お盆スペシャル! 心暖まる和風もののけファンタジー漫画セレクション

 
 コトダマの里のAzuです。お盆休みの期間中で、帰省して故郷で過ごされている方も多いかと存じます。

 さて、先日のRyuさんの記事で、「“魂の抜けた”人間どうしで話をしていても“生き生きと”話をしている感じがしないということもあるだろうし、それよりは“霊魂”と話をしていたほうがまだ“生き生きと”話をしている感じがするということも真面目にありうる」とありましたが、これにはわたしも大いに賛同いたします。実際、隣にいる“魂の抜けた”Takeさんと話をしていると生きている感じがしなくなります。

 現代人にはそうした会話の能力はほとんど失われていると思いますが、八百万の神々が存在したいにしえの日本では、おそらくそうした生き生きとした会話が日常的に行われていたであろうと思いを馳せます。

日本古来の民俗的霊魂観を反映したファンタジー

 いにしえの人びとは、森羅万象あらゆるモノ・コトに神または精霊が宿ると考えていました。空に海に、山に川に、樹や花に、狐や狸に神様や精霊がいました。

 それらは人間たちの日常生活と共にあり、生活の糧と恵みを与えてくれると同時に、不運や厄災をもたらすものでもありました。そしてときには、人間に取り憑いて苦しめたり、死に至らしめたりするもののけ(物怪)あやかし(妖怪)として現れることもありました。

 水木しげるさんの『ゲゲゲの鬼太郎』は、こうした妖怪たちを鬼太郎が懲らしめ退治する物語でした。『ゲゲゲの鬼太郎』は妖怪漫画の原型となり、以後それを様々に変形・拡張した妖怪漫画が数多く生み出されました。最近では、『ゲゲゲの鬼太郎』をわりとストレートに継承したものとして『地獄先生ぬ~べ~』をあげることができると思います。

 ということで、前回の「シニアにもおすすめできる? 初心者向けBL(ボーイズラブ)名作選」に引き続き、今回はお盆スペシャル(?)として、「和風もののけファンタジー漫画セレクション」をお届けしたいと思います。

 ここで言う「和風もののけファンタジー」とは、妖怪・幽霊漫画一般のことではなく、日本古来の民俗的霊魂(精霊・神霊)観を反映したファンタジーという意味です。

 そしてそのなかでも、もののけと人間の“魂のつながり”をモチーフとした、老若男女を問わず心が暖まるハートフルでスピリチュアルなファンタジーに限定したいと思います。したがって、アクション(『犬夜叉』『ぬらりひょんの孫』など)、ホラー(『うしろの百太郎』『妖怪ハンター』『コックリさんが通る』など)、ゾンビ(『アイアムアヒーロー』『少女ゾンビ』など)などのジャンルは除きます。

 また、紹介する漫画の中にはアニメ化や実写映画化されているのもありますが、ここではあくまで漫画作品として取り上げたいと思います。

 ということで、以下で早速各作品を紹介していきましょう。

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紹介する漫画作品
  • 『夏目友人帳』緑川ゆき
  • 『蟲師』漆原友紀
  • 『もっけ』熊倉隆敏
  • 『ぎんぎつね』落合さより
  • 『百鬼夜行抄』今市子
  • 『雨柳堂夢咄』波津彬子
  • 『町でうわさの天狗の子』岩本ナオ
 

もののけの魂返し~『夏目友人帳』緑川ゆき

概要・あらすじ

 主人公の男子高校生・夏目貴志は、小さな子どもの頃から妖(もののけ)が見える高校生の男の子です。
 幼い頃に両親を亡くしましたが、妖が見えることで周囲から薄気味悪がられ、親戚をたらい回しにされます。最近になってようやく父方の遠縁である藤原夫妻に暖かく迎え入れられますが、妖たちが次から次へとやってきて困り果てます。
 そんなあるとき、招き猫を依代として長い間封印されていた斑(ニャンコ先生)と呼ばれる妖の結界を偶然解いてしまいます。そして斑は、夏目が妖たちに追われるのは祖母のレイコの遺品である「友人帳」が原因であると教えます。
 かつてその土地に住んでいた祖母は、夏目と同じように妖が見えることで周囲から孤立しがちでした。そして彼女は、孤独で寂しい日々を紛らわすために、強い妖力で妖たちから名を奪い、それを友人帳に封印することで、自分に服従させていたのでした。
 祖母が亡くなってから夏目がその友人帳の持ち主になったので、妖たちが「名前を返せ」と次々に襲いかかってきます。夏目は祖母の形見である友人帳を大切に思いながらも、妖たちを自由の身にしてやるべく、自称用心棒のニャンコ先生と一緒に妖たちに名前を返して回ることにしたのでした――

 
 改めて説明するまでもなく、『夏目友人帳』は近年のもののけファンタジーの最高傑作の一つです。あるいは、もののけファンタジーであるだけでなく、言霊(コトダマ)ファンタジーであると言ってもよいでしょう。

 古来、名前は魂そのものであり、親が子どもに名前を付けるのは、親の想いを子どもの魂として吹き込むことでした。また名前を呼ぶことは魂を喚ぶことでもあり、それゆえときには名前の持ち主を呪うことも意味しました。そこから実名を隠しておこうとする「諱(いみな)」(*)の慣わしも生まれました。

 ちなみに、この辺の事情は夢枕獏・岡野玲子の『陰陽師』でも描かれています。

 夏目の祖母は、強大な妖力でもののけたちから名前を奪い、魂を捕らえることで、もののけたちを思うがままに従わせました。孤独で寂しかったレイコにとって、それが友だちを作る唯一の方法でした。(そういえば『千と千尋の神隠し』の「ゆばーば」も名前を奪うことで他者を操ろうとしていました。)

 それに対し祖母と同じように他者との関わりを避けてきた夏目がとった方法は、外見は恐ろしいもののけたちの本当は純粋な願いや想いを理解し、その上で名前を戻し、魂を返してやることでした。そしてそれにより、自分も少しずつ魂を取り戻し、もののけや人間たちと本当の友だちとして付き合うことができるようになっていくのです。

 このように、『夏目友人帳』のテーマはズバリ、“魂のつながり”。もののけと自分、他人と自分、祖母と自分。とくに、祖母のレイコと夏目のあいだの生死を超えた“魂のつながり”は、コトダマの里としてももっとも注目したいポイントです。

 つまり、「友人帳」には祖母の“友だち”の名前が綴られていて、それこそが祖母の“魂”そのものだったわけです。ですから夏目は、祖母の“魂”を受け継いで、祖母の本当の願いを祖母に代わって成し遂げようとするのです。(これはわたしの解釈ですが。)

 どう見ても、これは「コトダマ・メッセージ」に他なりません

 作者の緑川さんは、こうしたテーマを決して押しつけがましくないさらりとしたストーリー展開と、美少年のナチュラルヘアのような繊細な筆致で描き出し、腐女子のみならず老若男女の魂の琴線にふれる美しい見事な作品に仕上げました。

 一話一話読み進めるたびに、号泣してスッキリさわやか涙活デトックスできること受け合いです。

 ちなみに、先月公開されたスタジオジブリ制作・米林宏昌監督のアニメ映画『思い出のマーニー』も、祖母と孫娘の“魂のつながり”がモチーフですよね。もしかして、いま祖母と孫のカップルがトレンドなのかもしれません(笑) (じつはこのあいだ映画館で観てきたので、機会があれば改めて記事で取り上げたいと思います。)

思い出のマーニ―

祖母と孫の“魂のつながり”がトレンド?

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