若宮霊園の「自然樹木葬苑」(出所:西日本新聞)

若宮霊園の「自然樹木葬苑」
(出所:西日本新聞)

「樹木葬」人気高まる~「墓守る負担、子に残さない」

 木の下に遺骨を埋葬する「樹木葬」が関心を集め、実際に利用する人も増えている。この夏、東京都の樹林墓地には定員の16・3倍に上る応募者が殺到。福岡県内の民間霊園には春以降、月に100人以上が見学に訪れている。墓石を買うよりは一般に安価とされ、「自然に返る」という考えも共感を呼んでいるようだ。核家族化や少子化が進み「墓の管理で子どもに迷惑をかけたくない」と自ら選択する高齢者も増えているという。
 葬送に詳しい井上治代東洋大教授(社会学)によると、樹木葬は1999年、岩手県一関市の祥雲寺で始まった。墓地造成による周辺の里山の破壊を避けるためだった。関連の報道で関心が高まり、東京、山口、大分などに広がっていった。
 海や山への散骨とは異なり、樹木葬は墓標があるため、供養もできる。先祖代々の墓を改葬して「自分の代で、墓の管理は終わらせたい」と申し込む人も多いという。

 近年、記事で紹介した「樹木葬」を含めた「自然葬」を自ら選択する人が増えてきている。そのさい、その理由としてよくあげられるのが、「葬儀や墓のことで遺族に迷惑(負担)をかけたくない」ということである。今回は、この点について少し考えてみたい。

 少子高齢化、核家族化、都市化、単身化などの諸々の社会的趨勢を背景にして、従来の墓、墓守、墓参りのあり方が時代にそぐわなくなってきている、ということは本誌でもたびたび取り上げている。実際問題として、家族といえども生活基盤やライフスタイルが別個になっていることが多い現代では、儀礼的な墓守や墓参りが負担になってきていることはたしかだろう。
 しかしこの「葬儀や墓のことで遺族に迷惑(負担)をかけたくない」という意識は、もう少し積極的なニュアンスも持っていると想う。つまり、自分を供養することが遺族にとってマイナスにならずに、できればプラスになるようでありたい、という死者(供養される側)から生者(供養する側)を思いやる気持ちである。

 供養とは、本来的には供物を捧げて仏(死者・祖先)を敬うことである。しかしながら、人の死が家系や先祖から離れて純粋に個人の死として弔われるようになってきている、という意味での「死の個人化」が進む昨今では、供養の「カタチ」よりは「ココロ」、すなわち故人(個人)と残された人の心の絆を確認する、ということが大切にされるようになってきていると思われる(「弔いの「カタチ」から「ココロ」へ~〈コトダマ供養〉のすすめ」)。
 そのさい、故人が親で残された人が子であれば、供養は、親が子を想う気持ちと、子が親を想う気持ちが改めて紡ぎ直される、という心の内面的な営みとなる。したがって逆に言えば、そうした心の内面的な営みがあるならば、それはいつでも、どこでも、どのような形でも「供養」である、といえるだろう。
 さらに、親の側としては、そうした意味での「供養」の営みが、もう死んでしまった自分にとってではなく、生きている子どもにとって何らかの意味で「プラス」になることを望むだろう。
 すなわち、自分の死が子どもの心に「トラウマ」(心の傷)のようにして残り、自分を供養するたびに悲しくなったり鬱になったりするのは、親にとってまったく不本意であろう。そしてそれぐらいなら、供養されないほうがましだと思うだろう。

 そう考えてみると、もし供養の「ココロ」に本質的な意義があるならば、供養の「カタチ」はその「ココロ」をうまく活性化したり、演出したりするものであったほうがよいであろう。そう考えると、例えば樹木葬は、死んでもなお”生き続け”、さらに”大きく太く”なり、残された人を”いつまでもしっかり支えていく”、というイメージを喚起する。つまりその樹には故人の〈タマシイ〉(魂)が宿り、その〈タマシイ〉が樹とともに残された人を見守り続けるのである。
 こうしてみると、〈タマシイ〉(魂)は石より樹の方が”相性がいい”、と言えるかもしれない。

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『コトダマ新聞』の主筆(代表)です。時流に流されずに死生観をめぐる文化論にまで掘り下げて考察したいと思います。

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