりで、他には何ももたらすことのなかった人へあげてください。
“Give my heart to a person whose own heart has caused nothing but endless days of pain.

わたしの血液は、ペチャンコにつぶれた車の下から引きづり出されたティーネージャーの男の子に、彼が孫の遊ぶ姿が見ることができるまで生きていけるよう、あげてください。
“Give my blood to the teenager who has been pulled from the wreckage of his car, so that he might live to see his grandchildren play.

わたしの肝臓は毎週機械にたよって生きながらえている人にあげてください。
“Give my kidneys to one who depends on a machine to exist from week to week.

わたしの身体にある骨、全ての筋肉、全ての神経線維を使って、障害で歩くことのできない子どもが歩けるようになるような、手段を見つけ出してください。
“Take my bones, every muscle, every fiber and nerve in my body and find a way to make a crippled child walk.

わたしの脳を隅々まで調べて、細胞をとり、必要とあらば増やして、いつか口のきけない男のが、バットにカッキーンとあたる音に歓声をあげたり、耳の聞こえない女の子が窓に打ち付ける雨の音を聞くことができるるように、生かしてください。
“Explore every corner of my brain. Take my cells, if necessary, and let them grow so that someday a speechless boy will shout at the crack of a bat and a deaf girl will hear the sound of rain against her windows.

わたしの残りの身体は火葬してください。そして、草花の成長を助けるように、灰を風に流してください。
“Burn what is left of me and scatter the ashes to the winds to help the flowers grow.

もし何かしら埋めなければならないのならば、わたしの失敗、弱さ、人々に対する偏見を埋めしてください。
“If you must bury something, let it be my faults, my weaknesses and all my prejudice against my fellow man.

わたしのタマシイは神さまにあげてください。私を思い出したいと思ったら、あなたを必要としている人に、親切な行ないや言葉でもって接することで、わたしを思い出してください。もしこれらのお願い事すべてをあなたがして下されば、わたしは永遠に生きることができるでしょう。
“Give my soul to God. If by chance you wish to remember me, do it with a kind deed or word to someone who needs you. If you do all I have asked, I will live forever.”

photo credit: joe fakih gomez via GATAG

photo credit: joe fakih gomez via GATAG

(1)献体

 献体とは、医学・歯学の大学で教育の一環として行われる人体解剖の実習に役立たせるために、自分の遺体を無条件・無報酬で提供することをいいます。費用はかかりません。

 献体を希望する場合は、本人もしくは家族が献体篤志家団体(献体の会)や医科・歯科の大学へ登録の申し込みをします。登録が完了すると、献体先大学名と死亡時の連絡方法などが記載された献体登録書が発行されます。献体は20歳以上がならば登録できます。なお、献体は家族のひとりでも反対した場合は実行されないので、履行を確実にするためには、事前に家族全員の同意を得てきます。

 しかし献体は、葬儀後の「火葬・骨拾い」がなく、遺骨がもどってくるまで数年かかるため、遺族の気持ちの収まりがない、また、いつご遺骨が戻ってくるかがわからないので、納骨の予定が立たないなど、困惑することもあるようです。

 エンディングノートに書くときは「献体を希望するのか」、「献体登録している場合は、登録書の補保管場所や登録先の連絡先も明記しておきます。 献体について詳しくは、「日本篤志献体協会」のホームページをご覧ください。

【献体の死亡後の流れ】

  • ご臨終後、速やかに遺族が献体登録先に連絡し、移送日など、今後の打ち合わせをします。
  • 通夜・葬儀・告別式は通常通りに行なえます。
  • 告別式後、献体登録先に運ばれます。火葬・骨拾いは自分たちでは出来ません。
  • 解剖実習が行われます。人体の構造を全身くまなく調べるので、1年半ほどかかる。なお解剖実習は、搬送後速やかにおこなわれる、ということではないそうです。
  • 解剖実習後、大学病院が火葬して、ご遺族の元に遺骨が戻ってきます。③のご遺体を預けてから、ご遺骨が戻ってくるまで、通常1~3年かかる。

(2)死後の臓器提供

 臓器提供は、臓器の機能に障害のある人のために、死後臓器を提供することです。費用はかかりません。

 意思表示の方法は3つあります。「提供する意思」は15歳以上、「提供しない意思」は年齢問わず口頭でも有効です。

 通常は「心肺停止の心臓死」をもって「人の死」としますが、日本の臓器移植法では、臓器を提供する意思がある場合に限って「脳死を人の死」としています。臓器移植には、脳死と心臓停止後で、提供できる部位が異なってきます。脳死の場合は、すべての部位が本人と家族の同意が必須ですが、心臓停止後の場合は腎臓・角膜移植は本人の同意がなくても、家族が了承すれば行われます。

 本人に臓器提供の意志があっても履行されないケースもあります。家族の方が故人の臓器提供意思を納得して意思表示カード・保険証の意思表示欄に家族として署名していようといまいと、最終的に家族が拒否した場合は実行されません。また脳死での臓器提供を行うことのできる病院は限られているため、臓器提供のための体制が整備されていることが条件です。カードの記載不備も注意が必要です。

 なお脳死は、意識がなく、大脳が機能していない状態の「植物状態」とは違います。脳死は呼吸・循環機能の調節や意識の伝達など、生きていくために必要な働きを司る脳幹を含む、脳全体の機能が失われた状態を指します。脳死になると、人工呼吸器をつけていても、数日後には心臓が停止します。

 エンディングノートに臓器移植のについて書くときのポイントは、

  • 臓器提供を希望するか
  • <希望する場合は、タイミングは「心肺停止後」か、「脳死後」かのどちらか/small>
  • 臓器提供の意思表示はどこに書いてあるのか、ドナーカード、保健所や運転免許、ネット登録など
  • ドナーカードなどの保管場所、ネット登録の場合はID番号

 アイバンクに献眼登録している場合は、登録先と連絡先を書き添えます。献眼登録は、全国にある最寄りのアイバンクから登録できます。生前に献眼登録をしていなくてもよく、家族の承諾があれば献眼できます。臓器移植、アイバンクについて詳しくは、こちらのサイトを見てください。

【臓器提供の死亡後の流れ】

  • ご臨終(脳死、または心臓停止)後、速やかに摘出が開始されます。
  • 臓器の摘出手術は、数時間程度でおわります。
  • 臓器摘出後、傷口は縫合されます。ご遺体は綺麗に整えられて、ご家族へと戻されます。(摘出でご遺体がバラバラにされてしまうことはありません)
  • 通夜・葬儀・火葬・納骨は通常通りにできます。ご遺体はすぐに戻ってくるので何ら支障はありません。

終末を迎える場所

 ホントーは、終末をを迎える場所のお話は、時系列的には、臓器提供・献体のお話をする前に、済ませておくべきだったかもしれません。

 「ぴんぴん長生き、ころっと往生」。元気に長生きをして、介護生活もなく、家族に迷惑をかけることもなく、ころっと死にたい!そんな気持ちにこたえて、長野県にぴんころ地蔵さんがお目見えしています。かわいいですね。全国から「ぴんころ詣」に参拝者が訪れているそうです。わたしもピンコロしたいです。ぜひ自宅でポックリと逝きたいので、折を見てお参りに行きたいと思っています。

ぴんころ地蔵(出典:長野県・のざわ商店街振興組合)

ぴんころ地蔵
(出典:長野県・のざわ商店街振興組合)

 最期をどこで過ごしたいか、千葉県の調査では「あなたが治る見込みのない病気になり、死期がせまっていることが分かった場合、最期を自宅で過ごしたいと思いますか」と尋ねました。その結果、24.8%の人が「自宅で過ごしたいし、実現できると思う」と答える一方で、「自宅で過ごしたいが、実現は難しいと思う」は53%もいました。合わせると約8割ですから、多くの人が自宅で亡くなることを望んでいるけれども、実現は難しいこと考えていることが浮き彫りになりました。

ぴんころ地蔵(出典:長野県・のざわ商店街振興組合)

データ出所:千葉県「終末期を自宅で過ごすことについて(平成25年)」
図表作成:コトダマの里

 厚生省の調べでは「自宅で最期まで療養することが実現困難な理由」として「介護してくれる家族に負担がかる」をあげた人が圧倒的に多く8割に上りました。

図表出所:内閣府『平成24年版高齢社会白書』

図表出所:内閣府『平成24年版高齢社会白書』 

 実情、大部分の方が病院の一般病室で最期を迎えています。次の数字は平成21年度の厚生労働省の「死亡の場所別にみた死亡数・構成割合の年次推移」からの抜粋です。昭和26年当時は自宅で亡くなる方が82.5%と高く病院では亡くなる方は9.2%にしかすぎませんが、平成21年の数字は逆転しています。病院が78.4%と8割近く、自宅は12.4%しかありませんでした。

【厚生労働省:「死亡の場所別にみた死亡数・構成割合の年次推移(割合)」よりの抜粋】
年次 病院 診療所 介護老人
保健施設
助産所 老人
ホーム
自宅 その他
昭和26年 9.1 2.6 0.0 82.5 5.9
平成21年 78.4 2.4 1.1 0.0 3.2 12.4 2.4


 終末期を迎える場所も自宅、老人ホーム、ホスピス、病院などいろいろありますが、ここでは自宅の在宅ケアとホスピスについてお話します。

在宅ケア:

 さきほどの厚生労働省の調査結果にありましたが、多くの人が自宅での看取りを望んでいながら実現が考えている原因は、在宅介護は介護してくれる家族に負担がかることです。

 終末期に病気なって在宅ケアを受けるには、受け入れる家族の体制が整っていないと出来ません。また介護と違って、在宅ケアの医療体制は地域によって差が大きく、本人や家族が望んだとしても物理的に難しいこともあります。在宅ケアを希望する場合は、通常は主治医に相談して紹介してもらうケースが多いようです。

ホスピス:

 ホスピスは治る見込みのない末期がんなどの患者に対して緩和治療や終末期医療(ターミナルケア)を行う施設です。苦痛や死の恐怖を和らげ、尊厳を保ちながら最期を迎えるケアが中心です。抗がん剤などの強い治療は行わずに、モルヒネなどの麻薬を使用して痛みをコントールします。専門のホスピス施設の意外にも、緩和ケア病棟をもっている病院もあります。またホスピスのターミナルケア―を自宅で受ける在宅ホスピスもあります。

 在宅ケア、ホスピスは次のサイトで検索が出来ます。

在宅死の死亡確認は要注意?!

 「僕が死んでも、救急車は呼んではいけないよ」

 在宅で終末期医療を受けていた流通ジャーナリストの金子哲雄さんは、奥さんにこう口酸っぱく言っていたようです。

 在宅死の場合、自宅で死亡確認をしてくるお医者さんが必要です。金子さんも在宅ケアの先生にお願していました。ご自宅で亡くなって、救急車を呼んでしまうと、運ばれた病院で不審死扱いされてしまうのです。「異状死」として警察が介入するので面倒なことになります。

 金子さんは在宅の終末医療について次のように最後の著書の中で述べられています。

 「在宅で終末医療を受け、妻とふたり、自宅で過ごし、妻に看取られて死を迎える」
 それが、自分にとっては最大限、幸せを享受できる最期の迎え方ではないかと今、確信している。病室にいると、やはりドクターや看護師の皆さまなど、自分と関わる方が身近にいればいるほど、気をつかうことも増えるだろう。
 その点、妻には迷惑はかけるものの、好きな時に置き、好きなものを食べ、何よりも自分のペースで仕事もできる。このように原稿を書くことができるのも、在宅終末医療のメリットだ。

 奥様の稚子さんは同書のあとがきで“在宅死を希望する患者と併走する家族”について、次のように述べています。長く抜粋させていただきます。

 確かに、死を向かう人を支えることは、周囲の負担が大きいものです。体力というより、精神的に耐えられない人もきっと多いことでしょう。わたしも父を看取った経験がなければ、とても金子を支えることができなかったかもしれません。
 でも、「こうしてあげたい」という自分の感情はさておいて、「こうしたいという」相手の思いをしっかり受け止め、それを叶えさせてもらう経験が、何ものにも代え難いものを残してくれることは確かだと思います。
 金子はいつも相手のことを考えている人でした。自分のしたいことをするより、相手の喜ぶ顔を見ることのほうに、幸せを感じる人でした。
 でも、最後の1か月強は、金子は自分のしたいことを明確に伝えてきました。いつもだったら、相手のことを思い、飲み込んだ希望だったと思います。
 だから最後の最後に、金子が自分だけのために「こうしたい」という希望を、わたしはすべてを叶えたいと思いました。そのことで傷つく人がいることは分かっていましたが、怒られても恨まれても実現しようと覚悟を決めました。<…中略…>結果、周囲の方々にも。自分の思いを押さえ込むことを強要することにもなってしまいました。
 在宅死を希望する患者と併走する家族には、このようなある種の覚悟が必要になる場合があることも、書き添えておきたいと思います。

 

【書き方サンプル】

□(例)終末医療に関する意思表示。。。
重篤な病名の告知:病名を告知して欲しい
余命の告知:余命を告知して欲しい
最期を迎える場所:自宅を希望しますが、病気等で症状が重い場合は病院に入れてください
延命治療につて:回復の見込みがなければ、延命措置はしなくてよいです。苦痛を和らげる措置だけしてください。
献体・臓器提供:心肺停止後の臓器提供を希望します。臓器提供の意思表示は健康保健証に記入しています。健康保険証は財布のなかに入っています。
【備考】リヴィングウィルを作成しています。寝室のタンスの2番目の引き出しの赤色の箱に入っています。

[記入日 ○○年○月○日]

健康管理・医療関連の情報リスト

 エンディングノートに医療情報について書くときに、普段の健康情報リストを一緒に作ってしまうのがおススメデス。もしものとき、たとえ救急車を呼べたとしても、朦朧として、うまく伝えられないかもしれません。かかりつけの病院、現在の病気や飲んでいる薬など、普段の健康情報があると、適切な医療処置に役立ちます。

【医療関連の情報の一例】

  • 健康保険証および介護保険被保険者証の種類、記号、番号
  • かかりつけの病院名、担当の医師の名前、連絡先(住所、電話番号等)
  • 持病や体質、拒否反応など
  • ふだん飲んでいる薬、お薬手帳の保管場所
  • これまでかかったことのある病気や手術などの診療の記録「既往歴」
  • 入院や手術で請求が出来る保険  …その他

 

【書き方サンプル】

□(例)わたしの健康情報リスト。。。
生年月日:昭和28年8月20日
血液型:B型
現在かかっている病気:特になし
  • かかりつけの病院:
  • 整形外科○○病院○○先生
     (連絡先)住所 新宿区○○1-2-4 電話 03(XXXX)XXXXX
  • 内科○○病院○○先生
     (連絡先)住所 新宿区○○1-2-4 電話 03(XXXX)XXXXX
  • ○○歯科医院
     (連絡先)住所 新宿区○○1-2-4 電話 03(XXXX)XXXXX
体質・持病:アルコールアレルギー、花粉症
出産経験:あり 昭和55年4月10日 帝王切開で出産
常用薬:フォルテ 桂枝茯苓丸 アレグラ
  • これまでかかった病気やケガ、手術(既往歴):
  • (1)平成5年に虫垂炎、投薬療法をうける ○○病院に通院(病院連絡先)
  • (2)昭和60年に交通事故で肋骨にひび、手術なし ○○病院に通院(病院連絡先)
病気やケガで給付金が出る保険:保険会社名○○ 種別○○ 証券番号XXXXX 契約者 本人
* 証券は寝室のタンスの2番目の引き出しの赤色の箱に入っています。
【備考】カルシウムのサプリメントを飲んでいます。

[記入日 ○○年○月○日]

 
さて今回はいかがでしたでしょうか。次回は遺産整理と、財産一覧のリスト作成についてご紹介します。お楽しみに。

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