"無縁社会"で増える直葬

“無縁社会”で増える直葬

半数以上が通夜式も告別式もしない直葬を選択

 WEB集客型葬儀サービスを提供するユニクエスト・オンラインは、このたび「葬儀に関する調査報告(7月度版)」を作成した。調査は同社サービス「小さなお葬式」の利用者のデータを元に分析している。調査期間は7月1日から7月31日。

 まず、「直葬の選択率」では、52.6%の人が、通夜式も告別式もしない直葬(葬式をせず、火葬だけをすることを指す)を選択。同社サービス利用者の半数以上が、従来の葬儀ではなく「直葬」プランを選択している結果となった。

直葬儀の「消極的理由」と「積極的理由」

 2年ほど前に、NHKで「無縁社会」の特集番組がシリーズで放送されていた。その冒頭で、通夜や告別式を行わず、ごく身近な肉親だけで火葬に立ち会う「直葬」が、簡素な葬儀の形として急速に広がっていることが紹介されていた。

NHK「無線社会プロジェクト」取材班『無縁社会』文春文庫

NHK「無線社会プロジェクト」取材班
『無縁社会』文春文庫

 番組で紹介されていたのは、92歳で亡くなった女性で、認知症で長い間施設で暮らしていて、友人や地元の人との付き合いもなく、葬儀に呼ぶ人もほとんどいないので「直葬」にしたケース、また78歳で亡くなった男性で、都内で脳梗塞を患ってから生活保護を受けながら寝たきりの状態で病院を転々とし、国と自治体が20万円の費用を負担して葬儀会社の社員だけが立ち会って「直奏」されたケースなど、いかにも超高齢化した“無縁社会”日本の現実を浮かび上がらせる事例が紹介されていた。

 ただしその後で東日本大震災が起こり、にわかに「絆(きずな)」という言葉が時代のキーワードになった。とはいえ、「絆」という言葉を社会全体で声高に唱えなければいけないほど人びとのあいだの「絆」が衰弱した現実を反映しているともいえる。時代の趨勢としては、超高齢化を背景とした「無縁化」が進行していくのは避けられないであろう。

 ところで「直葬」とは一般に、通夜や告別式などを行わない火葬のみの葬儀形態を指す。ただ実際には、本当に火葬(遺体の焼却処理)だけで一切の宗教的儀式を行わないものから、出棺前や火葬場での読経など簡単な宗教的儀式を行うものまでいくつかヴァリエーションがあるようである。

 また、「直葬」を行う経緯・理由についてもいくつかパターンがある。

直葬を取り巻く環境【利用者編】

直葬を選択する方は以下の通りに分類されるようです。
1 以前から直葬で葬儀を行われてきた方
2 経済的な理由や家族関係から直葬を選択せざるを得ない方
3 従来の葬儀の形式に不満を感じ葬儀を行いたく無いから直葬を選択する方

 
 1は行政や福祉団体が生活保護受給者や行旅死亡人などを火葬にするケースで従前から制度化された直葬のパターンである。
 2は葬儀を行うだけの経済的余裕がない場合、あるいは遺族が遠方に住んでいたり関係が疎遠だったりする場合など「消極的」な理由で直葬を選択するパターンである。
 3はブログ主の株式会社神奈川こすもす代表取締役・清水宏明氏によると「葬儀を経験しているという方がほとんど」で、通常の葬儀をする経済的余裕はあるものの、費用がかかりすぎる点など従来の葬儀形態に何らかの不満を抱いている人だという。

 そうすると3のパターンは「積極的」な理由で直葬を選らんでいると言える。このパターンはマクロな視点から見れば、葬式に限らず結婚式など伝統的な社会的儀礼・儀式が急速に廃れているという社会的趨勢の一環であると言えるだろう。

 そこには、“たんなる”風習や慣習にお金を使うのは「ムダ」という意識がある。そうしたことに金を使うぐらいなら遺族がハワイに旅行に行ったほうがまし、というのは、故人にとっても遺族にとってもあながち不謹慎なことではなくなってきているのである。

 しかし他方で、「無縁」の中で一人孤独に(役所と葬儀会社の人に見守られつつ)直葬される、というのは必ずしもそうした「積極的」なものではない。不謹慎な言い方だが、今後こうした「無縁」の直葬が増えてくると、そうした「遺棄物処理」に20万円も税金を使うのはいかがなものか、という声が世間的に出てきてもおかしくないと予想される。

1 / 212

 

LINEで送る
Pocket

The following two tabs change content below.
『コトダマ新聞』の主筆(代表)です。時流に流されずに死生観をめぐる文化論にまで掘り下げて考察したいと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。


*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)