書店にたくさん並ぶエンディングノート(出所:日経トレンディネット)

書店にたくさん並ぶエンディングノート
(出所:日経トレンディネット)

「終活」と生命保険

 近頃、比較的大きな書店では「終活コーナー」が見受けられるようになりました。 ハードカバーの立派な装丁の「エンディングノート」や壇蜜が表紙を飾る新刊の関係雑誌などが並べられています。

 ざっと眺めただけですが、その時を迎える前に家族や友人への想いや過去の想い出や、遺言状ともいえる意思表示、実務的な生命保険証券やその他有価証券、もちろん預貯金の口座などの一覧を記すページもあります。

 現時点における「人間五十年」の身として率直に感じるのは、「これらのノートなどがつつがなく書ける方はどのぐらいいるのだろうか」ということです。
  ……(中略)……

 率直に申し上げれば、多少の預貯金や有価証券など財産があり、家族関係や友人関係は良好で、過去にもちろん苦しい時期があったけれど晩年は幸福で、さらに揉めるような不動産など余計な財産などがない高齢者の方が、遠くない死期を悟り、周りの人々や自身の過去を振り返って書くにはとてもいいかもしれません。

 しかし、そうでない方にとっては埋める部分が少ないだけでなく、自身の不甲斐なさや準備不足を突き付けられるだけで、あまり書きたくないケースがあるかもしれません。

 最近は、少し大きな書店に行くと、どこでも「終活」コーナーが設けられている。そこで平積みされているのは、たいてい大手出版社などが作成したエンディングノートだ。

 それらを手に取ってパラパラ見てみたときの第一印象は、「こんなに書くことがあるのか」ということだ。
 遺産や相続などおよそ遺言書に必要な必須的項目に加えて、終末期医療に関する希望、葬儀や埋葬に関する希望など自分のエンディングに関する希望、家族や友人に対する遺言やメッセージ、自分の略歴や人生上の出来事など自分史的な事柄、さらには思い出アルバムやフォト・メッセージも加わったものなど、総じて盛り沢山の内容になっている。
 しかしそれを見て、「こんなに書かなければいけないのか」とちょっと尻込みする人も少なくないのではないだろうか。

 たしかに、エンディングノートといっても何を書いたらよいのか皆目見当も付かない人も多いと思うので、およそ考えられる項目をあらかじめ用意しておいて必要に応じて書けばよい、というのは「ガイドブック」としては親切なことかもしれない。
 しかし紹介記事で指摘しているように、実際に自分で書いてみてあまりに書くことがないと何とも寂しい気分になってしまうだろう。言ってみれば、エンディングノートの空白部分は自分の人生の空白部分を示しているようで、書いていて空しくなってしまうのである。

 この感覚は、SNS(ソーシャルネットワークサービス)のFacebookに共通するところがある。
 Facebookは社交的で多趣味で多彩な活動をしている人ほど書くべきことがたくさんあり、充実したものになる。逆に言えば、そうでない人は書くべきことがあまりなく、貧弱なものになる。Facebookが「リア充」(現実生活が充実している人)のためのSNSと言われるゆえんである。

 しかしそもそも、エンディングノートは何のためにあるのか。あるいは、終活は何のためにするのか。わたしはこれまでも繰り返し述べてきたが、自分や残される人の「タマシイ」が”生き生きする”ためにあるのである。つまりそれは、自分や家族が「生き生きと元気になる」ようなもの、「生きる力」や「生きようとする意欲」が沸くようなものでなければならないはずである。そこが、たんなる遺言状や備忘録と決定的に違うところである。

 遺産の項目が充実していればたしかに遺族は元気になるかもしれないが、かりになくても元気を与える言葉はある。
 書いていて意気消沈するようなエンディングノートは書く必要はないと思うし、終活ブームに押されて義務的に書くのも少し的外れな気がする。
 エンディングノートに書くべきことは個人個人でまったく異なる。したがって本来は、それは最初は白紙であるべきなのである。

 

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『コトダマ新聞』の主筆(代表)です。時流に流されずに死生観をめぐる文化論にまで掘り下げて考察したいと思います。

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