老前整理 捨てれば心も暮らしも軽くなる
老前整理 捨てれば心も暮らしも軽くなる
著者:坂岡 洋子
出版社:徳間書店
(2011-1)
販売元:Amazon.co.jp

超高齢化時代突入で「老前整理」ブームが到来~明るく軽やかな気持ちで“終活”に励む中高年たち

 「老前整理」とは、自分が老いる前の、気力・体力が充実しているうちに、身辺を見直して、いらないモノを整理しようという考え方だ。一方で、「生前整理」という言葉もあるが、これは相続問題も含めた身辺整理のこと。元気があるうちに、今一度暮らしを見つめ直そうという老前整理は、それとは異なる考え方だ。
 この老前整理を提唱し、同書を執筆したのは、株式会社くらしかる代表で、インテリア関連のコンサルティングを行なう坂岡洋子氏だ。モノに囲まれて汲々としていた人たちが、軽やかにイキイキとした生活を手に入れる実例が多数登場し、それが読者の支持を集めた。そして、ついに10万部を突破。中高年の「生き方指南書」としても注目されている。
 ・・・(中略)・・・
 このように、“終活”に勤しむ層が増えていることは、日本が超高齢化社会に突入した象徴と言える。なおかつ、件(くだん)の『老前整理』や映画『エンディングノート』が、どこか軽やかさや明るさすら漂わせるように、日本人が老いや死を自然体で受け止める土壌ができつつあるようにも感じる。

 

 記事で指摘しているように、近年は「片付け」がライフスタイルの一つのトレンドである。
 背景には、デフレの長期化でさまざまなモノが安く手軽に手に入るようになり、ついつい不要なものも買ってしまうことがあるかもしれない。さらに、日本人は「もったいない」という独特の節約意識があり、いったん手に入れたものはなかなか捨てられず、いつのまにか不用品の山に囲まれてしまう、ということにもなりがちである。

 「老前整理」を提唱する坂岡氏はインテリアコーディネーターで、高齢者の住宅改修の相談を数多く受けてきたが、家にモノがあふれて足の踏み場がない状態にあることが少なくなく、住宅改修の前にモノを片付けるところから始める必要がある、と指摘する。
 そのさい、たんに家の中にモノが多いとつまずいてケガをしてしまったりする可能性がある、というだけでなく、自分の身体が不自由になったり記憶や判断力が衰えたりしたときに家族に迷惑をかける可能性がある、ということも高齢者にとっては心理的な重荷になっている。
 ただし、あふれかえったモノを整理するためには、けっこう体力や気力が必要である。ゆえに、坂岡氏は、それが衰えてくる前に整理をする「老前整理」を提唱しているわけである。
 他方、そのように「老前整理」をしてしまうと、たんに家の中が片付いてスッキリするというだけでなく、家族に後々迷惑をかけてしまうかもしれないという不安もなくなり心理的にもスッキリする。そしてそのことによって、「スッキリ」した気分で改めてその後の人生と生活を「自由に」「自分らしく」おくることができる。

 わたしは、以前に「終活」を、“終わりに向かっての活動”ではなく”次に向かっての活動”として位置づけた(「次の一歩」のための「終活」)。
 すなわち、多くの人が「終活」に臨む主要な動機の一つは、自分の死によって「家族や周囲の人間に迷惑をかけない」ということがあるが、それは「迷惑をかけないから後は好きにさせてくれ」ということも含意している。つまり、いわば「後顧の憂い」を絶つことによって前を向くことができるようになるわけである。
 終活を始めたときからすでに”ネクスト・ステージ”は始まっている。死もその”ネクスト・ステージ”の一部である。このネクスト・ステージを充実したものにするためには、一般的に言えば、それを早く始めるにこしたことはない。
 そう考えると、「終活」という言い方がそれにそぐわない気もする。そもそも「終活」はどちらかというと前向きなニュアンスはあるのだが、もっとそれを強調した言い方のほうがいいのかもしれない。

LINEで送る
Pocket

The following two tabs change content below.
『コトダマ新聞』の主筆(代表)です。時流に流されずに死生観をめぐる文化論にまで掘り下げて考察したいと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。


*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)