安楽死について

 安楽死は決して安易な結論や感情的な中での判断であってはなりませんが、動物がすでにクオリティー・オブ・ライフQOL(生活の質)を維持できなくなってしまった場合、つまり生きているのが辛く苦しい状態に陥った場合には、やむを得ない選択肢であると考えます。動物の長寿傾向は、複雑な疾病に罹患する確率も増加しました。今や動物も死亡原因のトップである癌に、あんたの動物が罹患した時に、あなたならどうしますか?安楽死をどう考えますか?私はこれまでに幾度かの安楽死を経験しておりますが、100%正しいと感じた安楽死は一度もありません。そんな時にいつも思うのは、「安楽死は、神の意向に反した行為である以上、奪った命の分だけ、自分の命から削り取られて短縮するのを覚悟しなければならない」と。だから、安楽死を要請された時に、動物の状態を判断しながら、私の場合は “自分の命が削り取られても仕方が無い”と覚悟できない安楽死は、行わないようにしています。

 高齢化や単身化(単身世帯の増加)がもたらす社会的・経済的影響の一つに、ペットの増加がある。

 まず、ペット関連市場は年々拡大しており、2010年度で約1兆3,000億円に達し、20年前と比べると約2倍の市場規模に達している。

(出所:矢野経済研究所「ペットビジネスに関する調査結果 2010」)

(出所:矢野経済研究所「ペットビジネスに関する調査結果 2010」)

 また、こうしたペット市場の拡大の背景には、次のような要因があると分析されている。

  1. 愛玩動物からコンパニオンアニマルへ
    近年、犬や猫等のペットは単なる愛玩動物、所有物ではなく、コンパニオンアニマルと呼ばれ、家族の一員、人生の伴侶であるという認識が高まっている。医療や福祉の現場でアニマルセラピーが実践されるなど、動物の癒し効果は注目されており、現代のストレス社会において、癒しを求めてペットを飼う世帯が増加している。
  2. ペット飼育可能マンションの増加
    ペットを飼いたいという声を反映し、ペット飼育可能なマンションが増えている。
  3. 少子高齢化と飼育意向の強まり
    単単身世帯や高齢世帯の増加に加え、ペットに安らぎや癒しを求める独身女性や、生活のパートナーとしてペットを飼育する高齢者が増加している。

 また、こうした情勢を背景にペット向けのさまざまな健康・医療サービスが充実化してくると、ペットの高齢化も進んでくる。そしてそれに伴い、人間同様にペットの「終末期」も問題として浮上してくる。ただしこれも、ペットがあたかも家族の一員あるいは人生の伴侶として意識されるようになってきている、ということが背景にある。

 紹介記事は、こうしたペットの終末期における「安楽死」についての獣医の方の葛藤をあらわにしたものである。もちろん、ペットは人間と違って死についての抽象的な観念を持ち合わせておらず、それゆえ「死にたい」とか「死にたくない」とかを意思表示することもない。(動物本能としては「死にたくない」はずであるが。)しかし逆にそれゆえに、「安楽死」をめぐる心理的葛藤が獣医に負わされていることがよく分かる。
 しかしこのように終末期における安楽死につて「配慮」されるペットはまだ幸せである。
 先にも述べたように、今後、高齢者世帯や単身世帯での飼育が増加していくと、その反面として飼い主が飼えなくなってしまい、新たな飼い主が見つからない限りやむをえず保健所や動物愛護センターなどの行政機関で殺処分されるペットも増えていくことが予想される。

 行政機関での殺処分は政令の「動物の殺処分方法に関する指針」によって「化学的又は物理的方法により、できる限り殺処分動物に苦痛を与えない方法を用いて当該動物を意識の喪失状態にし、心機能又は肺機能を非可逆的に停止させる方法によるほか、社会的に容認されている通常の方法によること」とされていて、具体的には二酸化炭素を用いた昏睡・窒息死という方法が用いられることが多い。
 この殺処分もある意味で「安楽死」とは言えるが、逆に「安楽死」という言い方が、それが「殺処分」であるという赤裸々な事実を(心理的に)覆い隠している側面があると思う。
 保健所等で殺処分される動物は、必ずしも病気で医学的・生理的に生命を維持するのが困難になった動物ばかりではない。その多くは、人間の都合で「生きていくための居場所がなくなった」動物たちである。そうした動物たちが、行政施設で「安楽死」という名のもとに殺処分されている。

 しかし翻って考えてみると、これは動物(ペット)の話だろうか。

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『コトダマ新聞』の主筆(代表)です。時流に流されずに死生観をめぐる文化論にまで掘り下げて考察したいと思います。

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