輝きクラブ周南鹿野支部が普及を進めている「私のあんしんお守りノート」(出所:朝日新聞デジタル)

輝きクラブ周南鹿野支部が推進する
「私のあんしんお守りノート」
(出所:朝日新聞デジタル)

最期のお願い、冷蔵庫に保存 延命や葬式の希望記入

 高齢者が緊急連絡先やかかりつけ医などを書いた紙を、冷蔵庫で保管する取り組みが広がる中、山口県周南市の高齢者団体は、一歩進んでいる。延命治療を受けるか否か、葬式はどうしたいか、果ては戒名まで、万一のときに備え「エンディングノート」を冷蔵庫に入れておこうと呼びかけている。

 周南市の老人クラブ「輝きクラブ周南鹿野支部」。会員409人のうち約300人が実行している。
 ノートの名称は「私のあんしんお守りノート」(A4判9ページ)で、親族や友人、行きつけの店、デイサービスといった連絡先に加え、「介護が必要になった時の希望」「通夜、葬儀はどうしたいか」や、寺からすでにもらっている法名・戒名を書き込める。尊厳死や延命治療、人工呼吸器をつけるかどうかについてもチェック式で記す欄がある。
 書き込んだ用紙は長さ約25センチのカプセルに入れ、冷蔵庫で保管する。冷蔵庫に入れるのは、火災や災害にあっても壊れにくく、救急隊がすぐに見つけられるためだ。

 高齢者が持病や家族の連絡先などを書いた紙をカプセルに入れて冷蔵庫に保管する取り組みは、米国オレゴン州などの先行例を参考に2008年に東京都港区が開始し、それ以降全国の自治体に広まってきている。

 港区では「救急医療情報キット」として①救急情報、②写真、③健康保険証(写)、④診察券(写)、⑤薬剤情報提供書・お薬手帳(写) を筒状のケースに入れて、冷蔵庫に保管。キットが入っていることが分かるように玄関ドア内側と冷蔵庫にシンボルマーク貼り付けるようにしている。

港区の「救急医療情報キット」

港区の「救急医療情報キット」

 こうした救急医療情報カプセルの広まりには、単身高齢者の増加や孤立死の増加がある。
 冷蔵庫はどの家庭にもあり、地震など災害にも強く、保管にもすぐれている。高齢者が病気や災害で倒れたとき、救急隊員などが冷蔵庫の中にあるカプセルから医療情報を得ることによって、適切な対応が可能となり、孤立死を未然に防ぐことにもつながる。

 紹介記事の山口県周南市の高齢者団体の取り組みは、さらに一歩進んで、延命治療、葬式、戒名などに関する希望を書いた「エンディングノート」もカプセルに入れておく、というものだ。
 たしかに、救急医療情報カプセルはもともと病気や災害などで自分に不測の事態が一のことがあったときに関係者が適切な対処を取れるようにするためのものなので、自分が死んだ後のことについても希望や指示を書いておいたほうがより「包括的に」不測の事態をカバーすることができる。

 さらに、他人にとってはこの種の重要な情報があちこちに分散してあるよりは一箇所にまとまってあったほうがより迅速に対応しやすい、ということもある。高齢になると物忘れも多くなる、ということを考え合わせると、こうした「冷蔵庫カプセル」は合理的な仕組みであると言える。

 ただ、「エンディングノートを冷蔵庫に入れておく」ということに若干の心理的抵抗を感じる人がいるかもしれない。こうした取り組みの普及には、そこらへんについての工夫も必要そうである。

 

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『コトダマ新聞』の主筆(代表)です。時流に流されずに死生観をめぐる文化論にまで掘り下げて考察したいと思います。

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