KS001『コトダマ物語&コトダマ・レター選集』は、コトダマの里で作成した『コトダマ物語』および『コトダマ・レター』をテーマごとにピックアップし、編集本としてまとめたものです。
 あわせて、『コトダマ物語』『コトダマ・レター』の趣旨とガイダンスも含まれています。
 『コトダマ物語』『コトダマ・レター』の入門書であると同時に、その”タマシイ”を凝縮した精選集でもあります。
 『選集』に納められた「タマシイの物語」「タマシイのメッセージ」が読者の「タマシイ」に響き、新たな「コトダマ」へとつながっていくきっかけになれば幸いです。
 なお『選集1』は『コトダマ物語』『コトダマ・レター』のサンプル・バージョンの位置づけですので、とくにテーマは設けていません。


コトダマレター『カオちゃんへ』 お父さんはこの手紙を病院のベッドでパソコンを使って書いています。窓からは病院の横にある公園の樹々の鮮やかな紅葉が見えます。これまでいろいろな病院に入院しましたが、この病院はとても静かで時間が穏やかに過ぎていきます。最近は体調が良く何もすることもないので、手紙を書くことにしました。


コトダマレター『カオちゃんへ』 今年も、お誕生日プレゼントどうもありがとう。サルのぬいぐるみ、さっそくベッドの脇に飾りました。一見普通のぬいぐるだけど、口が大きくパカッと開いていて、メガネ置きにもなるんだね。便利でかわいくて一石二鳥で重宝しています。ぬいぐるみを見ながら、ふとカオちゃんに最初に会ったときのことを思い出しました。


コトダマレター『幸介へ』 この手紙を読むときは、お母さんはすでにお星さまになっているでしょう。そして空の上から幸介のことを見ているでしょう。空の上からも幸介のことはしっかり見えますが、さすがに声は届かないよね。だから、声の代わりに手紙を届けてもらうことにしました。


美智子へ 還暦祝いどうもありがとう。
 記念品の写真入り時計は風格があってとても気に入っている。それを見ていて、ふと、一緒になってからこれまでのお礼の手紙を書いてみようと思った。ただ、改まって伝えるのは正直、気恥ずかしいので、手紙にして残しておくとわたしがあの世に行った後にでも読んでもらえるかなと思った。でも、いざ書こうとすると、何を書いたらいいのか分からない。丁寧に書こうとすると、まるで遺言状のようになってしまう。
 結局、今思っていることを、素直にそのまま書くことにした。たんなる独り言のようで全然お礼の言葉になっていないかもしれないが、それは勘弁してもらいたい。


お母さんと悟志へ お父さんは昨年一年間病気でずっと療養していましたが、お母さんと悟志のおかげで回復し、今年の春から新しい職場で、仕事に復帰します。体調もすっかり元通りになり、これから人生の再出発です。
 それまで予想だにしなかった病気になり、人生何が起きるか分からない、ということを痛感しました。一昨年は、東日本大震災で大勢の人が一瞬にして命をなくされました。これからも、世の中どんなことが起きるか分かりません。
 人生の再出発にあたり、お父さんが病気の間に思ったこと、そしてお母さんと悟志にぜひ伝えておいておきたいことを、元気でいる間にきちんと書いておくことにしました。
 ただ、これはお母さんと悟志へのメッセージだけれども、自分自身へのメッセージでもあります。これからどれくらい生きられるか分からないけど、これからもときどき自分が書いたこのメッセージを思い出したいと思います。これを書いたときの決意や気持ちを思い出し、自分自身を励まし、勇気づけることができるかもしれない、と思っています。


お母さん、お父さんへ 一年にわたるガン治療が一段落して、来月、仕事に復帰することになりました。
 手術のときも、その後の治療のときも、お母さんとお父さんがいてくれて、とても心強く、安心でした。
 ほんとうに、ありがとう。
 ほんとうは面と向かってきちんと御礼の言葉を言うべきなのに、あらたまって言うのはなんとなく恥ずかしいので、元気なうちに感謝の気持ちを手紙にしておこうと思いました。


渉くん、将くんへ 金婚式のお祝いわいを、盛大に祝いわってくれてありがとう。
 じいちゃんとばあちゃんは、すごく感激しました。いっぱい飾付けしてくれて、大変だったでしょう。
 お歌も、とっても上手でした。
 お母さんと一緒いっしょに作ってくれたケーキもとてもおいしかったわよ。
 ネコちゃんのおそろいのマグカップはずっと大事にするわね。
 じいちゃんとばあちゃんが結婚して五十年、渉くん、将くんたちに囲まれて、あたたかな金婚式を迎えることができて、とても幸しあわせです。
 ばあちゃんは毎日、渉くん、将くんのおかげでますます忙しく、ますます賑やかに、そして楽しくすごしています。


妻と娘へ 贈る言葉 わたしは、今年で六十二歳になります。月並みな言い方だけれど、長いようで短い、あっというまに月日が過ぎ去っていたような気がします。いろいろなことがあったけれど、なにはともあれよくがんばって生きてきたな、今はそんな思いでいます。

 知っての通り、昨年、病院の検査で肺がんが見つかり、予定より早く会社を退職して治療に専念することにしました。わしはこれから、残りの人生をかけてがんとの闘いに臨みます。 武士たるもの、戦に臨むときは常に死を覚悟し、残される者のために遺言状を作っておくのが礼儀でしょう。とはいえ遺言といっても、わたしの家族は佳子と薫子だけで、遺産は小さな家と僅かばかりの貯金しかありません。これについては、言い残すことなどなにもありません。
 ただ、二人には、言い残しておくべき言葉があります。

人生で最も大切な言葉 わたしのこれまでの人生は、ごく平凡な人生でした。小説や映画のような派手なドラマがあるわけではなく、ひたすら地道に人生の道を歩んできました。
 そうした平凡な人生であっても、試練と呼べるようなことはありました。わたしの人生でもっとも苦しかった時期は、四十代前半に勤めていた会社で事業の失敗の責任を問われて地方に左遷されたときでした。そんなときに、わたしは自分の人生観を大きく変えることになった人と出会いました。そしてその人から、自分の気持ちを言葉にして伝えることがいかに大切か、ということを教わりました。