電子書籍端末のkoboとkindle

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電子ブックは普及するだろうけど「紙の本」の方がいい理由(諌山裕)

 小説は「本」で読みたいと私は思う。
 一気には読めないから、しおりをはさむなどして中断しながら読むわけだが、読んだページと未読のページの「厚み」が少しずつ変わっていく過程。
 それが「読書している」という実感になる。
 残りのページ数が少なくなってくると、いよいよクライマックス……なんだと、読むスピードも上がってくる。
 紙の本には、そうした「感触」がある。
 そして、読了したとき、1冊の本の厚みと重さが、達成感を物語る。
 ・・・(中略)・・・
 本は、読むだけでなく、感動を形として残しておくことに価値があるように思う。
 電子ブックには、残念ながら残しておきたいという欲求はあまり起きない。所有する、あるいはコレクションするといった欲求は満たせないからだ。
 現状、かんでもかんでも電子ブックにしているが、将来的には電子ブックにするものと紙の本にするものとの役割分担が必要になってくる気がする。

 今年は、日本にとって本当の意味で「電子書籍元年」となるだろう。
 もちろん、すでに電子書籍を取り扱う販売店は数多く存在するし、2010年にはソニーの電子書籍の専用端末であるSony Readerが発売された。ただしその一方で、独特の商業慣行がある出版業界の反応と対応は鈍く、必ずしも業界をあげて電子書籍普及に向けて舵を切るという雰囲気にはならなかった。
 しかしながら今年に入り、楽天が電子書籍端末koboを7000円台の低下価格で投入して話題を呼び、10月にはアメリカ最大手のアマゾンがkindleの日本での販売を開始する。こうなると、出版業界も電子書籍にいよいよ本腰を入れざるをえなくなるだろう。そうした意味で、これから日本でも本格的に電子書籍時代が始まるといってよいだろう。

 それでは、紙の本はどうなるのだろうか。
 もちろん、紙の本がなくなるということはありえない、と思う。
 実際に、専用端末で電子書籍を読んでみると分かるが、たしかに便利ではある。とくに、通勤・通学時に電子書籍端末で本を読むことに慣れると、便利で手放せなくなる。iPhoneなどのスマホでも読めるが、専用端末の方が電子書籍に最適化されているだけあって文字もキレイだし、本のサイズの調整もスムーズである。
 言うまでもなく電子書籍の最大のメリットは、「場所をとらない」ことだ。電子書籍としてデジタル化してしまえば、大容量のメモリーさえあれば個人が所有することができる分量の本を全部端末に入れてしまうことも可能である。家の本棚を丸ごと端末に入れて持ち歩くようなものだ。しかも検索も容易なので、「あの本はどこにやったかな」と本棚をひっくり返して探しまくる必要もなくなる。これは本当にスゴイことだと思う。

 にもかかわらず、ある意味で矛盾するようだが、電子書籍のデメリットも「場所をとらない」ことにあるように思う。つまり、記事でもふれているように、「モノ」として”対象化”できないことである。
 たしかに、本の「価値」の実質はそこに書かれてる事柄であり、簡単に言っしまえばそれは(文字または画像による)「情報」(またはそれがもたらす「知識」)である。それが「紙」を媒体としていようが「デジタル端末」を媒体としていようが、その価値の本質に変わりはない。しかしながら、本に書かれた(描かれた)「情報」がたんなる「情報」を超えた価値をもつときに、「紙」という”物質的対象”があることはとても重要だと思う。
 例えば、新聞とか雑誌などに書かれた「情報」は「情報」以外の何者でもなく、それ以上でも以下でもない。しかしながら、小説や随筆、あるい絵画や漫画など、人にとってその対象は様々ではあると思うが、いずれにしても何らかの「思い入れ」があって読む本(見るもの)はたんなるひとかたまりの「情報」ではない。それはたんなる情報以上の「感情的価値」をもち、「愛着」を感じるものになりうる。
 しかしながら、デジタル端末に”電子化”された書籍は、そうした「愛着」の対象にはなりにくい。やはり、手に触れたり、紙の匂いがしたりする「紙の本」でこそ、そうした「愛着」の対象になりうるのである。

 こうしてみると、電子書籍は紙の本に「取って代わる」ようなものではなく、その一部の役割(すなわち「情報」の媒体としての役割)を肩代わりにすぎない、と思われる。またその意味では、これから電子書籍と紙の本はそれぞれの特徴をいっそう明確にした形で共存していくだろう。
 ただここでちょっとだけ付言しておくと、「愛着」のある本のなかでも、とりわけ愛着のある本、いわば「座右の銘」となりうる本は、電子書籍に入れておきたいとも思う。つまりそれは文字通り「座右の銘」として、思いついたときにいつでもそれを読み返したいからである。わたしにとってその一つは芥川龍之介の『侏儒の言葉』であるが、幸いにして青空文庫で無料で電子書籍化されている。これは電子書籍端末に入れておいて、散歩に出たときなど公園のベンチに座りながら読んでみたりしたいものである。

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『コトダマ新聞』の主筆(代表)です。時流に流されずに死生観をめぐる文化論にまで掘り下げて考察したいと思います。

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