少子化社会対策会議であいさつする安倍総理(出所:首相官邸ホームページ)

少子化社会対策会議であいさつする安倍総理
(出所:首相官邸ホームページ)

内閣の少子化対策決定 保育40万人増、「育休3年」も

 安倍内閣は7日、少子化社会対策会議を開き、「少子化危機突破のための緊急対策」を決めた。子育て支援と働き方の改革、結婚・妊娠・出産支援が3本柱。保育の受け皿を40万人分増やす「待機児童解消加速化プラン」が目玉だが、残りは既存施策の小幅な手直しが目立つ。

 対策は、内閣府の有識者会議がまとめた報告書が土台。子育て支援の核となる保育の拡充は政権が4月に成長戦略で打ち出したもの。消費増税分の一部を使って2015年度に始める保育の新制度も対策のひとつと位置づけた。働き方改革では、待機児童解消とセットで公表した「育休3年」を改めて打ち出した。

 さらに、これまで取り組みが弱かった分野として、結婚・妊娠・出産支援を3本目の柱に。出産後まもない母親の育児不安をやわらげるため、自治体の電話相談を拡充。子育て経験のある年配者らが話し相手になるモデル事業も始める。

女性のチャンス拡大と出産・育児の「機会費用」の増大

 以前の記事で述べたが、すでに常識的なことであるが、少子化(あるいは晩産化)の原因は、子どもを産み育てること(出産・育児)の費用の増加にある。そして、子どもを産み育てることの直接的な費用としては教育費が最大で、ゆえに少子化の原因の中でも最大の要因の一つは(広い意味での)教育費の負担増(あるいは主観的な負担感の増加)にある。

 今回は、子どもを産み育てることの「機会費用」についてもう少し突っこんで考えてみたい。

 ところで、かつては子どもは重要な「生産手段」であり、「生活保障」であったが、産業化、都市化、核家族化の進展、あるいは社会保障の充実とともに、こうした「生産手段」や「生活保障」といった「実利的効用」は希薄化し、代わりに「精神的安らぎ」や「生きがい」といった「情緒的効用」が子どもの「効用」の中心を占めるようになった、ということもすでに述べた。

 しかし、経済学的な意味で子どもを産み育てることの「機会費用」ということを考慮すると、ここで考えなければならないのは女性にとって、とくに医学的・生理的な意味での“妊娠適齢期”にある10代後半から20代の女性にとっての「子どもを産み育てることによって失われる効用(利益)=機会費用」である。

 現代社会では、女性の社会経済的地位の向上に伴い、女性の仕事や生活の面での様々なチャンスは広がっている。すなわち、女性は様々な職業や職場へ積極的に進出するようになってきており、意欲と能力があれば男性と同等以上の地位や収入を得られるようになってきている。

 さらに、とくに10代後半から20代の女性は“女性であること”によって生涯のなかでも様々なライフ・チャンス――倫理的な善し悪しは別にして――に恵まれる時期であり、それを“巧妙に”利用すれば生涯で得られる効用(利益)の大半をその時期に集中的に獲得する(あるいはそのための手段や資源を獲得する)こともできるだろう。

 

出産・育児の「機会費用」に見合った「社会的費用」を覚悟する必要がある

 かくして、「子どもを産み育てる」ことによって得られる「(期待)効用」と、「子どもを産み育て”ない”」ことによって得られる「(期待)利益」を比較して、後者が前者を上回れば「子どもを産み育て”ない”」という結論が経済学的には導かれる。

 こうしてみると、「子どもを産み育てる」ことによって10代後半から20代の女性のライフ・チャンスがつぶさないような社会的仕組みを整えることが少子化対策として肝心なことが理解できる。

 「育休3年」というのはその意味では理に叶っているが、問題はすべての企業・団体が額面通りに実行するかどうかである。夫が育休を取りやすくする――たんに手続き的にだけではなく、就業上の地位や賃金の保障という雇用者の生活設計を考慮した上で――ことも重要である。

 ただ実効的な施策にするためには、やはり相当規模の政府による財政的支援(社会的費用)が必要となり、結局のところ前回の記事で指摘したように個々の家庭の子育てを社会全体で負担する「覚悟」が根本的には要求されることに変わりはないのである。

 

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『コトダマ新聞』の主筆(代表)です。時流に流されずに死生観をめぐる文化論にまで掘り下げて考察したいと思います。

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