プロフィール Ryu

『コトダマ新聞』の主筆(代表)です。時流に流されずに死生観をめぐる文化論にまで掘り下げて考察したいと思います。
photo credit: pjan vandaele via photopin cc

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 日本人にとって今も昔も、お盆は正月と並んで重要な時期である。とはいえ、今やそれは実質的にはたんに「ある程度まとまって休暇をとる時期」になりつつある。人口減少や地方の過疎化が進むとこの傾向に拍車がかかるだろう。

 最近の子どもは、田舎のお祖父ちゃんお祖母ちゃんから正月のお年玉と同様に「お盆玉」をもらえる機会としてしか認識していないかもしれない。こうなると、お盆は正月と並んで半年に一遍の「お祝い事」である。

 とはいえ、お盆に実家に帰省して墓参りする人はまだ多いだろう。本日まさに実家で祖父母や親類とともに故人を偲んでいる人も多いかもしれない。

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photo credit: dishfunctional via photopin cc

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 人生上の経験や知識が増えると、心の理論はより内容豊かになる。これは、他者と理解しあえる部分や機会が増えることを意味する。

 しかしその一方で、心の理論はより複雑になる。これは、他者と十分に理解し合えることが難しくなることを意味する。

 これは、ひとまず論理的には、心の理論が「発達」していくにしたがい他者との関係が“浅く広い”ものになっていくことを含意する。大人になるというのは、ある側面ではそういうことである。

 ただこれだけだとコンピュータの「発達」とほとんど変わらない。人間は他者と機械的に付き合っているわけでも、機械的に生きているわけでもない。

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photo credit: tj.blackwell via photopin cc

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花風社:まず最初に、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」なんですが……。藤家さんは学校であの詩を習ったときどう思いました?

藤家:雨は痛いけど負けちゃいけないんだ、って思いました。彼はその時点で雨に負けていたんだろうな、とも。だから、「そういう人」になりたかったから書いたのかな、と思いました。

花風社:雨が痛い?

藤家:雨は痛いじゃないですか。当たると。傘をさしていても、はみ出た部分に雨が当たると一つの毛穴に針が何本も刺さるように痛くありません?

花風社:痛くありません。

ニキ:痛くない。

藤家:え!? みなさんは雨が痛くないんですか?

 
 かなり強い雨だとたしかに痛いが――

 先に書いたように、人間が他者(および自分)に「心的状態」(欲求、信念、感情など)を帰属させてその行動を理解しようとする知的能力のことを「心の理論(Theory of Mind)」と呼ぶ。この心の理論の初期段階の発達を確認するためのテスト課題は「誤信念課題」と呼ばれ、一般には5歳ぐらいまでに正答できるようになる。しかし、自閉症児は同時期にこの課題をクリアするのが困難であることが分かっている(*)

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Mirror Neurons(jonlieffmd.com)

Mirror Neurons(jonlieffmd.com)

 「心の“理論”」というくらいだから、それは知的推論の枠組みである。

 しかしながら、3~5歳ぐらいの幼児に「推論」などという高尚なことがどこまでできるのだろうか。とりわけ他人の(および自分の)「心」という目に見えなず、触って確かめたりできない対象について、はたしてある程度体系的に推論の枠組みを構築できるものだろうか。

 これについて、最近の脳科学によって、この推論のベースとなる神経回路があらかじめ脳にビルトインされていることがわかってきているようだ。

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photo credit: Chris_Parfitt via photopin cc

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 人間が他者(人間、動物など)に「心的状態」(欲求、信念、感情など)を帰属させて他者の行動を理解しようとする知的能力のことを「心の理論(Theory of Mind)」と呼ぶ。

 例えば、ある人が水の入ったコップに手を伸ばしているとき、われわれはその現象を見て「ある人の手がコップに近づいている」というような理解の仕方はしない。ふつうは「ある人がコップの水を飲もうとしている」というような理解をする。

 このとき、われわれは目の前の人の「心的状態」を現象の解釈の手がかりにしている。つまりその人は「水が飲みたい」という「欲求」、「コップに水が入っている」という「信念」をもっていて、“それゆえ”「コップの水を飲もうとしている」という現象が生じているのだな、と理解する。

 心の理論が用いられる対象は人間とは限らない。例えば、「このニャンコはエサが欲しくてすり寄ってきたな」とか「このゴキブリはあの床に落ちたパンくずを狙っているな」とかというぐあいに人間以外の対象の行動を予測したり解釈したりするさいにも用いられる。

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わたしはサイコパスかもしれない、と思うとき

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 最近思うのは、ロボットが人間に近づくよりは、人間がロボットに近づく方が早いかもしれない、ということである。

 あるいは、「心」とか「魂」とかといった観念は人間にとってすでに“ファンタジー”であって、「脳」だけが“リアル”なものになりつつあるのかもしれない。

 例えば、何か想像を絶する理解し難い人間行動を見て、「ああ、これはたぶん脳機能の障害が原因だな」とみなして、後はすぐさま「医療管理体制の不備」とか「社会的リスク・マネージメントの確立」というたぐいの議論に関心が移行したりする。

 こういう議論に比べると、例えば“命の教育”といったスローガンはとても“ファンタジー”な響きがある。

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マルクス=エンゲルス全集online(大月書店)

マルクス=エンゲルス全集online(大月書店)

読み終えた電子書籍を販売できる転売サイトに「閉鎖する必要なし」の判決

 オランダ出版社協会は「電子書籍転売プラットフォームのTom Kabinetが著作権を侵害しており早急に閉鎖する必要がある」として訴訟を起こしていましたが、オランダの地方裁判所は「Tom Kabinetはサイトを閉鎖する必要がない」という判決を下し、出版業界に衝撃を与えています。

 オランダ出版社協会の弁護を務めたChristiaan Alberdingk Thijmは「判決には失望しました。今回の判決による出版社の被害は甚大です」とコメントを残しました。

 
 AmazonのKindleストア利用規約では、Kindleコンテンツは「ライセンスが提供されるものであり、販売されるものではない」こと、および、Kindleコンテンツに関する「いかなる権利も第三者に販売、借用、リース、配信、配布、サブライセンス、ないしは別の方法で譲渡してはならない」ことが明記されている。

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BLADE RUNNER

“I’ve seen things you people wouldn’t believe.
Attack ships on fire off the shoulder of Orion.
I watched c-beams glitter in the dark near the Tannhauser Gate.
All those moments will be lost in time, like tears in rain.
Time to die.”

 
 わたしがロボットに関心があるのは、(タマシイ)に関心があるからである。と言うと、「ロボットに魂があるのか」という問いがたぶん出てくるだろう。

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Terminator(wall.alphacoders.com)

Terminator(wall.alphacoders.com)

「人工知能は人類史最悪の脅威」―ホーキング博士

 イギリスの物理学者、スティーブン・ホーキング博士が英インデペンデント紙に語ったところによると、人工知能は病気や戦争、貧困の根絶に貢献する可能性がありながらも、人類史上最悪の脅威になりうるとのこと。

 人間の役に立つと見せかけた人工知能や自動運転の乗り物たちが、いつか人類の終わりを招くかもしれないと述べ、ロボットの開発に警鐘を鳴らしています!

 ……(中略)……

 博士は、「アービング・グッド(イギリスの数学者)は、1965年には人間の脳を超える知能が繰り返しその知能を改良して進化するようになると気づいていた」と述べ、専門家らはこうした事態に用意が出来ておらず、「人類にとって最良にも最悪にもなり得る事態に直面しながら、関連する研究が少ない」との懸念を表明しています。

 ロボット(コンピュータ)が人間と日常生活の中でコミュニケーションできる程度に「知能」をいずれ持つであろうことは、わたしにとっては想像に難しい未来ではない。

 そのさい、その「知能」――「思考」や「感情」を含めて――が人間のそれと似たようものかどうかは、さしあたりは人間の都合による。あるいはそれが人間が理解し難い「思考」や「感情」だからと言って「低能」と決めつけることはできないだろう。うまく「付き合う」ためには、人間の側からの歩み寄りも必要だ。

 ただわたしはロボットの「知能」よりは「価値観」に関心がある。つまり、ロボットが知能的には人間と同等以上の存在になったとき、はたしてどんな「価値観」を持っているだろうか。

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Blade Runner(The Final Cut)(Amazon.com)

Blade Runner(The Final Cut)(Amazon.com)

 「我々のビジョンは“愛”を持ったロボットを作ること。感情を持った、心を持ったロボットを作りたい。」

 孫正義社長がこのように言うとき、これはロボット“の”“技術的条件”のように認識しているように思える。もしそうだとすると、それはやや的外れである。

 「心を持ったロボット」とは、言い換えれば「自我(わたし)」のあるロボットと言うことである。

 しかしロボット以前に、そもそも人間の「自我(わたし)」がそれほど定かなものではない

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Pepperと握手する孫正義社長(CNET Japan)

Pepperと握手する孫正義社長(CNET Japan)

鉄腕アトムも「心は持てない」–孫正義氏が夢見た“愛を知る”ロボット

 「今日は、もしかしたら100年後、200年後、300年後の人々が『あの日が歴史的な日だった』と記憶する日になるかもしれない。我々は人類史上初めて、ロボットに感情を与えることに挑戦する」――ソフトバンクグループ代表の孫正義氏は、ロボット事業への参入について、このように思いを語った。

 ……(中略)……

 ロボット開発に乗り出したきっかけについて孫氏は、「子どもの頃、胸を踊らせながら学校から慌てて見に帰ったのが鉄腕アトムのアニメ。空を飛んで百万馬力で悪者をやっつけるアトムだが、嬉しい、悲しいといった感情が分からず、涙を流せないという話があった。子どもなりにそれは可愛そうだなと思い、いつか自分たちが大人になった時に、ロボットがそういうことを理解できるようになればいいと漠然と考えていた」と思いを明かす。

 1949年に登場してから65年間、コンピュータは人々がロジカルに考えたり、情報を整理するための“左脳”の役割を担ってきたが、いずれは感情や創造性を持った“右脳”の役割も果たすようになると予想していたと孫氏は話す。「Pepperはあくまでもその第一歩だが、我々のビジョンは“愛”を持ったロボットを作ること。感情を持った、心を持ったロボットを作りたい。そのためには人の感情を理解するところから始めるべきだ」(孫氏)。

 
 ソフトバンクの孫正義社長が、例によって自信満々の笑顔で“Pepper”を紹介している映像を見て、「そうか、次に乗るべき“ビッグウェーブ”は『ロボット』なんだな」と思った人は多いだろう。少なくとも、安倍首相が老人ホームで介護ロボットを動かしてみせたりするよりずっと効果が高い。

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Frozen - Olaf((C)Disney)

Frozen – Olaf((C)Disney)

「オラフ」と「こだま」

 『アナと雪の女王』の「オラフ」を最初に見たとき、宮崎駿監督の『もののけ姫』の「こだま」(木霊)に似ていると思った。

もののけ姫 - こだま((C)スタジオジブリ)

もののけ姫 – こだま
((C)スタジオジブリ)

 もちろんオラフは雪の精霊で、こだまは森の精霊という違いはある。それ以上に、キャラクターの表情が全然が違う

 オラフはとても表情豊かで、なおかつ(ディズニーのCG技術のおかげで)表情にとてもリアリティがあるのに対し、こだまはほとんど無表情で、リアリティにも乏しい。

 わたしの考えでは、オラフとこだまはそれぞれ、『アナと雪の女王』と『もののけ姫』、あるいはディズニーアニメと宮崎アニメ、さらには欧米の芸術文化日本の芸術文化の特徴を表す象徴の役割を果たしていると思われる。

 以下で、この点について少し述べてみよう。

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Frozen

Frozen (C)Disneyjp

『アナ雪』が原因で離婚も!?米メディアが日本の異常なフィーバーぶりに注目!

 公開から77日間で日本での歴代興行成績が、『千と千尋の神隠し』(01)、『タイタニック』(97)に続く第3位に躍り出た『アナと雪の女王』。快進撃はまだまだ続いているが、全米では歴代19位、全世界で5位という順位を考えても、特に日本のけん引力の強さがうかがえる。そんな中、米メディアが日本での異常なまでのフィーバーぶりに注目し、興味深い記事を掲載している。

Digitalspy.comが「日本人の女性は、夫が『アナと雪の女王』が好きじゃないという理由で、離婚を言い渡す」というタイトルで取り上げている記事は、「既婚者の墓場」という日本のウェブサイト情報によるもの。

「『アナと雪の女王』を見るたびにうっとりし、1人で何度も劇場に足を運んだ29歳の女性は、夫に一緒に映画を観賞するように頼んだ。夫は最初、ミュージカル映画を見るのを拒んでいたが、彼女が納得しなかったので、最終的には折れて、妻と一緒に劇場に行った。しかし、『まあ、いいんじゃない。個人的にはどうでもいい映画だけど。そんなによかった?』と言ってしまったことで、妻がキレてしまったようだ。」

「妻は、『この映画の素晴らしさを理解できないのは、人間としてどこか欠陥がある証拠だわ。離婚しましょう』と言い放ち、6年間連れ添った夫と離婚することを宣言し、実家に戻ってしまった。」

 
 ディズニーのアニメーション映画『アナと雪の女王』は世界的に大ヒットしているが、とくに日本で大ブームを巻き起こしていることがそれに貢献しているようである。

 もともと日本は世界に冠たるアニメ大国であるし、ディズニーランドは日本の最大の娯楽施設であるので、世界的に評価の高いディズニーアニメであれば当然の反応と言えば当然と言える。その一方で、ディズニーのマーケティング戦略とか日本のサブカルチャー事情とか、様々な要因分析も今後多くなされるであろう。

 「コトダマ新聞」の読者はご存じのように、『アナと雪の女王』に関してはAzu記者が熱心に取り上げている。いちおう「シニアにおすすめの話題」という趣旨であるが、たんに自分の感動を伝えたいということもあるだろう。

 そのさい『アナと雪の女王』の「真意」をAzu記者が解読しているが、それはそれとして、わたしはそれとはまったく別の角度から捉えてみたい。

 すなわち、『アナと雪の女王』は本国アメリカや他の国々とは異なる、日本独特の文化的感性のもとで受け入れられているのではないか、という観点である。

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photo credit: RayMorris1 via photopin cc

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人口減対策:一極集中是正が急務 戦略本部設置へ

 政府が人口減少に対応する総合戦略本部を設置する方針を決めたのは、これまで府省ごとにバラバラだった人口対策を一つに束ね、人口減に歯止めをかけなければ、経済だけでなく社会保障や地方自治体も立ち行かなくなるとの危機感からだ。

 日本の人口減少はかねて予想されてきたが、対策は後手後手に回ってきた。歴代政権は「東京一極集中」の打開を掲げながら、国際競争力を優先して、地方から人材や資源を吸い上げて成長につなげてきた側面は否めない。

 地方で子どもを育てるには若者が働くための産業や雇用、住宅、生活インフラの整備・維持も課題になる。人口問題は「出産」や「育児」といった少子化対策を中心にとらえられがちだが、国土政策全体からの視点が欠かせない。

 こうした現状に警鐘を鳴らしたのが、産業界や有識者からなる「日本創成会議」(座長・増田寛也元総務相)の提言だ。東京圏を中心とした3大都市圏に人が流入した結果、地方で子どもを産む若年層が大幅に減少し、全国1800市区町村の半分近い896自治体の「消滅」の可能性がある点を明らかにした。

 
 先日米国と日本の教育費の比較について述べたが、さにその背景を考えてみたい。

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photo credit: Life As Art via photopin cc

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出生率目標「賛成」 男性7割、女性5割強(Wの質問)

 人口減少と高齢化が急速に進む中で議論されている「政府が生まれる子どもの数値目標を設ける」ことについて、日経電子版の読者に聞いたところ、3分の2の人が「賛成」と答えた。ただ男女で違いが見られ、男性は7割が賛成したのに対し、子どもを産む当事者である女性は反対が46.4%と、賛成(53.6%)にかなり近づいた。

 賛成理由は「このまま人口が減れば国力低下どころか国が破綻する」(60代男性)といった強い危機感や、「数値目標を掲げないと女性活躍推進や待機児童解消などの施策がおざなりになりそう」(30代女性)など実効性の担保のため必要といった意見が目に付く。

 反対では「出産は個人の自由。政策で行うのは行き過ぎ」(40代男性)と個人の生き方を尊重する意見が多かった。「産めない、産まない女性にプレッシャーになる」(20代女性)懸念や、なぜ産めないのかを直視していないといった声も聞かれた。

 
 政府の有識者委員会「選択する未来」が中間報告書で求めた「50年後の人口1億人の維持」を達成するには、合計特殊出生率(女性が生涯に産む子どもの数)を2030年までに2.07人まで回復する必要がある。1970年代に2を割り込んでからすでに40年経っているところでこの目標数値は、率直に言って「ブラック企業のノルマ」のように思える。すなわち、真面目にやろうとすると誰かが理不尽な目にあいそうである。

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高齢者にとって働くことの意味とは 高齢者雇用で高収益を実現した米国企業――文化人類学者のケイトリン・リンチ博士に聞く

 米国に多くの高齢者雇用し、高収益を実現している企業がある。約3年前にDOL特別レポートで紹介した、ステンレス製の業務用針を製造するヴァイタニードル(マサチューセッツ州ニーダム)だ。

 同社は、高齢従業員が快適に働ける職場を提供することで士気や生産性を高め、2000年から約10年間で売上げを300万ドルから900万ドルへと3倍に伸ばした。高齢者雇用を始めたのは90年代初めだが、ほとんど偶然からだった。当時従業員を募集したが、人手不足で高齢者しか残されていなかったので仕方なく雇ったのだ。すると、彼らは責任感や忠誠心が高く、経験豊富で質の高い仕事をすることがわかり、積極的に雇用するようになった。高齢者は病気などで欠勤しやすいなどのリスクはあるが、すべての従業員に複数の仕事を処理できるように教育訓練して対処すれば問題ないという。

 
 日本は総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)が25%を超え、4人に1人が高齢者の高齢社会である。今後も未曾有のスピードで高齢化率は上昇していく見込みだ。

 他方、働く高齢者も増加している。65歳以上の就業者数は2013年に前年比7%増の636万人となり、就業者全体に占める割合が初めて1割を超えた。欧米の主要国の1~5%を上回り、高齢者の就労でも世界に先行している。

 ただその一方で、高齢者の就労条件や労働環境は十分に整えられているわけではない。今後それは、企業の側でも社会の側でも大きな課題として浮上してくるだろう。

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photo credit: JustABoy via photopin cc

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「勝ち負けだけを争うものなら将棋にそれほどの価値はない。思いがけない発想やドラマチックな逆転が共感と感動を呼ぶ。感動的な俳句を作れないように、コンピューターに人間の共感を得られる将棋は指せません。」

 
 第72期将棋名人戦で羽生善治三冠(王位・王座・棋聖)が森内俊之竜王に四連勝して名人位を奪還した。

 将棋ファンであれば誰でも知っていることだが、二人は小学生時代から将棋のライバルで、同い年かつ同期、以来将棋界の頂点に共に立ち並ぶまで三十年以上にわたって「盤上の死闘」を繰り広げてきた、まさに「宿命のライバル」である。二人の対戦は、将棋ファンにとって最も関心を呼ぶ「勝負」であることは間違いない。

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「古事記」「日本書紀」「万葉集」と宇陀市(宇陀市HP)

「古事記」「日本書紀」「万葉集」と宇陀市(宇陀市HP)

東(ひむがし)の 野に炎(かぎろひ)の 立つ見えて かへり見すれば 月傾(かたぶ)きぬ
(東野炎 立所見而 反見為者 月西渡)

柿本人麻呂(万葉集1・48)

 
 以前ふれたように、この歌は「軽皇子の安騎の野に宿りましし時に、柿本朝臣人麻呂の作れる歌」と題された長歌・短歌4首の組み歌、いわゆる「安騎野遊猟歌」(万葉集1・45~49)の中の一つである。安騎野は現在の奈良県宇陀市旧大宇陀町一帯の小さな盆地で、古くから狩猟地として知られる(ちなみに精霊信仰の古代社会では狩猟は神聖な営みでもあった)。

 軽皇子は、天武天皇と持統皇后(天皇)の間に生まれた皇太子草壁皇子の子である。父の草壁皇子は皇位に就く前に若くして亡くなったので、軽皇子は早くから後継として期待されていた。この安騎野遊猟歌は、軽皇子が父の死の3年後10歳のときに安騎野に狩りに出かけたときのものであるが、安騎野は亡き草壁皇子も狩猟に訪れた追憶の地でもある。同行した人麻呂はこのことをよく理解し、持統天皇の意を体してこの歌を作ったと考えられている。

 ところでこの歌は、古来、万葉集随一の名歌と称えられ、それゆえ歌の解釈や解説も一二を争うほど膨大にある。わたしは、そのこと自体が優れた芸術作品の証しだと思う。独創的な作品は独創的な解釈を生み出す。独創的な解釈は、解釈という名の新たな芸術作品である。

 例えば、「炎」を「かぎろひ」と訓(よ)む歌は、賀茂真淵の「作品」と呼んでも良いのではないだろうか。実際、江戸時代までは「けぶり」と訓まれていて、その方が自然だという説もある。ただ真淵以降「かぎろひ」が多くの支持を得ているのは、その方が歌として「美しい」と思う人が多いからだろう。ということは、やはりそれは真淵の芸術作品ということでもある。

 それはともかく、ここではこの歌がなぜ「芸術」として優れているかについてわたしなりに考えてみたい。

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