電子書籍とは何か(1)

「電子書籍」を読んだことがありますか

一向に増えない利用者と利用希望者―定期調査「電子書籍」(9)

 このレポートは、インターネットコムと goo リサーチが携帯電話やインターネットを活用したアンケート調査を定期的に行い、その結果を発表するものである。今回は「電子書籍」について調査した第9回である。

 今回も最初に「電子書籍/雑誌を読んだことがありますか」と尋ねてみた。「はい」は34.3%(前回34.8%)、「いいえ」は65.7%(同65.2%)で、状況に変化はない。また、この「いいえ」と答えた電子書籍の未経験者714人に読みたいかどうか質問したところ、「はい」は31.1%(同33.0%)、「いいえ」は68.9%(同67.0%)で、電子書籍/雑誌に対する関心が高まらないどころか、利用を希望しない人の割合が増え続けている。

 こんにちは。コトダマの里の”リサーチ・マネージャー”Takeです。
 全然関係ありませんが、世間では「リサーチ」というと「探偵業」を思い浮かべる人も多いようですが、ここでは「調査研究部門」の意味です。コトダマの里は探偵業務はしていませんので、念のため。

 ところで、インターネットコムとgooリサーチは2年ほど前から全国のネット利用者約1000名を対象に電子書籍に関するアンケート調査を定期的に行っています。さきごろ9回目の結果が公表されましたが、その結果を一言で言うと、「電子書籍に対する関心は依然として低調」ということになります。

  • 調査対象は全国10代~60代以上のインターネット ユーザー1,087人。男女比は男性53.7%、女性46.3%。年代比は10代13.8%、20代15.5%、30代21.8%、40代17.2%、50代19.6%、60代以上12.1%。

 図1、2は同調査の過去の結果を時系列でまとめたものです。
 図1は調査対象者全員に対する「電子書籍/雑誌を読んだことがありますか」という質問に「はい」と答えた人(電子書籍利用経験者)の比率です。図2はそれに「いいえ」と答えた未経験者に「電子書籍を読みたいか」と尋ねて「はい」と答えた人(電子書籍利用意向者)の比率です。

電子書籍の利用経験

電子書籍の利用経験

電子書籍の利用意向(未経験者)

電子書籍の利用意向(未経験者)

 図1、2にはさらに、期間中のトレンドを見るためにデータの「近似曲線」を追加しています。これを見ていると明らかに利用経験も利用意向もダウン・トレンドにあることが分かります。

 「……終わった_| ̄|○」Ryuさんのため息が聞こえてきそうです。

 しかしわたしはこの調査結果は疑問です。というか、「電子書籍」に関するアンケート調査そのものが怪しいと思います。というのも、「電子書籍」ってそもそもナニ?と改めて思ったからです。

 「オマエは電子書籍を商売道具にしておいて何言うとんねん!」というツッコミはあるかと思います。(全然関係ないですが、ATOKで「なにいうとんねん」と入力すると「関西モードで変換します」と表示されるんですね。今気がつきました。)

 いや、逆に、一応電子書籍について多少知識があるからこそ「電子書籍とはこういうもの」という業界常識的な先入観ができて、「電子書籍とは何か」ということを疑問に思うことはなかったのです。が、こういう調査結果を見て、改めてふと「そういえば電子書籍って何だろう」「一般の人は何だと思って質問に答えたのだろう」と思った次第です。

 こういうときは……そう、ウィキペディアですね!

 電子書籍(でんししょせき)とは、古くより存在する紙とインクを利用した印刷物ではなく、 文字、記号、図画に加え音声、動画を、紙、金属、樹脂、磁性体等の素材に、電磁的、または、レーザー光等で記録した情報や、ネットワークで流通させた情報をいう。

 は? これでは「『紙』でなくて『紙以外』に記録された『情報』」と同じ意味になってしまうのではないか?
 これじゃネットワークにつないでメール見た瞬間に「電子書籍を閲覧」したことになるだろ? いくら何でも広すぎるだろこの定義は!

 では気を取り直して、他の辞書を確認してみましょうか。

《 electronic book 》電子化された書籍データ。紙に印刷するのではなく、パソコンや携帯電話、専用の表示端末などにデータを取り込んで閲覧する。文字以外に動画や音声を再生できるものもある。電書。デジタル書籍。eブック。

 「電書」って……。Wikipediaとほとんど変わりありませんね。

一般的に「電子出版」とはCD-ROM(ロム)やその他の電子記録媒体に書籍の内容を記録して、販売するパッケージ型の電子出版をさし、「電子書籍」とはインターネット上から書籍データをダウンロードさせたり、サーバーに蓄積された書籍データをオンラインのまま利用したりする、物流を伴わない出版形態をさす。

 これは少しまともな定義ですね。まず「電子出版」という電子書籍の「出自」から定義に入り、その「出版形態」をもって「電子書籍」の本質的意味としています。なるほど。

 この定義だと、「出版」という行為が「電子書籍」にとって重要な意味をもちます。逆に「出版」という行為を伴わないたんなるデジタル化された情報は「電子書籍」には当たらない、ということになるわけですね。

 それでは「出版」とは何か、とか問題にすると「物質の究極的要素は何か」とか「宇宙の果てには何があるのか」とかと同じように悩むことになるので、それは出家してからにしたいと思います。

 さて、この定義に基づくと日常的文脈ではいわゆる「電子書店」で販売されている「電子出版」された書籍が「電子書籍」であるという認識になると思います。実際そういうふうに理解している人も多いと思われます。

 ただ、これには大きな落とし穴があります。

 というのも、ネット上には必ずしも「出版」という行為を明示していない情報コンテンツが無数にあります。そしてそのなかには、形式上いかにも電子書籍らしいフォーマット、すなわちPDF、LZH、CBZ、EPUBなどの形式のコンテンツも無数にあります。そしてそのなかには、なぜだかよく分からないがウェッブサイトで無料で公開されているコンテンツも無数にあります。そしてそのなかには、中身をみるとすごくしっかりした作りのものも少なくありません。(その中身が何であるかはさておき。)

 そういうコンテンツを何気なくウェッブで閲覧したりダウンロードしたときに、自分は「電子書籍」を閲覧・ダウンロードした、という認識をもつでしょうか?

 ここで重要なポイントは、そういう認識をもつ人ともたない人の両方が存在しうる、ということです。パソコンで×××なサイトで×××なコンテンツを(偶然にも)閲覧したとき、あなたは「電子書籍を閲覧した」と認識しましたか? 少なくとも、わたしはそのような認識はもちませんでした。
 また、わたしにはタブレットに1000冊ぐらい「電子書籍」を入れて持ち歩いている知人がいますが、その人は1年前は「電子書籍? そんな難しそうなのは読まない」と言っていました。(たんに無知だったのかもしれませんが。)
 ただそういう認識の人ばかりとは限りません。もし彼が「電子書籍」についてある程度知識があれば自分は「電書マニア」だというまったく正反対の認識をもっていたかもしれません。

 こうしてみると、「電子書籍を読んだことがあるか」とか「電子書籍を読んでみたいと思うか」とかという質問は、「あなたはTPPに賛成ですか」という質問に似ていて、「とりあえず『いいえ』にマルしておくか」という人も(じつは)多いと思われます。だとすると、現状において「電子書籍」に関する種々の調査結果をどこまで真に受けることができるのか、はなはだ疑問なところです。

 というか、「TPPとは何か」という質問に「正解」を答えられる人は存在するのであろうか。

 (壮大なテーマなので次回に続く)

 

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Take

コトダマの里のIT事業部長兼SE兼お茶係です。主に電子書籍やタブレットなど最新のICT(情報通信技術)の動向について斜め30度ぐらいから考察します。

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