photo credit: vastateparksstaff via photopin cc

photo credit: vastateparksstaff via photopin cc

NHK長谷川経営委員の「女性は家で育児、男性は外で仕事」論に待った!(乙武洋匡)

 ……(前略)……

 NHK経営委員・長谷川三千子氏(埼玉大学名誉教授)が産経新聞に寄せたコラムには驚かされた。彼女の主張を要約すると、女性は家で子を産み育て、男性は外で働いて妻子を養うのが合理的であり、日本の少子化問題を解決するためには、「男女雇用機会均等法」以来進められてきた女性も働くことのできる社会を「誤りを反省して方向を転ずべき」だとしている。たしかにこの国が抱える少子化問題はかなり深刻な状態にあるが、出生率を上げていくためには、本当に長谷川氏が主張するように「女性が子育てをし、男性が外で働く」という時代に時計の針を戻すしかないのだろうか。

 ……(前略)……

 出生率を上げるために、まだまだ社会的に努力すべき余地は残されている。そうした側面に触れることなく、性別によって役割を固定し、人権を限定することを求めるのはあまりに愚かであると言わざるをえない。これからの私たちが目指すべきは、性別や障害の有無など、生まれついた環境や境遇によって生き方が定められることのない、成熟した社会ではないだろうか。

 これはたまたま目に付いた記事だったが一読して唖然とした。日本のオピニオン・リーダーと呼びうるポジションにいる人たちのあいだで、まだこんな議論がされている。

 ある意味では少子化問題の解決は「簡単」である。日本が北朝鮮のような独裁国家になって「女性が子育てをし、男性が外で働く」ように全国民に強制すればよい。ついでに、子どもを産めるのに産まない家庭は「粛正」すればよい。

 最初バカバカしくてすぐ別の記事を読もうとしたが、ふと思いついた。これはもしかしていわゆる「釣り」なのか?

 最近、妙に扇動的・扇情的なタイトルの記事が増えている。とくに「○○まとめ」系の記事である。これらはたいていアフィリエイト広告が目的なので、ともかく記事に引っ張ってこなければならない。そしてどこから引っ張ってくるかというと、主にツイッターである。それで、短い文言で延髄反射的にクリックさせるようなタイトルになる。

 ネットで調べ物をしようとすると、そういう記事ばかりが検索で出てきて辟易する。が、逆に言うと、読者が多いということになるので、たぶんみんなスマホなどで暇つぶしに読んでるのだろう。

 乙武氏はそんなのに付き合っている暇はないと思うのだが、記事に書いていることはあまりにフツーのことなので、若干訝しい気がする。

 ちなみに乙武氏は以下のように述べている。

 出生率の低下に危機感を覚えたこれらの国は、まずは女性が働き、仕事によって自己実現を図ることのできる社会を肯定するところからスタートした。そして、託児保育施設の拡充、給付金や税制上の優遇、産休後の地位を保証するキャリア制度など、女性が仕事と育児を両立できる社会を再構築してきたのだ。もちろん、育児を女性だけに押しつけることもない。男性も育児に参加できるよう、社会全体として長時間労働をしない・させない文化が根づいている。こうして海外を参考にしてみると、ワークライフバランスに注意が払われ、仕事も育児も両立することのできる社会において出生率が上がっていることを確認できる。

 言っていることはまともだし、そもそも以前から政府の方針である(政権によって多少の温度差はあるが)。ただし、これは基本的に「男女共同参画」や「子どもを生み育てる権利」の問題で、「少子化問題」として世間一般が思い浮かべる「問題」とは次元が違う。

 つまりちょっとぐらい出生率が上がったからと言って、少子高齢化によって日本が直面する諸々の問題(社会保障、経済力の衰退、産業の空洞化など)の根本的解決にはならない。逆にそうした問題の解決になるレベルに出生率を上げるためには上述のような“小手先の”施策では無理である。(これについてはすでに以前述べた。)

 本当に問題にすべきことから目を背けて、いまだにこうした「論争」が繰り広げられているのは、もしかしてこの種の「論争」――実態は“フィッシング・レジャー産業”――で多少「経済を回す」ことがどこかで期待されているのかもしれない。日本のオピニオン界が“釣り堀”になりつつあるとしたら、この釣り堀の経営者は誰なのか少し気になったのでつぶやいてみた次第である。

 

スポンサーリンク

 

LINEで送る
Pocket

The following two tabs change content below.
『コトダマ新聞』の主筆(代表)です。時流に流されずに死生観をめぐる文化論にまで掘り下げて考察したいと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。


*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)