東京家庭裁判所

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意外に短い「相続放棄」までの猶予期間

 故人から引き継ぐ遺産は、できれば現金や不動産などのプラスの財産だけにしたい……とは誰もが願うところですが、現実には借金の返済や連帯保証人の地位など「負の遺産」も相続の対象となります。こうした負債を免れるための手続きとして「相続放棄(そうぞくほうき)」というものが存在しており、この手続きには「3カ月」という期限がはっきりと設定されています。

 「3カ月」といえば、さすがに「数日」や「数週間」などのごく短い日数と比べて、ある程度の猶予がある単位のように思えます。一見すると、けっこう余裕のある日程なのではないか、とも思えてしまうかもしれません。とはいえ、放置しておくと故人の負債をそのまま抱え込むこととなり、取り返しのつかない状態に陥ってしまう種類の手続きでもあるということは無視できないでしょう。その意味では、時間制限としては決してゆったりしているとはいえない……というのが正直なところだと思います。

 法律的な続きとしての「相続放棄」は意外に多い。
 記事中で紹介されているが、家庭裁判所で受理された件数は平成23年度で16万6463件に上り、「この数字は家庭裁判所で行われる家事事件と呼ばれる諸手続きのなかでも群を抜いており、目立って多いもののひとつ」ということである。
 多くの場合、親が事業などで多額の負債を抱えたまま亡くなって遺産などでも弁済しきれないような状況でやむをえず「相続放棄」ということにしたのであろう。

 ただし、こうした意味での「相続放棄」は、じつは分かりやすい部類である。
 というのも、現代社会では、残された親の面倒をみることができずに実質的に「相続放棄」する(法律的には必ずしも「相続放棄」しているわけではない)ことがごくふつうにある。これはある意味で「隠れた相続放棄」であるが、少子高齢化の進展に伴いこれからこの「隠れた相続放棄」が増えていくと予想される。

 こうした「隠れた相続放棄」によって宙に浮く「負債」(すなわち主として「介護」)を親族に代わって肩代わりすることになるのは最終的には政府や自治体であり、これは近い将来財政上の大きな負担になることは間違いない。
 けっきょく、未曾有の超高齢化社会をこれから迎えるにあたって年金や介護などの社会保障をどうするか、という問いへの答えを第一義的に政府や自治体に求めるならば、「相続」を政府や自治体に委ねるということに不可避的につながっていかざるをえない。簡単に言えば、社会保障費の増加とともに相続税も上がり、形式的にも実質的にも「相続放棄」せざるをえないことが増えていくだろう。

 だとすると、それにもかかわらず親から子へと「相続」できるものは何なのか、ということが改めて問われるようになるだろう。そしてそれは根本的には、そもそも「相続」とはなにか、という問いにつながっていくはずである。

 

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『コトダマ新聞』の主筆(代表)です。時流に流されずに死生観をめぐる文化論にまで掘り下げて考察したいと思います。

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