NHKドラマ『キルトの家』

NHKドラマ『キルトの家』

【新・仕事の周辺】山田太一(脚本家、小説家) 魂のはなし

 二年ほど前、ある日、吉野さんの詩句がむくむくとこみ上げたことがあった。

 老人の多いドラマを書こうとしていた。取材でいくつかの老人ホームを歩いた。

 入居者の症状が重くて、息詰まるくらい静かなホームがあったり、カラオケ大会、絵てがみ、コーラス、ダンスまで用意されているホームもあり、そのどちらのあり方も現実に老人を引き受けてみて、とりあえず他の方法はないだろうという切実さに満ちていたから、私になにかをいう資格などないのだけれど、この世界の奥行きは、ちょっと途方にくれるくらいまだまだ奥が深いのではないかと思った。

 ……(中略)……

 ホームの平穏は、スタッフの努力と共に老人たちの諦(あきら)めと抑制で維持されていると感じた。コーラス一つとっても立ち入ればいろいろあるにちがいない。カラオケだって。

 〈日々を慰安が吹き荒れる(略)さみしい心の人が枯れる〉(「日々を慰安が」)という吉野さんの詩を思い出した。それから次々と甦(よみがえ)り、ドラマでは次の「burst」の一節を引用したいと申し上げた。快諾して下さった。

 〈魂のはなしをしましょう/魂のはなしを!/なんという長い間/ぼくらは 魂のはなしをしなかったんだろう--〉

 ホームには、歳月をかけて厚くつもった魂がぎっしりあって、そのほとんどが口にされていないという思いがあとを引いているのだった。

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photo credit: Chris_Parfitt via photopin cc

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 人間が他者(人間、動物など)に「心的状態」(欲求、信念、感情など)を帰属させて他者の行動を理解しようとする知的能力のことを「心の理論(Theory of Mind)」と呼ぶ。

 例えば、ある人が水の入ったコップに手を伸ばしているとき、われわれはその現象を見て「ある人の手がコップに近づいている」というような理解の仕方はしない。ふつうは「ある人がコップの水を飲もうとしている」というような理解をする。

 このとき、われわれは目の前の人の「心的状態」を現象の解釈の手がかりにしている。つまりその人は「水が飲みたい」という「欲求」、「コップに水が入っている」という「信念」をもっていて、“それゆえ”「コップの水を飲もうとしている」という現象が生じているのだな、と理解する。

 心の理論が用いられる対象は人間とは限らない。例えば、「このニャンコはエサが欲しくてすり寄ってきたな」とか「このゴキブリはあの床に落ちたパンくずを狙っているな」とかというぐあいに人間以外の対象の行動を予測したり解釈したりするさいにも用いられる。

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わたしはサイコパスかもしれない、と思うとき

photo credit: Luminis Kanto via photopin cc

 
 最近思うのは、ロボットが人間に近づくよりは、人間がロボットに近づく方が早いかもしれない、ということである。

 あるいは、「心」とか「魂」とかといった観念は人間にとってすでに“ファンタジー”であって、「脳」だけが“リアル”なものになりつつあるのかもしれない。

 例えば、何か想像を絶する理解し難い人間行動を見て、「ああ、これはたぶん脳機能の障害が原因だな」とみなして、後はすぐさま「医療管理体制の不備」とか「社会的リスク・マネージメントの確立」というたぐいの議論に関心が移行したりする。

 こういう議論に比べると、例えば“命の教育”といったスローガンはとても“ファンタジー”な響きがある。

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BLADE RUNNER

“I’ve seen things you people wouldn’t believe.
Attack ships on fire off the shoulder of Orion.
I watched c-beams glitter in the dark near the Tannhauser Gate.
All those moments will be lost in time, like tears in rain.
Time to die.”

 
 わたしがロボットに関心があるのは、(タマシイ)に関心があるからである。と言うと、「ロボットに魂があるのか」という問いがたぶん出てくるだろう。

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Terminator(wall.alphacoders.com)

Terminator(wall.alphacoders.com)

「人工知能は人類史最悪の脅威」―ホーキング博士

 イギリスの物理学者、スティーブン・ホーキング博士が英インデペンデント紙に語ったところによると、人工知能は病気や戦争、貧困の根絶に貢献する可能性がありながらも、人類史上最悪の脅威になりうるとのこと。

 人間の役に立つと見せかけた人工知能や自動運転の乗り物たちが、いつか人類の終わりを招くかもしれないと述べ、ロボットの開発に警鐘を鳴らしています!

 ……(中略)……

 博士は、「アービング・グッド(イギリスの数学者)は、1965年には人間の脳を超える知能が繰り返しその知能を改良して進化するようになると気づいていた」と述べ、専門家らはこうした事態に用意が出来ておらず、「人類にとって最良にも最悪にもなり得る事態に直面しながら、関連する研究が少ない」との懸念を表明しています。

 ロボット(コンピュータ)が人間と日常生活の中でコミュニケーションできる程度に「知能」をいずれ持つであろうことは、わたしにとっては想像に難しい未来ではない。

 そのさい、その「知能」――「思考」や「感情」を含めて――が人間のそれと似たようものかどうかは、さしあたりは人間の都合による。あるいはそれが人間が理解し難い「思考」や「感情」だからと言って「低能」と決めつけることはできないだろう。うまく「付き合う」ためには、人間の側からの歩み寄りも必要だ。

 ただわたしはロボットの「知能」よりは「価値観」に関心がある。つまり、ロボットが知能的には人間と同等以上の存在になったとき、はたしてどんな「価値観」を持っているだろうか。

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Blade Runner(The Final Cut)(Amazon.com)

Blade Runner(The Final Cut)(Amazon.com)

 「我々のビジョンは“愛”を持ったロボットを作ること。感情を持った、心を持ったロボットを作りたい。」

 孫正義社長がこのように言うとき、これはロボット“の”“技術的条件”のように認識しているように思える。もしそうだとすると、それはやや的外れである。

 「心を持ったロボット」とは、言い換えれば「自我(わたし)」のあるロボットと言うことである。

 しかしロボット以前に、そもそも人間の「自我(わたし)」がそれほど定かなものではない

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Pepperと握手する孫正義社長(CNET Japan)

Pepperと握手する孫正義社長(CNET Japan)

鉄腕アトムも「心は持てない」–孫正義氏が夢見た“愛を知る”ロボット

 「今日は、もしかしたら100年後、200年後、300年後の人々が『あの日が歴史的な日だった』と記憶する日になるかもしれない。我々は人類史上初めて、ロボットに感情を与えることに挑戦する」――ソフトバンクグループ代表の孫正義氏は、ロボット事業への参入について、このように思いを語った。

 ……(中略)……

 ロボット開発に乗り出したきっかけについて孫氏は、「子どもの頃、胸を踊らせながら学校から慌てて見に帰ったのが鉄腕アトムのアニメ。空を飛んで百万馬力で悪者をやっつけるアトムだが、嬉しい、悲しいといった感情が分からず、涙を流せないという話があった。子どもなりにそれは可愛そうだなと思い、いつか自分たちが大人になった時に、ロボットがそういうことを理解できるようになればいいと漠然と考えていた」と思いを明かす。

 1949年に登場してから65年間、コンピュータは人々がロジカルに考えたり、情報を整理するための“左脳”の役割を担ってきたが、いずれは感情や創造性を持った“右脳”の役割も果たすようになると予想していたと孫氏は話す。「Pepperはあくまでもその第一歩だが、我々のビジョンは“愛”を持ったロボットを作ること。感情を持った、心を持ったロボットを作りたい。そのためには人の感情を理解するところから始めるべきだ」(孫氏)。

 
 ソフトバンクの孫正義社長が、例によって自信満々の笑顔で“Pepper”を紹介している映像を見て、「そうか、次に乗るべき“ビッグウェーブ”は『ロボット』なんだな」と思った人は多いだろう。少なくとも、安倍首相が老人ホームで介護ロボットを動かしてみせたりするよりずっと効果が高い。

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 「合格を待ちて逝きたる孫思い 泥にまみれし写真を洗う」。「ドキュメント 震災三十一文字」(NHK出版)にある宮城県石巻市の阿部敬子さんの歌である。阿部さんはあの3月11日午前、孫の花音(かのん)さんの中学校の卒業式に参列したという。

 津波で行方不明になった花音さんの志望高校合格を知ったのは4日後、遺体安置所となった学校の掲示でだった。花音さんの遺体は2週間後に見つかる。何十年かぶりに詠んだ歌に託すしかなかった阿部さんの思いである……

 奪われた時を共に刻み直し、人々を結びつける「希望」こそが求められる震災4年目である。きっと災害列島に暮らす運命を共にするすべての人に問われているはずのその「希望」のありかだ。

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photo credit: Eneas via photopin cc

photo credit: Eneas via photopin cc

 「私は彼が自動機械でないと信ずる」というのは、かくしてそのままでは、いまだいかなる意義ももってはいない。私の彼に対する態度は、魂に対する態度である。私は、彼には魂があるという意見をもっているのではない。

 

 先月末、男子大学生が交際相手の女子学生に自殺をそそのかした自殺教唆の容疑で逮捕され、その後検察側の勾留請求が東京地裁に却下され保釈されるという出来事があった。

 男子学生は交際相手の女子学生に無料通信アプリ「LINE(ライン)」を使って「お願いだから死んでくれ」「手首切るより飛び降りれば死ねるじゃん」などとメッセージを送信し、翌日未明に女子学生は自宅マンションの8階から飛び降りて死亡した。

 数日後、警視庁に男子学生が自殺に追い込んだという情報提供があり、同署がLINEの記録を調べたところ自殺をそそのかすメッセージが見つかったため男子学生を逮捕した。しかしマスコミの報道によると、女子学生は以前から自傷行為を繰り返し自分の手首の写真をTwitterに晒すなど精神的に不安定なところがあったようだ。こうした背景的文脈を考慮して保釈されることになったのだろう。

 以前に女子中学生の自殺について取り上げたときにも述べたが、LINEやTwitterといったSNS(ソーシャルネットワークサービス)がらみの事件は舞台装置がいかにも現代的で、かつSNSそのもので情報が拡散しやすいので大きく取り上げられ話題にされがちである。しかし事の本質は昔とさほど変わらない。つまり自殺の原因や背景は人間関係や社会的・経済的・精神的状況にあり、そのきっかけや道具がそのときどきによって違ってくるに過ぎない。

 しかしそうは言っても、今回の出来事で少し気になったことがある。

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20140222-1-1

 

 ソチオリンピックのフィギュアスケート女子シングルのフリープログラムでの浅田真央選手の演技について、“魂の舞”という表現をテレビで見かけた。

 なぜここで“魂”という言葉がふさわしいものとして出てくるのか。そのことについて考えてみた。

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Social Media(Forbes)

Social Media(Forbes)

SNS「終活」のススメ 投稿文・写真、死後どうする?

 総務省によると、70歳代の半数近くがインターネットを利用する。家族が死亡した場合、残された遺族はどんな手続きをすればいいのか。短文投稿サイトのツイッターは家族か遺産管理人からの要請に基づいてアカウントを削除する。その際、利用者の死亡証明書、申請者の身分証明書、申請者が故人の家族か遺産管理人であることを証明する署名付きの公証文を郵送またはファクスで提出する必要がある。

 第三者のなりすましを防ぐため、手続きはかなり煩雑だ。ツイッターも毎年の申請件数は非公開としているが、担当者は「件数はあまり多くないもようだ」としている。ほとんどそのまま放置されているのが実情だ。

 死亡した人のSNSが公開され続けるケースが多いのが現状だが、いまのところ、それが大きなトラブルに発展したという話はあまり聞かない。だが第三者がパスワードを不正入手し、本人になりすまして詐欺を働くなどの可能性もある。もしものときにデータをどうするか。家族に意向を伝えておくと同時に、パスワード管理もしっかりしておきたい。

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2011年の「今年の漢字」“絆”(出典:SankeiBiz)

2011年の「今年の漢字」“絆”
(出典:SankeiBiz)

飛び降り自殺の中3女子、「動画中継」していた? 大手マスコミが詳細を報じないのはなぜか

 滋賀県近江八幡市のマンション敷地内で2013年11月24日未明、中学3年生の女子生徒(14)が倒れているのが見つかり、搬送先の病院で死亡した。警察は自殺と見ている。インターネット上ではその直前にウエブサービス「FC2」で「飛び降りる様子」を動画配信していた少女と同一人物ではないか、と注目を集めている。

 このネット上の盛り上がりに反し、大手新聞各紙の記事はいずれも小さく内容も必要最低限にとどまっている。動画の女性と同一人物かどうかは現時点では分からないが、仮にそうだったとしてもマスコミは大きく扱えない理由がある。

 ……(中略)……

 実は、自殺報道については、過去に何度も過剰な報道による「連鎖自殺」が指摘されたこともあって、大手マスコミは「自主規制」のルールを設けている。

 ……(中略)……

 なお自殺報道を巡っては、WHO(世界保健機関)もメディア関係者に向けた手引きをまとめており、「自殺を、センセーショナルに扱わない」「自殺の報道を目立つところに掲載したり、過剰に、そして繰り返し報道しない」「自殺既遂や未遂に用いられた手段を詳しく伝えない」などと呼びかけている。

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ギネスにも認定された(日刊ゲンダイGendai.net 2013.10.16)

ギネスにも認定された
(日刊ゲンダイGendai.net 2013.10.16)

やなせたかし氏が「アンパンマン」で残した“遺産400億円”の行方

 人気漫画「アンパンマン」の著者、やなせたかし氏(享年94)が死去した。先の大戦で中国戦線に出征し、復員後、高知新聞や三越宣伝部に勤務。その後、フリーのイラストレーターになり、1973年に絵本の「あんぱんまん」を発表した。この作品が世間にじわじわと浸透し、88年に日本テレビでアニメ「それいけ!アンパンマン」として放映されて爆発的人気を博した。
「アンパンマン」の単行本は、シリーズとしてフレーベル館から発行。これまでに同社から400冊近い作品を出し、総発行部数は7800万部に上る。

……(中略)……

 大金を手にしたやなせ氏だが、私生活は地味だった。日本漫画家協会の会長を務め、新宿区片町にある自分の持ちビルに協会の事務局を間借りさせているが、家賃は取っていないといわれる。金持ちでありながら、生涯、贅沢(ぜいたく)はしなかった。

「問題は遺産の行方です。93年に奥さんに先立たれ、子供も親戚もいないそうです。関係者の間では、遺言で誰かを遺産の受取人に指名しているのか、それとも遺言を残さず遺産が国庫に入ることになるのかが話題になっています」(ある漫画家)

 自称・親戚が名乗りを上げてトラブルになるのではないか。

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photo by 85mm.ch

photo by 85mm.ch

山形県調査でわかった「引きこもりの半数は中高年」 もはや欠かせない“高齢化・長期化”の視点

 地域の民生委員が把握している「引きこもり」該当者のうち、半数近くの約45%は40歳以上の中高年だった――そんな衝撃的な実態を浮き彫りにするデータが9月24日、山形県の公表した『困難を有する若者に関するアンケート調査報告書』によって明らかになった。

 調査を行ったのは、県の若者支援・男女共同参画課。

 同課は、今年4月から5月にかけて、県内すべての民生・児童委員等2426人に対し、同県民生委員児童委員協議会を通じてアンケートを配布、回収する方法で実施した。

 ……(中略)……

 調査対象としたのは、<おおむね15歳から40歳まで>と<おおむね40歳以上>で、
<仕事や学校に行かず、かつ家庭以外の人との交流をほとんどせずに、6ヵ月以上続けて自宅にひきこもっている状態の方>
<仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流はないが、時々は買い物などで外出することもある方>
と、2010年の内閣府による定義に沿っている。

 調査結果によると、受け持ちの地域内に<困難を有する若者>が「いる」と答えた民生・児童委員は、県全体で43%の937人。該当者の総数は、1607人だった。

 出現率は0.14%。町村部のほうが市部に比べてやや高い。このデータが実態を反映しているものなのか、町村部の民生委員のほうがより詳しく家庭内を把握できているからなのか。いずれにしても、都市部より町村部のほうが「引きこもる率」が高いのは、全国的な傾向とも一致する。
 同じように該当者の性別についても、男性が64%。女性が20%。無回答16%で、男性が女性の3倍以上を占めた。

 そして、今回の調査で最も注目したいのは、該当者の年代だ。

 40代の389人、50代の233人、60代以上の95人を合わせると、計717人。実に該当者の半数近くの約45%が、40代以上の中高年だった。
 ちなみに、15歳から39歳の該当者は855人で、全体の約53%。無回答が35人で約2%だった。

 さらに、<ひきこもっている期間>が3年以上に及ぶ対象者は計1067人で、全体の3分の2の約67%。そのうち5年以上は817人で、約51%と半数を超えた。10年以上も526人と約33%に上るなど、<長期化が懸念される状況にある>と指摘している。

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到着ゲートで出迎えを受ける帰省客(出所:くまにちコム)

到着ゲートで出迎えを受ける帰省客
(出所:くまにちコム

「お盆玉」「恵方巻き」「甘酒」 冬の習慣が夏に登場する訳

 お盆を前に売れているものがある。ポチ袋だ。正月にお年玉を渡すように、お盆休みに孫や子、親戚の子どもたちにお小遣いを配る「お盆玉」が、少しずつ広がっている。先ごろは、大手スーパーやコンビニが夏の節分(8月6日)に向けて「夏の恵方巻」を展開。冬の習慣やイベントが装いを変えて夏にもお目見えし、新たな商機を伺っている。

 大手企業の夏のボーナスが前年比4.99%増となった今年、お盆玉を広げようと、売り場を拡充する店舗が増えている。池袋のロフトには、かき氷や海など、涼やかなポチ袋がずらりと並ぶ。先月の売り上げは、昨年に比べて10%以上増となった。もともと一部地域では、親が、お盆に田舎に帰省した子や孫に小遣いを渡す「お盆玉」の習慣があった。夏にポチ袋を購入するのも50~70代が多いという。

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金子哲雄さんの遺著『僕の死に方 エンディングダイアリー500日』(出所:ライフハッカー)

金子哲雄さんの遺著『僕の死に方 エンディングダイアリー500日』(出所:ライフハッカー)

金子哲雄さん 葬儀の費用を前もって夫人の口座に移していた

 41歳の若さで急逝した流通ジャーナリスト・金子哲雄さんは、23万部のベストセラー『僕の死に方 エンディングダイアリー500日』(小学館刊)で、こう記している。

〈「流通ジャーナリスト」として情報を発信してきた。自分の最期、葬儀も情報として発信したいと思った。賢い選択、賢い消費をすることが、人生を豊かにする。(中略)葬儀は人生の幕引きだ。これも含めて、人生なのだ。その最後の選択を間違えたくなかった〉

 金子さんは消費者のお得感を一番に考えてきた「コストカットのプロ」だったが、自分の葬儀に関してはコストを最優先する考えは取らなかった。常に考えていたのは、遺された人たちへの配慮だ。

〈最初に取りかかったのは遺産整理だ。遺産がたくさんあるわけではないが、こうしたものも、きちんと整理しておきたい。こういうことで、残してしまった人たちに嫌な思いをさせたくない〉

 故人を悼む気持ちは同じなのに、おカネで争ってしまう――現実でよく起きるそんな事態を避けるため、金子さんは細心の注意を払った。誰に遺産を相続させるかなど、死後、親族間で揉めるトラブルの芽を、生前に公正証書遺言を作成することですべて摘んだのである。

 また、死亡するとただちに預金口座は封鎖されてしまう。引き出すには、故人の戸籍謄本や法定相続人すべての印鑑証明などを揃えて銀行に提出しなければならず、最短でも1週間程度の時間を要する。祖父や夫といった、亡くなった縁者の預金を葬儀費用などに充てるつもりだった遺族が、口座を凍結されたことによって混乱に陥るケースは多いという。

 そのため、葬式の費用はすべて自分で出すと決めていた金子さんは、事前に葬儀などに掛かる費用を見積もって、喪主を務めることになる夫人の口座に移しておいた。

 金子さんは遺された妻のその後の生活についても思いを巡らせた。

〈この部屋から、片方の住人が消える。ひとり暮らしをするにはこの部屋は広すぎる。家賃負担も馬鹿にならない。(中略)今のうちに引っ越しできないか。ギリギリまでコストを下げる努力をしたい〉

 まさに流通ジャーナリストの真骨頂だった。

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生前贈与の契約書を作成する藤巻健史さん

生前贈与の契約書を作成する藤巻健史さん
(出所:日本経済新聞電子版)

相続争いどう防ぐ フジマキ家の儀式

 2人の息子を前に座らせ、父親はいつものように自ら作成した不動産贈与契約書を差し出した。2人は黙って署名となつ印をする。
 フジマキ・ジャパン社長の藤巻健史(62)が20年以上続ける資産分けの儀式。願いは一つだ。「いつまでも仲良く」
 「伝説のディーラー」として知られる藤巻が儀式を始めたきっかけは、妻の父親からの相続だった。1988年、バブル景気のただ中だったため、妻は高騰した土地の相続で多額の税負担を強いられた。手伝った藤巻も疲労困ぱいしたという。
 「こんな思いを息子たちにさせたくない」。痛感した藤巻が選んだのは生きているうちに少しずつ財産を贈与することだった。「平等に分け、2人が争っていないことを確かめられる」
 息子たちには贈与税の申告を任せている。「ちゃんと感謝の気持ちも持ってほしい」。儀式はこれからも続く。

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東京家裁の調停室

東京家裁の調停室(出所:日本経済新聞電子版)

相続争い、調停で 家族の絆を結び直す

 「兄の、あの言葉が許せなかった」
 東京家庭裁判所家事第5部「遺産分割部」。その調停室で弟は2人の調停委員に言葉を絞り出した。
 「喪服を取ってこなくちゃ」。父親が危篤に陥り、やっと顔を見せた兄は、父親の手を握ることもなく一瞥(いちべつ)して部屋を出た。「もう兄弟じゃない」。つきっきりで看病していた弟は怒りに震えた。父親の死後、連絡を絶ち遺産分割協議に応じなかったため調停を申し立てられた。

 遺産分割の調停申立件数は年々増加傾向にある。2011年度の新受件数は約1万2千件。調停に至らないものの、持ち込まれる問い合わせは17万件を超す。東京家裁では、裁判官5人と調停委員300人余りが調停にあたる。部全体では通常18の部屋で連日、午前・午後と調停に追われている。
 1件の調停は2人の調停委員と裁判官1人が担当する。調停委員は弁護士や税理士のほか一般人もいる。「1回の調停に2時間以上かかることもある」と高橋伸幸判事(43)。争いの当事者双方の言い分を個別に聞き、落としどころを探る。

 調停に至る前の段階で既に感情的な対立が激しくなっていることも多い。だが、調停は解決に向けた最後の場でもある。「血のつながりがあるからもつれることがある。凝り固まった感情をほぐしていく」(高橋判事)。
 「自分の思いを口にして、ようやく兄の気持ちに気づけた」。冒頭の兄弟は調停を終え、元の関係を取り戻した。希薄になる親戚づきあいや個人の権利意識の高まり。そのひずみに向き合い、諭し、絆を結び直す。調停委員らの奮闘は続く。

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坂本龍馬の墓(京都霊山護国神社)

坂本龍馬の墓(京都霊山護国神社)

お参りしたい歴史的有名人のお墓ランキング(男性編)

 墓マイラーという言葉も聞かれるようになった今日このごろ。歴史上有名な人物のお墓を目の前にすると歴史が身近に感じられることも。そんなお参りしたいお墓をマイナビニュース会員の男性441人にアンケートをしてみました。

Q.お参りしたい歴史的有名人のお墓は?
1位 坂本龍馬 京都霊山護国神社 18.1%
2位 織田信長 京都府上京区阿弥陀寺ほか 17.5%
3位 宮本武蔵 熊本県熊本市泰勝寺 12.5
4位 武田信玄 山梨県塩山市恵林寺 10.9%
5位 上杉謙信 和歌山県高野山奥の院 9.5% 

 ランクインしたのはすべて武士。生き方に感銘を受けて、という回答が多いのは男性ならでは。人気は幕末の龍馬、戦国の信長が二分。回答者が興味を持っている時代が顕著に表れました。

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