KS001『コトダマ物語&コトダマ・レター選集』は、コトダマの里で作成した『コトダマ物語』および『コトダマ・レター』をテーマごとにピックアップし、編集本としてまとめたものです。
 あわせて、『コトダマ物語』『コトダマ・レター』の趣旨とガイダンスも含まれています。
 『コトダマ物語』『コトダマ・レター』の入門書であると同時に、その”タマシイ”を凝縮した精選集でもあります。
 『選集』に納められた「タマシイの物語」「タマシイのメッセージ」が読者の「タマシイ」に響き、新たな「コトダマ」へとつながっていくきっかけになれば幸いです。
 なお『選集1』は『コトダマ物語』『コトダマ・レター』のサンプル・バージョンの位置づけですので、とくにテーマは設けていません。


人生を変えた『芥子の実』の話 わたしの人生でもっとも苦しかった時期は、四十代半ばのときに勤めていた会社が突然倒産して失業し、さらにまさにそのときに大腸ガンが見つかり病院で手術を受けたとき しかし冷静に省みるならば、たしかにそれは不運で不幸な出来事ことではありますが、誰の身にも起こりうることでもあります。ただ当時のわたしは、なぜ自分がこんな目に しかしわたしの苦しみの原因は、本当は起こった出来事そのものではなく、まさにそうした恨みの気持ちで一杯になってしまった心にありました。そのことに気づかせてくれたのは、ある一つの説話でした。


美智子へ 還暦祝いどうもありがとう。
 記念品の写真入り時計は風格があってとても気に入っている。それを見ていて、ふと、一緒になってからこれまでのお礼の手紙を書いてみようと思った。ただ、改まって伝えるのは正直、気恥ずかしいので、手紙にして残しておくとわたしがあの世に行った後にでも読んでもらえるかなと思った。でも、いざ書こうとすると、何を書いたらいいのか分からない。丁寧に書こうとすると、まるで遺言状のようになってしまう。
 結局、今思っていることを、素直にそのまま書くことにした。たんなる独り言のようで全然お礼の言葉になっていないかもしれないが、それは勘弁してもらいたい。


自分を知ることから第二の人生は始まる 定年退職は、「第二の人生」のスタートとよく言われます。多くの人は、それまでの会社員人生に一区切りをつけ、趣味、旅行、勉強、ボランティア、その他何であれ、やりたかったけれども、やれなかったことを思う存分やりたいと思うでしょう。わたしも退職前までは、そのように思っていました。ところが、いざ退職してみるとスタート地点から一歩も踏み出せませんでした。環境の急変に適応できず、孤独感と虚無感に苛なまれ、いわゆる「燃え尽き症候群」に陥り、次第に酒にばかり飲むようになり、しまいにはアルコール依存症になっていました。


わたしの「熟年離婚ドラマ」 数年前、『熟年離婚』というドラマが放映され、話題を呼びました。仕事一筋だった夫(渡哲也)が定年退職を迎えた日に、長年連れ添ってきた妻(松坂慶子)から突然離婚届を突きつけられる、という話です。「わたしも主婦を卒業したい・・・」。妻は一見何不自由なく幸せな家庭生活を送ってきたかのように見えて、じつは家庭を顧みようとしない夫に対して長年不満を募らせていて、もうこれ以上自分を犠牲にすることは我慢できなかったのです。わたしは、この番組が始まった当初から食い入るようにテレビを見ていました。そして番組が終わったときにはいつも、深いため息をつきました。細かいところで違いはあるものの、根本的なところではわたしたち夫婦にそっくりだったからです。


妻と娘へ 贈る言葉 わたしは、今年で六十二歳になります。月並みな言い方だけれど、長いようで短い、あっというまに月日が過ぎ去っていたような気がします。いろいろなことがあったけれど、なにはともあれよくがんばって生きてきたな、今はそんな思いでいます。

 知っての通り、昨年、病院の検査で肺がんが見つかり、予定より早く会社を退職して治療に専念することにしました。わしはこれから、残りの人生をかけてがんとの闘いに臨みます。 武士たるもの、戦に臨むときは常に死を覚悟し、残される者のために遺言状を作っておくのが礼儀でしょう。とはいえ遺言といっても、わたしの家族は佳子と薫子だけで、遺産は小さな家と僅かばかりの貯金しかありません。これについては、言い残すことなどなにもありません。
 ただ、二人には、言い残しておくべき言葉があります。

人生で最も大切な言葉 わたしのこれまでの人生は、ごく平凡な人生でした。小説や映画のような派手なドラマがあるわけではなく、ひたすら地道に人生の道を歩んできました。
 そうした平凡な人生であっても、試練と呼べるようなことはありました。わたしの人生でもっとも苦しかった時期は、四十代前半に勤めていた会社で事業の失敗の責任を問われて地方に左遷されたときでした。そんなときに、わたしは自分の人生観を大きく変えることになった人と出会いました。そしてその人から、自分の気持ちを言葉にして伝えることがいかに大切か、ということを教わりました。