パナソニックが開発したベッド型ロボット「ロボティックベッド」

パナソニックが開発したベッド型ロボット「ロボティックベッド」

介護ロボット

 介護や福祉の分野で活躍する先端機器(介護ロボット)に注目が集まっている。神奈川県は8月下旬から、実用型ロボットの普及推進事業を本格化させる。ロボットを配備した2施設を「ショーウインドー」に位置づけ、現場を公開することで普及を促す考えだ。
 国の成長戦略にも盛り込まれている分野だが、神奈川はその先端を走る条件が整っている。黒岩祐治知事が口にする「神奈川モデル」という考え方にうまくマッチするはずだ。普及策に実効性とスピード感を期待したい。
 神奈川がモデルケースに適している理由の一つは、全国を上回るペースで高齢化が進んでいる点だ。もともと日本は先進国の中でも介護に携わる人材が不足しているが、とりわけ神奈川では対策が急務といえる。
 もう一つは新産業創出という側面だ。神奈川は「ものづくり」の基盤が厚いが、それを支えてきた自動車や電機、機械などの産業は円高で疲弊している。介護ロボットはその代替のひとつになり得るはずだ。
 経済産業省の予測によると、介護ロボット市場は2015年の170億円から20年後には4千億円を超えるまでに急成長すると見込まれている。介護保険の適用対象にすることも検討されており、ニーズは高まっている。

 「介護ロボット」は、今後もっとも発展が期待される先端テクノロジーの一つである。やや大げさに言えば、今後も日本社会が(資本主義陣営のなかで)「先進国」と呼ばれ続けるかどうかを左右する技術であるだろう。

 介護産業は典型的な労働集約型産業である。簡単に言えば、介護サービスの供給は「人手」に依存し、したがって高齢者が多くなれば人手も多く必要になる。こうしたタイプの産業が急速に進む少子高齢化に不適応なのは火を見るより明らかである。
 したがって問題は、介護産業をいかにして「労働集約型」から「資本集約型」に変えていけるか、ということであり、そのシンプルな答えは「人手」を「機械」に(「人間」を「ロボット」に)代替していくことである。

 もちろん、政府はこうした転換をやっきになって推し進めようとしており、産業界も、ベッドから車椅子に変化する介護ベッド型ロボットや洗髪ロボットなど、様々な介護ロボットの技術開発を進めている。

 日本は「技術立国」の〈タマシイ〉があり、この〈タマシイ〉は日本が連綿とつないでいくべき集合意識といってよいかもしれない。この〈タマシイ〉があれば、介護分野で世界的にも先端的な技術が数多く開発され、日本の主要な産業になるかもしれない。さらに、高齢化の趨勢は日本ばかりではなく世界的な趨勢であるので、介護ロボットはかつての家電に代わって日本の主要な輸出製品になる可能性もある。

 しかしながら、かりにこうしたロボット技術の開発がうまい具合に進み、製品化・商品化されたとしても、それはさしあたり「身体のケア」の部分で人間の代替もしくはサポートをするに過ぎない。その一方で、高齢者の「心のケア」をどうするのか、という問題が残されている。
 もともと介護ヘルパーの人はたんに「身体のケア」をしているだけではなく、同時に「心のケア」もしている。そして介護労働がある種の「高度な専門性」が要求されるのは、この両方の側面をうまく噛み合わせてケアをする必要があるからである。
 かりに介護ロボットが日常生活における移動、掃除、洗濯、入浴、食事のしたく、買い物などをある程度サポートできるようになったとしても、それとあわせて「心のケア」まではしないだろう。たしかに、「ペット型ロボット」などは心の癒しにはなるかもしれないが、本質的な意味で「心のケア」にはならないだろう。

 おそらくはそうした「心のケア」をサポートする技術として今後インターネットやモバイル通信などのICT(情報通信技術)が重要な役割を担うだろうが、最終的にはやはり「人(の心)」がそこになければ、「ロボット作ってタマシイ入らず」になってしまうだろう。そして、「身体のケア」がロボットによってうまい具合に代替されればされるほど、代替不可能な「人間の心」の問題が大きくクローズアップされるようになるだろう。「ロボット」の技術的開発のかたわらで、こうした〈タマシイ〉の文化的構築も急ぐ必要がある。

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『コトダマ新聞』の主筆(代表)です。時流に流されずに死生観をめぐる文化論にまで掘り下げて考察したいと思います。

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