Malala Yousafzai addresses United Nations Youth Assembly

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マララさん タリバン銃撃乗り越え国連演説全文「1人の子ども、1人の教師、1冊の本、1本のペンでも世界を変えられる」

 親愛なる少年少女のみなさん、私たちは暗闇のなかにいると、光の大切さに気づきます。私たちは沈黙させられると、声を上げることの大切さに気づきます。同じように、私たちがパキスタン北部のスワートにいて、銃を目にしたとき、ペンと本の大切さに気づきました。

 「ペンは剣よりも強し」ということわざがあります。これは真実です。過激派は本とペンを恐れます。教育の力が彼らを恐れさせます。彼らは女性を恐れています。女性の声の力が彼らを恐れさせるのです。

 2014年のノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんが昨年7月にニューヨークの国連本部で行った演説を改めて読んでみて、気づかされたことがあった。

 「ペンは剣よりも強し」という言葉は、一般には「言論や思想が人に与える影響は武力よりも強い」という意味で理解されていると思う。しかしこうした理解はこの言葉の本来の意味を閑却している、ということを指摘したのは筒井康隆氏の『アホの壁』である。

 この言葉はもともと、イギリスの政治家であり劇作家であるエドワード・ブルワー=リットンの戯曲『リシュリュー 』の中でリシュリュー枢機卿が口にする言葉“The pen is mightier than the sword”に由来する。

 リシュリュー(1585-1642)はカトリック教会の聖職者であると同時にフランス王国の政治家であり、ルイ13世のもとでは宰相として絶対王政の確立に尽力した。そしてその過程で敵対者を容赦なく弾圧したと言われている。

 そうした史実を踏まえ、リットンの戯曲の中でリシュリューはこの言葉を「国家に反旗を翻し、反乱を企む輩に対して、いつでも逮捕状や死刑執行命令にペンでサインできる」という脅しの意味で、すなわち“Beneath the rule of men entire great, the pen is mightier than the sword.”(全き偉大な人間の支配の下では、ペンは剣よりも強し)という意味で使っている。

 つまり、「ペンは剣よりも強し」という言葉はもともとは「体制側の権力(法制度やイデオロギー言説)は反体制側の物理的抵抗力よりも強い」という意味あいだったわけである。そしてもしかすると、マララさんの国連演説もテロリストにはこのような意味で理解されているかもしれない。

 ただここでわたしが気がついたのは、「言論や思想が人に与える影響力は武力よりも強い」という現在の一般に流布した理解は、じつは暗黙の内にもともとのリシュリュー的意味あいをそのまま含意しているのではないか、ということである。

 つまりそこでは、「言論や思想」(ペン)は「武力」(剣)と同じ「人間を支配(コントロール)する力」という次元に並べられて、その次元で比較して「言論や思想」(ペン)は「武力」(剣)よりも「人間を支配する力」が大きい、という意味が含意されている。簡単に言えば、大勢の人を支配するには「言論や思想」の方が「武力」よりも合理的(効率的)である、ということである。

 そしてこのことは「言論や思想」または「武力」の主体がそのときどきの「体制側」であろうと「反体制側」であろうと変わりはない。「体制側」と「反体制側」の支配をめぐる闘争があるだけだ。そして勝った方が「正義」を名乗るだけである。

 しかし、マララさんが言っている「ペンと本」はそうではない。むしろまったく正反対である。つまりそれは、「支配する力」――それが「言論や思想」によるものであれ「武力」によるものであれ――に対して「支配されない力」を与えものである。

 つまり、「ペンと本」とは、他人の支配下で考えたり、主張したり、行動したりするのではなく自分自身で考えたり、主張したり、行動したりするための力、すなわち「支配されない力」を与えるものなのである。そしてそうした「支配されない力」を自分自身に与える「エンパワーメント」の次元で比較したときに「ペンと本」は「剣」より強いのである。マララさんがテロリストに理解してもらいたかったのはそのことなのだ。

 マララさんの国連の演説内容を読んで、そして演説をしている姿を見て、それに気づいた。勘違いしていた。

 

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『コトダマ新聞』の主筆(代表)です。時流に流されずに死生観をめぐる文化論にまで掘り下げて考察したいと思います。

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