近代デジタルライブラリーとKindleアーカイブを比べる  

血税投じたデータにタダ乗り? アマゾンが国会図書館使って電子書籍販売

 ……(前略)……であれば、今回の件は全然問題は無いのだろうか? 確かに法律上問題はないとしても、事情を単純に言い換えれば、「国民の税金を使って国が電子化したデータをAmazonがそのまま流用し、売上があがっても日本に対する税金は一切払わない」という話なのである。

 読者としては安い本が買えれば嬉しいけれど、自分納税した税金の成果が外国に一方的に流れて自分の国に帰ってこない……といったところか。

 もっとも国の側も、手をこまねいているわけではない。内閣府では、国際課税ディスカッショングループが「国境を越えた役務(サービス)の提供に対する消費税」について検討をしており、これに関する国際課税が法案として成立すれば、このようなねじれた事象はある程度解消するはずだ。

Amazonの「Kindleアーカイブ」

 Amazonが10月末から、国立国会図書館の「近代デジタルライブラリー」の一部を「kindleアーカイブ」として1冊100円で販売するサービスを開始した。これからラインナップを順次拡大していく予定で、今年中に1000冊以上を配信する予定とのことである。

 「近代デジタルライブラリー」は、国立国会図書館の収蔵作品の電子化コンテンツで、誰でも無料で自由に閲覧・利用できるいわゆる「パブリックドメイン」のコンテンツとして公開されている。

 記事の主旨は、いくら商用利用可能なパブリックドメインのコンテンツであるからといって、日本で100億円以上の多額の税金が投入された結果できたものを米国にあって日本に税金を納めていないAmazonが(日本の事業者よりも有利なポジションで)商品化して利益を得るのは、法律上は適法だとしても問題はないのか(ゆえに法律上の対応が急がれる)、というものである。

 じつはこの記事の中には、一般論として議論に値するいくつかの論点(公共財のフリーライディングの問題、パブリックドメインの商用利用の問題、書籍のデジタル化の方法論の問題、消費税法の問題など)が含まれているのだが、それらが結局「日本に税金を納めていないAmazonが日本の税金を投入したコンテンツで大儲けするのはけしからん」という分かりやすい話に十把一絡げにまとめ込まれている。本当はもっと論点を絞って議論した方がよかったと思う。(そもそもそういう性格の記事ではないかもしれないが。)

 ところで「近代デジタルライブラリー」はインターネット上で無料で公開されていて、すでに利用したことがある人も多いと思うが、この機会なので「Kindleアーカイブ」と電子書籍の閲覧の具合(見た目や操作)を比較してみた。

 

『東海道五十三次』を近代デジタルライブラリーとKindleアーカイブで見てみる

 「近代デジタルライブラリー」は国立国会図書館のWEBサイトで利用できる。パソコン、スマホ、タブレットいずれからでも利用できるが、基本的にはパソコンの方が使いやすい。

 ここではタブレットのKindle fire HDから利用してみる。

近代デジタルライブラリー国立国会図書館

近代デジタルライブラリー国立国会図書館

 電子書籍は近代デジタルライブラリーのビューワーで閲覧できる。スマホやタブレットの場合はフルスクリーンモードにすると見やすい。

東海道五十三次(葛飾北斎、歴史画報社)(近代デジタルライブラリー)

東海道五十三次(葛飾北斎、歴史画報社)
(近代デジタルライブラリー)

 スマホやタブレットなどモバイル端末に最適化されているわけではないので操作が多少ぎこちないが、大きな不便はない。Wi-Fiで利用したが、表示が遅いということもない。

 ただ、フルスクリーンモードのとき操作ボタンが上部にオーバーレイ表示されるが、これが表示されたりされなかったりして少々使いづらい。オーバーレイ広告のように誤操作を招きやすい(ちなみにタップするときは左上端がよい)。要するに、スマホやタブレットでの使い勝手は現在のところイマイチである。

 同じものをAmazonの「Kindleアーカイブ」から購入してKindleタブレットで閲覧してみる。

東海道五十三次(葛飾北斎、歴史画報社)(Kindleアーカイブ)

東海道五十三次(葛飾北斎、歴史画報社)
(Kindleアーカイブ)

 Kindleアーカイブの方は電子書籍として閲覧しやすいように加工されてある。したがって閲覧時の操作性・スムーズさはこちらの方がよい。(ただし『東海道五十三次』(葛飾北斎、歴史画報社)はデータサイズが大きいので一般の単行本などに比べるとダウンロードも時間がかかるし、閲覧時の反応も鈍い。)

 ただし、コンテンツの検索、情報収集、再利用など閲覧以外のもっと広い(クリエイティブな)用途を考慮すると、パソコン上で近代デジタルライブラリーのWEBサイトを利用した方が便利である。というか、そもそもそうした用途を想定して作られていると思われる。

 それに対してKindleアーカイブの方は閲覧の手軽さ・快適さに矛先が向けられている。もちろんその前提にはKindleのプラットフォーム(アプリ、デバイス、サービス)がある。

 つまり、電子書籍として閲覧するという点に限って言えばKindleアーカイブの方が手軽で快適であることはたしかだが、その快適さのかなりの部分は「Kindle仕様で閲覧できる」ということで占められている。

 したがってその快適さの評価はまったく主観に依存する。つまり、無料で同じものが見れるのに100円払うのはバカバカしいかもしれないし、Kindleで見れるのであれば100円は安いかもしれない。ちなみに個人的には(Kindleユーザーなので)、葛飾北斎『東海道五十三次』100円は安いと思った。

 ユーザーから見ると、これは近代デジタルライブラリーを源泉にして新たに100円分の付加価値があるサービスが生み出されたにすぎない。そしてもちろん、他にも工夫次第で多様で豊富な付加価値を掘り出せるにちがいない。そしてそれは、Amazonが納税すべきか否かという議論とはまた別次元の事柄だと思われる。

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『コトダマ新聞』の主筆(代表)です。時流に流されずに死生観をめぐる文化論にまで掘り下げて考察したいと思います。

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