韓国の伝統的な葬儀(出所:koreabrand.net)

韓国の伝統的な葬儀
(出所:koreabrand.net)

故人を追悼しない韓国の葬儀

 韓国の葬儀文化は、費用ばかり高く、故人の追悼がおざなりにされている。
 韓国の平均的な葬儀費用は1200万ウォン(約90万円)と、海外に比べて3-4倍高い。葬儀場と関連業者は「葬儀で値切ったりするのは、故人に対し礼儀を欠く」として弔花、寿衣(死者に着せる衣服)、ひつぎなど、いずれも豪華な物を勧めてくる。弔問客は香典を出すことで、喪主に対して参加したというサインを送らなければならず、喪主は一晩中、弔問客を迎えなければならないため、喪主も弔問客も皆疲れる。
 にもかかわらず、最も中心となるべき故人の追悼儀式はない。葬儀分野のある専門家は「われわれの葬儀は、故人の追悼儀式が欠けているという点で、とても恥ずかしい儀式だ」と話す。
 ・・・(中略)・・・
 故人がどのような人生を送り、この世に何を残したのか、残された人々の胸に刻まれた思い出は何なのか、などを振り返る機会のある葬儀文化を定着させるべきだろう。

 

 わたしの韓国の知人は、いずれも家族を大切にする。
 「家族を大切にする」ということであれば日本でもそうだと思われるかもしれないが、日本と韓国の大きな違いは、日本は普段の生活のなかでそれをあからさまに表出することはあまりないが、韓国の人はそれを躊躇することなくあからさまに表現する、ということである。また、現代の日本では家庭の中でも互いにばらばらに食事をしたりテレビをみたりする家庭も多いが、韓国の人からみるとたいへん冷たく、とても家族とは思えないようである。

 周知の通り、韓国は儒教文化の国で、先祖や年長者を敬い、同族意識が強い。また、日本の「イエ」(家族・親族を包摂する家系・家柄の観念的実体)に相当する概念に「チプ」がある。日本では「イエ」はもはや制度としても意識としても衰退しているが、韓国の「チプ」は現代でも文化や人びとの意識を強く規定しているようである。

 

 したがって、韓国社会のなかでは、「チプ」の存在と威信を改めて認識する機会として葬儀の果たす社会的役割は依然として大きい。

 しかしそうはいっても、紹介記事を読むとやはり韓国でも葬儀の意味を改めて問う意識は徐々に広まってきているようだ。その背景の一つには、やはり日本同様、厳しい経済環境があるだろう。いくら葬儀が社会的に重要であっても、無い袖は振れない、ということがあるだろう。
 ただしそれに加えて、本誌でもたびたび指摘している「死の個人化」という意識的変化が韓国社会にも生じていると推察される。すなわち韓国でも、葬儀に関して「チプ」本位から「故人(個人)」本位へ、つまり故人(個人)のタマシイそのものを弔う、という意識に変わってきているのだと思われる。

 そうすると、こうした潮流は、日本のみならず、韓国や中国なども含めた東アジア全域を包摂する文化的潮流と読むこともできる。
 そしてもちろんそれは、尊厳死や安楽死などをめぐる議論が今日世界各国で盛んになされていることを鑑みれば、「生命倫理」や「死生観」をめぐるグローバルな変化と呼応しているだろう。
 わたしは、そうしたグローバルな変化の重要な技術的背景に、医療技術や生命科学の進化と並んで、ICT(情報通信技術)の変化があると睨んでいる。くしくも、ICTに関しては韓国は日本以上に進んでいる国である。そう意味では、今なお儒教文化の根強い韓国における今後の「死のあり方」の社会的・文化的変化に注目していきたい。

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