教育資金贈与への関心が高まっている(出所:日経電子版)

教育資金贈与への関心が高まっている
(出所:日経電子版)

非課税に落とし穴 教育資金贈与商品の使い勝手

 孫や子に贈る教育資金の贈与税が非課税になる商品を、金融機関が相次ぎ取り扱い始めた。相続税の節税にもつながるため関心を持つ人は多い。ただ、非課税になる教育費にわかりにくい部分があるなど注意点は多い。商品の最新事情や注意点をまとめた。

 教育贈与非課税商品は4月に導入された、祖父母や親が子・孫に教育資金を贈与する際、1500万円までを非課税にする制度に基づく。開始当初は店舗があまり多くない信託銀行4行だけが扱っていたが、その後、横浜銀、千葉銀など地方銀行が参入。ここにきてメガバンクや証券会社の動きも本格化している。
 もっとも、新しい商品だけに、わかりにくい点も多い。口座を申し込む前に、それらをおさえておこう。

 指摘されている疑問は、たとえば「高校までの部活動費が非課税なのに、なぜ大学の部活動費は制限されるのか」というようなものだ。
 教育贈与非課税商品で一番気になるのは、非課税になる教育費とならない費用の区分。まずは表Aを参考にしてほしい。高校までの部活動費が非課税となる理由は「学習指導要領に定められるなど教育課程の一環だから」(文部科学省)。一方、大学の部活動は指導要領などに根拠がないため、指導者への謝礼など一部に限るという。
 教科書や参考書の費用なども注意が必要だ。学習塾で使うテキストは、学習塾で購入し、領収書を受け取った場合は非課税。ところが、一般の書店で買うと非課税にならない。下宿代や留学のための渡航費も課税される。疑問がある場合は文科省(高等教育局学生・留学生課)に問い合わせよう。

 すでに4月の記事で「孫への教育資金一括贈与の非課税制度」について取り上げたが、今回も再度取り上げたい。

 金融機関での取り扱いも拡大し、これから利用者は増えそうである。しかし、紹介記事にもあるように、「非課税対象の教育費」の具体的中身をめぐっていろいろ混乱も生じているようだ。
 高校までの部活動費は「学習指導要領に定められている」から非課税だが、大学の部活動費は「指導要領などに根拠がない」ために非課税ではない、というのは「お役所答弁」の見本として今後是非引き合いに出したいネタである。

 たしかに何でもかんでも「教育費」に含めるわけにはいかないが、その一方で、ぶっちゃけた話、もともと「教育費の援助」を名目にした「高齢者世帯から子育て世帯への資産移転」で消費拡大、デフレ脱却をはかろうという目論みなはずである。
 であるならば、「そんな細かい話はどうでもいいじゃん!」と言いたくなるところである。むしろもっと幅広い産業への波及効果を考えれば、「子育て(孫育て)に優しい住宅購入資金」とか「子(孫)育て世帯に嬉しい自動車購入資金」とか、じゃんじゃんいろいろな名目で「援助」を可能にすればよい。そうすれば、消費税収入も上がって政府も万々歳であろう。

 とはいえ、もう少し真面目に考えると、以前に指摘したようにこの制度を「少子化対策」として活用することは検討に値すると思われる。
 ただしそのためには、少子化の背景を慎重に洞察する必要がある。

 以前の記事で、少子化の背景要因としてもっとも大きな要因の一つに家計における教育費の負担増があると論じたが、この教育費の負担増は、高学歴化の進展に伴う受験競争の過熱や「お受験」にみられるような過大な教育投資を背景としている。
 そしてさらにこれは、いわゆる「格差」の拡大、すなわち学歴による所得格差や就業機会の格差の拡大を背景にしていると推察される。そうすると、この教育資金一括贈与の非課税制度は、「高齢者世帯から子育て世帯への資産移転」を促すことによって期せずして「格差の固定化(再生産)」に寄与してしまう可能性がある
 そうなると、ますます「学歴格差社会」は進み、世帯の教育費負担は結局解消されない、ということになりかねない。
 たしかに相続税の非課税枠(基礎控除額)の引き下げも同時に行われるので、いっけん「格差の固定化」にならないように政策的に辻褄を合わせているようにも見えるが、この制度が世代間での教育投資の連携を促進すればするほど「格差の固定化」をもたらすことが予想される。

 わたしは以前の記事で、少子化対策を本気でするなら、「誰か他の家の子育てを自分の生活を犠牲にしてまで面倒を見る覚悟」が必要だと論じた。じつは、この制度はそうした「覚悟」に逆行する側面をもっているのである。
 したがって、改めて考え直してみると、この制度は少子化対策としては不首尾であり、やはり短期的な景気対策として消費世帯が「自由にパーッと」消費しやすいように役所も便宜を図ってやるのがよかろうと思われる。

 

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『コトダマ新聞』の主筆(代表)です。時流に流されずに死生観をめぐる文化論にまで掘り下げて考察したいと思います。

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