葬儀費用の平均(出所:YOMIURI ONLINE)

葬儀費用の平均
(出所:YOMIURI ONLINE)

突然の喪主 慌てぬために

 日本消費者協会のアンケート調査(2010年)によると、葬式費用の全国平均は199万9000円。形式は仏式が約90%を占め、葬式の場所は、葬祭センターなどの葬儀専用の式場が約75%だった。費用は、地域や参列者数、祭壇の豪華さなどにより変わるが、目安になりそうだ。

 金額の内訳は、「葬儀一式費用」「飲食接待費用」「寺院への費用」で、葬式にかかる費用のほぼすべてが含まれている。「葬儀一式費用」は、通夜や告別式、火葬などの費用で、同協会のアンケートでは、全国平均が126万7000円となっている。

 「飲食接待費用」は、通夜や火葬後の会食で出す料理や、参列者への返礼品など。アンケートでは全国平均が45万5000円。「寺院への費用」は、読経や戒名に対する僧侶へのお布施で、全国平均は51万4000円だった。

 この種の調査で「全体的傾向」を示すためにもっともよく使われる指標が「平均」である。
 たしかに「平均」は「データの代表値」として統計学的にもっとも重要な指標の一つであるが、日常的な解釈としては「世間並み」という意味あいをもつ。

 葬儀はもともと社会的儀礼の側面が強かったので、それが形式的に「世間並み」かどうかは強い規範的意味があった。したがって、それが「平均からズレる」といろいろと社会的軋轢を生み、それが遺族への暗黙のプレッシャーとなり、葬儀関連業者がそれに便乗する、という構図になっていた。

 しかし本誌『コトダマ新聞』でも再三指摘しているように、「死の個人化」という意識的・文化的趨勢が進むに従い、葬儀に関する「世間並み」の規範的意味が弱まり、むしろ「自分らしさ」や「個性」が尊重されるようになってきている。
 そして「自分らしさ」や「個性」を重視する人が増えると、それに応じて結果として「平均からズレる」人も多くなる。統計学的に言えば、これは(「散らばりの程度」の統計的指標である)「分散」が増えることを意味する。

 ただし、「分散」が増えるといっても、それはひとまず葬儀の形式的・スタイル的なヴァリエーションが増えるということであり、必ずしも費用面でのヴァリエーションが増えるということを直ちに意味するわけではない。とはいえ、こうした「葬儀の個性化」は実態としては「葬儀の簡素化」を伴っており、費用面でも従来に比べて低価格化の方向でバリエーションが広がりつつある。

 要するに、全体として従来の標準的な葬儀に比べてより低価格の様々なスタイルの葬儀が増えてきているのである。もしこうした意味で「分散」が増加してきているのであれば、それはこれまでもたびたび論じているように弔いの「カタチ」ではなく「ココロ」を重視する傾向の一つの証拠となるはずである。

 こうしたアンケート調査ではめったに公表されることはないが、こうした意識的な傾向を読み解くためにも「平均」だけでなく「分散」という指標もぜひ公開してほしいものである。

 

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『コトダマ新聞』の主筆(代表)です。時流に流されずに死生観をめぐる文化論にまで掘り下げて考察したいと思います。

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