先日は10月末の日曜日ということで、各地でハロウィンのイベントがあったようだ。一昔前はハロウィンというと「何それ?」という人が多かったと思うが、案の定というか、今ではすっかり定着したようだ。

 ハロウィンは、もともと古代ケルト人の宗教的風習に由来するということだ。古代ケルトでは一年の終わりが10月31日、一年の始まりが11月1日で、この境目の時期にこの世とあの世が通じる門が開くと信じられていた。

 そして死者の霊が家族を訪れたりするが、同時に精霊や魔女がやってきていろいろ悪さをする。子どもたちが精霊や魔女に仮装して“Trick or treat”(ご馳走をくれないと悪戯するよ)と家々を回り歩くのはこれをまねているわけだ。(「ソウリング(souling)」という一種の死者供養の風習に由来するという説もある。)

 つまり、日本で言えばお盆と正月があわさったような行事ということになる。と思えば、自分には関係がないと思っている年輩の人も多少は親しみがわく(?)かもしれない。

 ところで欧米のハロウィン・パーティーで定番の余興ゲームと言えば、「ダック・アップル (Duck Apple) 」または「アップル・ボビング (Apple Bobbing) 」がある。大きめのたらいの水に浮かべたリンゴ、または紐で上からつるしたリンゴを手を使わずに口でくわえ取るゲームである。

 このダック・アップルは、古代ローマの果実・果樹・果樹園の女神ポーモーナを讃える祭祀に由来すると言われている。女神ポーモーナのシンボルはリンゴである。もともとリンゴは欧米では果実の代表格であり、愛と豊穣の象徴である。有名な『アーサー王物語』の舞台となったアヴァロン(Avalon)はケルト語でリンゴを意味し、伝説の豊穣の楽園(リンゴ園)だった。

 ということは、おそらく「ダック・アップル」は魂を受け取る、あるいは愛を受け取るという観念(儀式)とも密接につながっていたのではないだろうか。

 ここで何となく思い出したのは、谷川俊太郎の「魂のいちばんおいしいところ」という有名な詩である。中学校の合唱曲にもなっているので知っている人は多いと思う。そしてリンゴの蜜の部分を思い浮かべて、たしかに魂はおいしそうだと思った人はわたしだけではないはずだ。

谷川俊太郎「魂のいちばんおいしいところ」

神様が大地と水と太陽をくれた
大地と水と太陽がりんごの木をくれた
りんごの木が真っ赤なりんごの実をくれた
そのりんごをあなたが私にくれた
やわらかいふたつのてのひらに包んで
まるで世界の始まりのような
朝の光と一緒に
 
何一つ言葉はなくとも
あなたは私に今日をくれた
失われることのない時をくれた
りんごを実らせた人々の微笑みと歌をくれた
もしかすると悲しみも
私たちの上に広がる青空にひそむ
あのあてどないものに逆らって
そうしてあなたは自分でも気づかずに
あなたの魂のいちばんおいしいところを
私にくれた
コトダマ・コテージ|コトダマの里

 

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『コトダマ新聞』の主筆(代表)です。時流に流されずに死生観をめぐる文化論にまで掘り下げて考察したいと思います。

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