教育資金一括贈与の非課税措置(出所:東京新聞)

教育資金一括贈与の非課税措置
(出所:東京新聞)

孫への教育資金贈与、2か月半で1000億円突破

 祖父母から孫への教育資金贈与の非課税制度を活用した「教育資金贈与信託」の残高が三菱UFJ信託銀行などの大手信託4社で、2013年4月の取り扱い開始から2か月半(6月18日時点)で1000億円を突破、契約件数は1万5000件に達した。6月20日付の日本経済新聞が報じた。孫のためにお金を有効に使いたいと願う高齢者の心をくすぐり、人気を博している。
 この制度は、30歳未満の子や孫への教育資金の贈与なら1人あたり1500万円まで非課税となる。非課税制度が終了する2015年末までに4行合計で5万4000件の獲得を見込むが、4分の1を超えた。平均の贈与額は600万円程度という。

 先日の記事で、教育資金一括贈与の非課税制度を取り上げたが、4月からわずか2ヶ月半で1000億円を突破したとのことである。おおかたは相続税の節税対策に利用されていると予想されるが、政府が企図したように「高齢者世代から現役世代への資産移転」で消費拡大につながるかどうかはまだ未知数である。

 ただし前回も指摘したように、この制度は祖父母、親、子(孫)の間での教育投資を促進することで教育機会の格差の固定化を招く恐れがある。
 現在の日本社会では、親の社会経済的地位による教育機会の格差は明らかである。
 たとえば、東大生の家庭は世帯年収950万円以上の家庭が51.8%に上っている。日本の平均世帯年収は約550万円であるから、東大生の半分が日本の平均世帯年収の約2倍、もしくはそれ以上を稼ぐ家庭の子弟ということになる。東大生の半分が、日本の平均世帯年収の約2倍、もしくはそれ以上を稼ぐ家庭の子どもということになる。

 単純に統計的確率の問題として、子どもに対する教育投資をすればするほど高い教育的成果、すなわち「高学歴」を達成できる確率は高まるだろう。したがって、多くの教育投資が可能な比較的裕福な家庭に教育投資を促す仕組みは、子どもの高学歴と、その結果として将来的な高収入の確率を高めることになり、ゆえに「格差の固定化(再生産)」をもたらすことになる。

 とはいえ、たんに資産を相続させるよりは、次の世代の教育投資として有効に活用されるのであればそれはそれで有意義なことである。
 そのさい、単純に「高い学歴」「一流大学合格」のための費用に使われるよりは、祖父母が孫に対し「どのような人間になってもらいたいか」という理想や願いを反映した形で贈与できるとよいかもしれない。

 手前味噌ではあるが、教育資金の贈与とセットでそうした願いを込めた「コトダマ・レター」があるとたいへん有意義ではないだろうか。
 「タマシイ」のないお金は、後に残らず、消えるのも早い。せっかくの機会なので、孫の「タマシイ」にしっかりと残る贈り物にしたい。

 

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『コトダマ新聞』の主筆(代表)です。時流に流されずに死生観をめぐる文化論にまで掘り下げて考察したいと思います。

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