入棺体験(出所:日経トレンディネット)

入棺体験
(出所:日経トレンディネット)

棺に入ると心が安らぐ!? “入棺体験”人気の秘密

 超高齢化社会を迎え、自分の人生をどのように締めくくるかを考える“終活”が盛んになっている。そんななか、密かに人気となっているのが「入棺体験」だ。

 文字通り棺の中に入る体験イベントで、シニアライフコンサルタントで終活カウンセラーの坂部篤志氏とウィルライフが2013年3月から共同で開催。インターネットで告知した瞬間に定員が埋まるほど盛況だという。
 いったいどんな人たちがイベントに参加しているのか。同社の増田進弘社長によると、参加者の属性はさまざまだが、共通しているのは“まじめな気持ちで参加している”こと。興味本位や冷やかしで参加した人は今まで1人もいなかったそうだ。過去4回の参加者で多かったのは、新しいものを体験して広めたいという気持ちが強い人。また環境や教育に興味を持つ人の参加も多いという。生死の問題はそれらの問題と深く関わっているからだろう。さらに家族や親族の葬儀を通して現代の葬儀のありかたに疑問を抱いている人も多いとのこと。

 ほとんどの人が病院で死を迎える現代では、日常生活から「死の実感」が払拭されている。一方、2011年の大震災以降、死を身近に感じる人が多くなっている。そうしたころから死を逃れられない恐ろしいものと忌避するのではなく、フラットな気持ちで見つめたいと願う人が増えているようだ。入棺体験はその格好の入口なのだろう。

 近年、「死」に対する関心が高まってきているように思われる。「入棺体験」が人気を呼んでいるのもその一つの表れであろう。

 記事の中で紹介されている入棺体験イベントへの参加理由をみると、やはり家族など身近な人の死をきっかけとして、死のあり方について改めて考えてみたい、という意識が背景にある人が多いようだ。
 実際のところ、日本はこれから「多死社会」を迎える。少子高齢化とともに死亡率(人口1,000人当たりの死者数)は上昇を続け、2060年には2010年の約2倍の17.7になると厚生労働省は推計している。つまりそれだけ、死はこれから誰にとっても身近なものになっていく。さらにまた、2011年の大震災も死を身近なものにする大きな転機になったであろう。

 他方、これまではまた別の意味で死は必ずしも「身近な」ものではなかった。
 というのも、人の死のあり方、例えば終末期や葬儀のあり方は伝統的な社会的・文化的規範によって決められていて、個人(故人)の考えや価値観がそこに介在する余地は必ずしも大きくなかった。
 ただし、多くの社会・文化では宗教的な教義や信条が個人の死の観念に大きな影響力を持っているが、日本では少なくとも内面的にはそれほど大きな影響力をもっていないので、死のあり方もどちからかというと表面的に宗教的な装いを整えた形式的・儀礼的なものに留まっていた。そういう意味で、これまでは自分の死ですら自分にとって必ずしも「身近な」ものではなかった。

 しかし本誌(『コトダマ新聞』)でキーワードとしてたびたび取り上げている「死の個人化」という趨勢が、死を身近なものにしつつある。簡単に言えば、伝統的な規範や慣習に囚われずに「死」を、あるいは「自分にとっての死」を、自由に、真剣に考えることができるようになってきたし、また考えざるをえないようにもなってきたのである。

 とはいえ、では自分にとって死とは何か。改めて真剣に考えてみると、なかなか難しい問いである。
 そういうわけで、自分にとっての死、あるいは良き死を模索しようとする志向や試みが、近年の「終活」ブームとして表れてきていると考えられるし、今回の紹介記事の「入棺体験」もその一つであろう。
 個人的には、自分自身の五感で「死を体感」してみるこうした「入棺体験」は良い試みだと思う。少なくとも得体の知れない「スピリチュアル」系のセミナーに参加したりするよりは、出来合いの死の観念から離れて自由に純粋に考えるための貴重なきっかけを提供してくれるだろう。

 

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