「介護に備える」ということの意味

「介護に備える」ということの意味

5人に1人は要介護、自己負担額は月3万~5万円

 「見えないところで山のようにおカネがかかる」。20年にわたり祖母の介護を在宅で続ける50代男性はため息をつく。介護はこれからいくらかかるか、いつまで続くか──。子育て費用と違い、介護のおカネは見えにくい。
 介護費用を手当てする基本となるのは自己資金、そして公的介護保険を柱とする社会保障だ。
 介護費用の自己負担は「月3万~5万円が目安」と言うのは、ファイナンシャルプランナーの山田静江さん。介護保険でサービスを受けると、自己負担は1割。これに全額自己負担となる介護サービスを頼んだ場合の合計額だ。
 では介護期間はどのくらいか。生命保険文化センター調査によると、平均介護期間は4年7カ月。年間60万円と仮定すると、約5年で300万円。そこで「介護費用として、1人300万円をめどに準備しておくといい」(山田さん)。
 一方、介護に必要な資金を保険金や年金形式で保障する民間の介護保険がある。将来の介護費用の準備に民間介護保険を活用すべきだろうか。ファイナンシャルプランナーの内藤眞弓さんに話を聞いた。
 内藤さんは、「介護費用は貯蓄で備えるべきだ」と強調する。誰もが要介護状態になるわけではない上、民間介護保険は「要介護2」など保険会社が定める介護状態にならないと保障を受け取れない。これらを考慮すると、「保険より貯蓄で用意する方が合理的」というのが内藤さんの考えだ。

 介護費用は老後の生活設計を考えるうえで最大の関心事の一つである。
 とはいえ、かりに介護が必要な状態になったとしても、どの程度の介護が必要か、あるいはどのくらいの期間が必要になるのか、はそれぞれ大きく異なり、かつ予想し難い。
 紹介記事では、「平均的に」介護費用(自己負担額)を月3~5万円、介護期間を4年7ヶ月として、おおよそ300万円を目安に準備しておくことを勧めている。

 ただしここでやや気になるのは、介護期間の4年7ヶ月という数字である。これは、財団法人生命保険文化センターの「平成21年度生命保険に関する実態調査」の結果に基づくものだが、最新の調査結果(平成24年度版)を見てみよう。
 まず、「過去3年間に、高齢で要介護状態(寝たきりや認知症など)になった家族や親族の介護の経験」に尋ねている。それによると、「過去3年間に家族や親族の介護経験あり」は15.0%(前回15.5%)となっている。また、そのなかで介護を始めてからの期間(介護中の場合は経過期間)をみると、平均56.5カ月(4年9ヶ月)となっている。
 ただし、介護中の場合はまだ介護が終了していないわけなので、この数字は実態より低く(短く)なっていることは注意を要する。

介護期間

介護期間(出所:生命保険文化センター)

 ところで同調査では、「世帯主または配偶者が要介護状態となった場合の、介護が必要と考える期間」についても尋ねていて、その平均は168.5カ月(14年1カ月)となっている。

世帯主または配偶者が要介護状態となった場合の必要期間

世帯主または配偶者が要介護状態となった場合の必要期間(出所:生命保険文化センター)

 これは先の「介護期間」の4年9ヶ月という数値と大きな開きがある。
 つまり、介護が必要と思っている期間が約14年なのに対して、実際に介護している期間は約5年に過ぎない。これは結局、家族や親族の介護が必要な期間の1/3程度しか自分では介護できていないということでる。やはり自分が介護するのは限界があり公的保障による施設介護などに頼らざるをえない現状がうかがえる。

 たしかに、今後超高齢社会を迎えるにあたって政府の公的保障はあてにならない気はする。とはいっても、自分(たち)でそれに費用的に備えるというのが果たして現実的な方策なのかは不確かである。
 あからさまに言えば、介護は、「手厚くすればするほど長引く」という皮肉な側面がある。
 介護に関しては、単純に費用がかかることだけが問題なのでなく、介護する側もされる側も抱える諸々の精神的葛藤も大きな問題である。
 介護に備えることは必要なことだが、どのような介護体制を選択するのであれ、介護に関する自分たちの「理念」を明確にし、それについて家族間で十分にコミュニケーションをとっておくのが最も重要なことだと思われる。

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『コトダマ新聞』の主筆(代表)です。時流に流されずに死生観をめぐる文化論にまで掘り下げて考察したいと思います。

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